030_ひとときの出逢いと別れ(2)

"Receipt! Receipt!" と繰り返すスタッフの叫び声で、思わずはっと振り返った。

前日、家族から「どこか遠くに行きたい」というなんともざっくりなリクエストを受けて、朝からレンタカーを運転して、苺狩りと美味しい食事を食べるワンデイトリップを終えた午後9時。往復250キロを運転し終えた僕は、レンタカーの返却カウンターで少しぼぉっとしていたので、スタッフの出す大声に思わず面食らった。

声の向き先は同じく返却カウンターにいたタイ人の若者に向けられていた。どうやらレンタカーを返却する前にガソリンスタンドに寄ったのか、寄ったのならその証明に給油のレシートを見せてくれという主張だったようだ。タイ人の彼は、"No receipt!" と応戦する。このままでは埓があかないと思って思わず声を掛けた。

(僕)"Did you get fuel at gas station?"
(彼)"Yes I did."
(僕)"If so, you might have a receipt."
(彼)"I inserted my credit card to the payment machine but I couldn't get a receipt."

この一連の会話で彼が給油をしたが、近くから出てくるレシートを取り忘れたか、レシート発行ボタンを押し忘れたんだろうことが分かって、スタッフがクルマの給油メータの確認に行った。

(僕) "You may missed this time. You need to put a button on the machine for printing a receipt at gas station. Anyway, it happens. Suppose you don't need to pay additional fee after the confirmation, but please remember, you need to keep the receipt for the evidence that you surely got fuel."
(彼)"All right."
(僕)"Enjoy the rest of your journeys here in Tokyo!"
(彼)"Arigato!"

…という会話を交わして、僕は先に店を出た。

せっかくの日本での旅の思い出を、ほんのちょっとしたレンタカートラブルで台無しにしてほしくない、その想いだけだった。そしてこれにめげずに、彼が日本を好きになってまた旅行に来てくれたらいいなって。

決して英語での会話が得意ではない僕だけど、この日はカタコトでも話せて良かったなと思った。(そして実際のやりとりはもっと辿々しく行われたことを正直に告白しておきます。英語がもっとうまくなりたい!)

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