【いつだってイイコだから】

君と私、どちらも嘘つきだったなんて
分からなかったね。

いいよ、いいよ。全部君の好きにするんでしょ。
私はイイコだから、
悪いのはどっちゲームなんてしない。

これも想定の範囲内。自由なんて想像しない。

私は生まれつきのイイコだから、
失敗なんてしないの。失敗してはいけないの。

だから天使でいなきゃ。いつでも笑わなきゃ。
にこにこ、愛想よく、楽しく。
悪魔なんて抑え込まなきゃだめ。

先生に見えない角度。お母さんに映らない所。
あなたに見透かされない位置。

そんな自分の場所で息をしていたはずなのに、
いつのまにか足元がすり減っていって
安全地帯なんてものは無くなってた。

でも逃げられない。逃げてはいけない。
「逃げたら負けだ」って昔誰かに言われたから。

でもね、ほんとはね、

強がってる私は誰よりも硝子みたいなの。
落としたら割れて戻せなくなっちゃうから
必死に抱えるしかなくて。

だから必死に覚えた。自然な口角、
たくさんの褒め言葉、たくさんの声色。

だから分かったの。あなたが私と同じ事を。

たくさんのレパートリーからしか
言葉を選べなくて、相手のタイミングを測って
ものを言う事しかできなくて。

悲しいおそろい。

間違ってばっかの私は、何もできない。
でもこうやって生きる事しかできないから。

永遠に続くような日常から、少しでも
目を逸らせるために。

私はこれからもちゃんとイイコだから。
君はこの事を秘密にしてね。