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大雪の日の前におでんセットが売り切れる街まで好きだよ

東京は警報級の大雪予報が出ていて、
なんだか大季節外れの台風前みたいな、はたまた極寒地への旅行前みたいな気持ちでいた。
なんとなくソワソワして、ちょっぴりワクワクもして。買い込んでいた極暖ヒートテックを出したりしつつ、はたと冷蔵庫を見ると厳しい寒さと対峙するには決定的な要素が足りないことに気がついた。

おでん。おでんを作らねば。

もちろん鍋やシチューなど温まり要素があるメニューを作る材料は既にあるのだが、こう毎日寒いとそれらは日常である。しかしおでんは我が家の食卓においてはSSRというか、珍しい部類かつかなり嬉しい部類の食べ物で、そんな大層な雪の日なんてぴったりなのだ。もうこうなるとおでんしかありえない。パブロフの犬ならぬ大雪前のおでんである。
丁度出かける用事があったので、その日に買い物に寄ることにした。寒い日に外に出なければならぬのか…としぶしぶ思ってたいたものの、メインイベントがおでん具材購入となると話は別である。ルンルンである。

おでんの日はいつも、紀文のおでんセットを購入する。それぞれの具材を別で買うと、一つ一つがデカくて最高なものの少々お財布の紐がひよる。そこで、おでんセットがかなり丁度良い塩梅なのだ。美味しい練り物たちがちょうど2人前ずつ入っていてお手頃。一見具材は小さいが出汁を吸うとブワワと大きくなって愛しい。ちくわなんて3倍くらいのデカさになってマジ最高。
大根と卵は別で用意が必要だが、それ以外が揃うだけでかなりおでんとの距離が近くなる。紀文さん、いつもありがとう。

今日もおでんセットを買うぞ〜と意気込みながらスーパーに足を運んだ。大きな大根と、あと我が家のメンバーはおでんのタコが好きなのでタコ、鶏肉、と手に取ってチルドコーナーに向かうと…

ないのだ。おでんセットが。
いや正確にはある。我が街のスーパーはおでんセットを大小2種類取り扱っていて、大食いモンスターが暮らす我が家はいつも大を買うのだがその大が、ぜんぶ、なかったのだ。

なんだか、嬉しかった。
備えが必要なくらいの雪を前に、自分も含めてこの街のひとびとはたっぷりのおでんを求めるのだね…となんだかめちゃくちゃ胸がキュンとしてしまった。

思えば今暮らしている街、かなり好きだ。美味しいお店も新鮮な八百屋さんも緑豊かな公園もあるし、行き交う人と言葉を交わす機会があるとみんな優しい。あとあんまり関係ないけどネコがたくさんウロウロしてるのも良い。居心地が良い街なのだ。みんな寒い日に求めるのがおでんなら納得だ。一口もおでんを食べてないしなんなら棚ごと空っぽなのに、心があったかくなってしまった。

でも普通におでんは食べたいので小さい方のセットとでっかいはんぺんと魚河岸揚げ(プワプワのさつま揚げみたいなやつでかなり好き)を買って帰宅した。魚河岸揚げ、でかい方のセットにしか入ってなかった気がするけど美味しいんだよね〜…と思いながら買ったのに普通に入ってて、今夜のおでんは魚河岸揚げがゴロゴロしている予定。

きっと今日はうちだけじゃなくいろんなお家で、おでんセットのちくわがブワブワ大きくなって喜ぶ顔があるのだろう。春夏秋冬その時々それぞれにご飯が美味しいという奇跡を、あらためて味わう日にしようと思う。

おでんセット、大好き。

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