見出し画像

新工場設立の話 IGA STUDIO PROJECT(3) 架台をもらう~コンセプトメインキング

前2回の続き。

新工場設立の話 IGA STUDIO PROJECT(1)~予想外7000坪の用地購入

新工場設立の話 IGA STUDIO PROJECT(2)~やっぱり個人保証が必要だった

2018年夏に、現状の工場建屋の引き渡し。その後、建屋の改装を行い、2019年春に稼働開始。当初のスケジュールは、ざっくりとはそんな感じでした。

建屋の引き渡しまでに、元オーナーさんと、現状の工場で使ってるもので、どれを残しておく、引き上げるみたいな交渉を何度かしました。2017年の夏から2018年春先ぐらいまでのことでしょうか。

巨大な架台を譲り受ける

後々に、大きく問題になったのが「架台」です。もともとの工場では、巨大な架台が設置されていて、半二階の構造になっていました。

画像1

(↑もともとの工場で使われた架台。かなりしっかりした構造。この架台を残してもらったことが後々面倒くさいことに...)

親父は貰えるものはなんでも貰っておけ、という性格です。また、少し変かもしれないですが「鉄骨」が大好きです。今、鉄がいかに高いか、鉄の相場もよく知ってますし、自身で切断やら溶接やら加工やらもやってきたので、とにかく鉄の重要性をよく知ってます。

その架台は、おそらく同じものを用意して設置しようと思うと、●千万というような値段になるものです。しかし、先方もその工場がなくなるので、架台の使い道はありません。処分するとなるとその費用もバカになりません。なので、先方としては、うちが引き取ってくれるのは願ったり叶ったりだったわけです。

うちの親父は、巨大な架台や鉄をタダで貰えるということで大喜びです。どこまで工場の中の構造を考えていたかは謎ですが、この既存の架台に合わせて工場をつくればいいと考えてたのかもしれません。

とにかく、架台はそのまま残してもらうとことになったわけです。

この時点で工場の設計が決まってたら、多分、この架台を置いていってもらうことはせずにそのまま退去時に引き上げてもらってたと思いますが、残念ながらこの時点ではまだ工場のカタチや設計はまったくカタチになってませんでした。

工場をコミュニティにできないか?

工場の設計は、現状工場の分析と、導入する機械の選定などと一緒にスタートしました。そもそも、工場ってどうやって設計するんでしょうか。どこに相談して、どんな風に進むのか、誰が設計するのか、正直、僕にはまったく良く分かりません。

普通に、工務店にお願いすれば、普通の工場にはなるんだとは思いますが、僕は普通の工場にはしたくないなと思ってました。

当時、考えてたのは、工場そのものがブランディングの拠点になる、コミュニティの拠点になる、ということでした。

単にモノをつくる場所ではなく、その場所に人々がやってきて、モノづくりを体験したり、工場という場所を活用して地域との繋がりを持ったり、あるいは外部のクリエイターさんたちと、工場でコラボしたり。そんなことを漠然と考えていました。

工場を積極的にファンとの交流の場にする、新しいコラボレーションの拠点にしていきたいなと思っていました。

そんな折に、顧問弁理士さんから紹介いただいたのが大浦イッセイさんでした。今回の工場のコンセプトメイキングや設計をしていただいたプロダクトデザイナーさんです。医療機器デザインなど、幅広いプロダクトのデザインを手掛けられてる方です。

コンセプト:モノを作る工場から楽しいを作る工場へ

大浦さんには、僕が漠然と描いているイメージや構想みたいなものを軽くお話したのですが、その後、すぐに提案に来てくれました。

その提案が、「モノを作る工場から楽しいを作る工場」をコンセプトにして、工場という呼び方ではなく、スタジオという呼び方にしましょう、というものでした。

画像3

(工場ではなく「スタジオ」の入り口のような雰囲気)

その提案の中では、例えば、工場内で使う素材はできるかぎり時間が経つにつれて味わいが出てくるような、古くなることがポジティブに捉えられるような素材を使う、というような提案がありました。最終的に予算の関係や、また、そもそもの製造物との相性の兼ね合いもあり、一部しか実現はできませんでしたが、すごく良い考え方だなぁと刺激を受けました。

家なんかでもそうですが、結局、新築の時が一番価値が高く、時間が経つと価値が落ちていく、というのが建物の基本だったりします。工場も、最初はピカピカで最高に気持ちいいのが、稼働が始まるとどんどん汚れ劣化していきます。

でも、ログハウスとかヨーロッパの街中にあるようなレンガ造りの古い家とかって、きちんとメンテナンスして大切に使っていれば、古くなることが「劣化」ではなく、むしろ味わいの醸成になったりしてます。

工場も、そんな風に、古くなっていけばいくほど味わい深いものになっていければそれは素晴らしいことだなぁと思ったわけです。大浦さん的には、木材や石など、あえてメンテナンスが必要で、手間がかかるような素材を使うことで、スタッフがそれを大切に使おうという意識も芽生えていく、それが重要なんじゃないか、というようなことを仰っていて、社員にそういう意識を芽生えせていく工場というのも、とてもユニークで面白く感じました。

画像3

(↑※IGA STUDIOの実際の写真/予算の関係で、全部実現はできなかったけれども、工場内の通路壁にはレンガタイルで。時間が経つ、古くなっていっても味わいが出てくるようなものを使った)

提案がすごく良かったので、設計についてはほぼほぼ即決で、大浦さんにお願いすることで決めました。工場の設計などは本職ではないので、知り合いの設計事務所さんと一緒に進めていくということにはなったのですが、大浦さん自身も建築については、ある程度の知識もあり、工法や材質面などについても知見があったので、その辺の進め方や手配についてはある程度お任せすることにしました。

普通、工場って坪あたりどれぐらいの費用で建てたりするものなんでしょうか。そんなことも全く知らず、ド素人な状態から、ひとまず、このコンセプトに基づいて、初期設計を開始しました。

こちらもどうぞ。

新工場設立の話 IGA STUDIO PROJECT(1)~予想外7000坪の用地購入

新工場設立の話 IGA STUDIO PROJECT(2)~やっぱり個人保証が必要だった

新工場設立の話 IGA STUDIO PROJECT(3) 架台をもらう~コンセプトメインキング

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?