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「直感」文学

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「直感的」な文学作品を掲載した、ショートショート小説です。
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#超短編小説

「直感」文学 *10月の憂鬱*

「直感」文学 *10月の憂鬱*

 10月は、私の中で一番気分が落ち込む月だった。

 月の流れがどうだとか、肌寒くなる季節だからとか、人肌恋しくなる季節だからとか、そんなことはどうでもよくて、

 ただなんとなしに、……そう、理由もなしに、

 ただ寂しさをひしひしと感じてしまう月なのだ。

 
 「10月はいつだって滑稽だからよ」

 母の言葉は何の説得力もなく私に投げかけられて、そしてそこにどういった意味があるのかも分からな

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「直感」文学 *喧騒の間*

「直感」文学 *喧騒の間*

 夜の新宿に繰り出したはいいものの、僕は特にやることを見つけられずにいる。
 そもそもなんでここに来たのだろう、と疑問に思うが、家にいることでなんだかんだと溜まった鬱憤が、ただ無条件に僕を新宿に向かわせたことに理由を与えることの方が難しかった。
 週末の新宿は人がごった返し、様々な人間模様が伺える。きっとそれぞれに皆何かを抱え、それを一時でも忘れたいからここに来るんじゃないかと思えた。

 じゃあ

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「直感」文学 *救われることに何を覚えて*

「直感」文学 *救われることに何を覚えて*

 救われる度、一つ、私の何かが欠けていくような気がする。

 それがなんなのか、未だ私には理解出来ていないけど、なんだかそんな”欠けていく感じ”はいつだって私を包み込んでいて。

 どんな救いだってそう。彼がご飯を奢ってくれたり、友達が私の話に笑ったり、家族が一人暮らしの私の家に野菜を送ってくれたり。そんな些細な事柄で、私はちょっとずつちょっとずつ欠けていく。
 欠けていった先、私はどうなってしま

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