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日本を好きでいてほしい、だからこそ日本に必要なこと

日経COMEMO意見募集 「#外国人社員に何を期待しますか」

私が外国人と一緒に働いたのは、外資系通信社にいた時だった。世界で1~2万人、日本では600人程度(当時)の規模。日本支社では私の見た印象では3~4割が非日本人。

私のいた英日翻訳チームは全員日本人だったが、私のいた席のすぐ後ろには別なチームがあり、外国人が座っていて、英語での会話が飛び交っていた。この職場で働いていた外国人社員は、高度な技術を持つ人達だった。ランチタイムや社内行事で彼らと会話を交わした。エキサイティングな時間だった。

さて、この問いに答えていく。

〇あなたが外国人社員に期待することはなんですか。企業が外国人社員を採用するメリットはなんでしょうか?

〇外国人社員に活躍にしてもらうには、どのような制度が必要で、どのような配慮が求められると思いますか?

〇これからどのような分野で外国人社員が活躍すると思いますか?

私が外国人社員に期待することは、「日本を好きでいてほしい」。自らの意思で日本に来て働く外国人は、「日本のカルチャーが好きなことがきっかけで」ということが多い。

だからこそ日本に必要なことがある。

企業が外国人社員を採用するメリットは、主にパフォーマンス面だ。これは日本人社員を採用する場合と変わらない。

「外国人はこういう技術やマインドを持っている」より、「高い技術やマインドを持った人が外国人」と考えた方がいい。

ただ多国籍な人々が働きたいと思って集まってくるグローバル企業には、それなりの要素(技術力、営業力、マーケティング力、カルチャー、働きがいにつながる施策など)がある。その企業での経験を持った人を採用することは、企業にそれなりの知見がもたらされるメリットがある。そういう人材のプールに、外国籍の人がいるということだ。これは多国籍な人々が学びたいと思って集まってくる大学の卒業生についても言える。

日本の企業は、こういう人々が「働きたい」と思える制度や「受け入れられている」と感じられる環境を整える必要がある。

昨年、ダイバーシティをテーマにしたキャリアフォーラム「Rainbow Crossing 2020」(主催:Rebit)に参加した。コロナでオンライン開催となったが、充実したイベントだった。

私はそこで、野村証券などで構成される野村ホールディングスで働く外国人社員の話を伺った。

野村証券は、経営破綻したリーマンブラザーズを事業承継して以来、元リーマンの社員が魅力を感じてとどまり、パフォーマンスを出してもらうために、リーマンにあったようなダイバーシティ&インクルージョン活動を進めてきた。それから10年あまりになる。

そこで話を伺った1人は、ITインフラサービス部門に所属するインド出身の男性社員で、9年目。

もっと日本的かと思っていたが、外国籍の社員も自然に存在し、働きやすい。グローバルでダイバーシティな環境で働きたい人がスタートするのに、野村は良いところだ。

いま野村の社内には、マルチカルチャーをテーマにした社員グループが作られており、そこで外国人社員と日本人社員が共同で参加して、マルチカルチャーをテーマにしたオンラインイベントを開催したりしている。異文化について学んだり、偏見をなくしたりする効果があるという。

特に欧米系のグローバル企業には、ERG(Employee Resource Group、社員リソースグループ)が作られていることがある。これは、社内のクラブ活動のようなもので、社員有志で運営されており、中でも最近増えているのは、ダイバーシティをテーマに、社内の啓発活動をボトムアップで担うためのグループ。こうしたグループは、テーマ別にあって、女性の活躍、セクシャルマイノリティ、障害者、そしてマルチカルチャーをテーマにしたものもある。

私も外資系通信社にいた時にERGに参加したことがある。入社して2日目にERG主催の社内イベントに誘われ、私も「受け入れられている」と感じることができた。このことは良い思い出になっている。ERGがあるおかげで、仕事を頑張れた。

同業他社の外資系企業の日本支社でERGの活動が盛り上がり、人材が惹きつけられているのを知った日系企業の人々が、「自社でも同様のグループを立ち上げよう」とする動きが、ひそかに始まっている。野村がその例だ。

私はそれを見て、「日本企業でもここまでできるのか」と感心した。

ERGは画期的な制度で、日本企業でも広がるといいと思う。

日本は人口減少に伴う労働力不足を補う必要がある。様々な業種で外国人社員が活躍することになるだろう。業種を問わず、心理的に受け入れられていると感じる場作りが必要だ。

「日本で働いて良かった」と思える外国人が増えるように。

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