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「直感」文学 *救われることに何を覚えて*

 救われる度、一つ、私の何かが欠けていくような気がする。

 それがなんなのか、未だ私には理解出来ていないけど、なんだかそんな”欠けていく感じ”はいつだって私を包み込んでいて。

 どんな救いだってそう。彼がご飯を奢ってくれたり、友達が私の話に笑ったり、家族が一人暮らしの私の家に野菜を送ってくれたり。そんな些細な事柄で、私はちょっとずつちょっとずつ欠けていく。
 欠けていった先、私はどうなってしまうのだろう。小さく欠けていくことを繰り返したら、私はいずれなくなっっちゃうんだろうか。そしたら、どうしよう。私は私でなくなって、ずっと小さな、誰が見ても私を私だと認識出来ないような「物」になっちゃったりして……。

 結局、そんな妄想は何の救いにもなりはしない。
 きっと私の欠けた部分っていうのは、私を救った人々がちょっとずつ持っていっちゃってるんだと思う。「ねえ、その私の一部を持っていってどうするの?」なんてもちろん聞くことは出来ない。
 だってそれはきっとみんな意図してやっていることなんかじゃなくて、善意を売りたい訳でもなくて、ただ自然な行いの一部に過ぎないんだと思うから。

 だからこそ罪だ。
 みんなそんな自然の行いの中で、私の一部を持っていってしまうから。いずれ私はなくなっちゃう。

 でもでも、
 私だってなくなりたくはない。せっかくこの世界に生まれてきたんだもの。どうにかして、一秒でも長くこの世界を眺めたい。この世界の空気を吸っていたい。

 だから私は誰かを救う。
 彼に手料理を振舞ってあげたり、落ち込んでいる友達を慰めたり、元気な姿を両親に見せたり。そんな些細な事柄で、今日も私は私でいられる。

 私はまだ生きている。

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