「叱る依存が止まらない」前編~叱るには効果がない~
今回は、「叱る依存が止まらない」(発行 紀伊国屋書店/著者 村中直人 氏)のご紹介です。
日々叱りすぎてないか心配、叱らないようにしたいのに叱っちゃう…という方にぜひ知っていただきたい1冊。
この本における「叱る」の定義
著者の村中直人さんは、臨書心理士・公認心理士として、発達障害への支援や、支援者養成の活動をなさっています。
さらに、発達障害と呼ばれる現象をより正確に理解するために、科学や認知科学についての知見も深めていらっしゃいました。
そんな村中さんは、「叱るには効果がない」と言い切ります。
私は最初、「え?感情的に怒るのはダメだけど、正しいやり方で叱るのは必要でしょう」と思いました。
しかし読み進めるうちに「なるほど、確かに叱るには効果がないな」と腹落ちしたのです。
まずは、村中さんが考える「叱る」の定義をご紹介します。
これには胸をえぐられました。
「子どものために時には叱ることも必要」という自分の欺瞞を暴かれたからです。
もう少し細かく見ていくと
叱るの定義を3つに分解して考えてみましょう。
①立場が上の人が下の人に対して行う
親が小さい子どもを叱ることがあっても、その逆はありません
②ネガティブな感情を与える
「叱る」になるか否かは、受け手側がネガティブな感情を抱くかどうかで決まります
③相手をコントロールしようとしている
相手に変わって欲しいと思い、その手段として叱るのです
ポイントは②でしょう。
する側が説得や指導だと思っていても、された側がネガティブ感情を抱いたら、それは叱るになるわけです。
叱られた側の脳内で起きていること
叱られてネガティブな感情を強く感じた人は「防御システム」が働き、「戦うか、逃げるか」の2択から行動を選択します。
人間がそんなに単純なわけあるかいっ!と思った方、もう少しだけお付き合いください。
動物が捕食者に襲われている最中に「うん、この場所は捕食者から丸見えだったから狙われたんだな。群れの中に紛れていなかったのも敗因だ」などと悠長に考えていたら、食べられてしまいますよね。
そのため反省や考察は後回し、「戦うか、逃げるか」の2択に集中することで生き延びる確率を上げているのです。
これはとても合理的な本能で、動物から進化した人間にも受け継がれています。違いがあるとすれば、爪と牙で戦ったり、走ってその場を逃げだす代わりに、「ごめんなさい」と謝り許しを請い、その環境下から逃れようとするというところです。
「叱るには効果がない」と言い切る理由
防御システムは、自分の生命を守るために組み込まれています。
しかしその一方、防御システムが働いているときは、学びや成長を司る脳の機能が低下しているという研究結果があります。
先ほど、動物が捕食者に襲われたときの例にある通り、戦うか逃げるかの瀬戸際にあるとき、あれこれ思いを巡らせたり、次に活かそうなどと考えていては死んでしまいます。
そのため、叱られてネガティブな感情を強く感じているときに、何かを学ぶというのは困難です。
このすれ違いをまとめるとこんな感じ。
子どもを叱ったとき、その瞬間は「はい!ごめんなさい!」言いますが、数日後(下手すりゃ数分後)には同じことをします。
その背景には、こんなからくりがあったんですね。
それでも私たちは、ついつい叱ってしまいますし、それがエスカレートしていくことすらあります。
それがなぜなのか、後編に続きます。
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