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ライカMDaというフィルムカメラ(後編)

小さな世界

ライカMDaを購入する前。私ことアラサー会社員は、広大なインターネッツの中でそのレビューを漁っていた。そこで、あるnoteの記事に出会う。実機の写真が掲載されており、それはとても綺麗な個体だった。そもそもこのヘンテコなカメラシリーズを知ったのは、ジェットダイスケさんの動画だ。ジェットさんはM4-2がベースとなっている“MD-2”を所有されている。ちなみにMDaの前にはM2をベースにした“MD”などもあるのだが、私には“これ”がしっくりと来た。そうして中古を探すと、フリマアプリにわりと綺麗な個体が出されていたのだ。けれども、どこかで見たことがある(商品)写真。なんと、それは私がnoteの記事で見た個体そのものだった。イッツ・ア・スモールワールド。



令和ロマン

まず最初に、暴論かつ自論になることをお詫びしたい。フィルム機(Mシステム)における“ライカらしさ”というのはどこにあるのか、阿呆の私にはまだ分からない。ライカのフィルム機は何種類もあるが、デジタルのようにカラーフィルター(センサー)が入っているわけではない。完成する写真においては、装填したフィルムの癖と使うレンズの味わいがほとんどを占めている気がする。そう雑に考えると、やはり見た目と僅かな機能差が判断基準であり魅力(“らしさ”)ということで良いのだと思う。加えて、シャッターフィールや機械式の丈夫さだろうか。プロが見れば一目瞭然だろうが、同じMレンズを使用してM3と他社互換ボディで撮影した写真を出されても私には判別できない自信しかない。

この暴論を前提とすると、MDaは無味乾燥と表現出来る。一方で、私は“機能美”を感じているのかもしれない。特定用途のために、限りなく装飾を削ぎ落として写真を撮るという機能のみが強調された機種。現代においては、面倒この上ないカメラだろう。しかし、私がフィルムカメラに求めているのは良い意味での“面倒”でもあった。デジタルと同じような感覚ならば、私はデジタルだけで十分なのだ。SDカードがいっぱいになれば、SSDなどに移してフォーマットすれば良い。Lightroomに突っ込んで、フィルム調のプロファイルを押せばそれなりに見える。とても便利だし、最初に物を揃えてしまえばお金は掛からない(欲を抑えることが出来れば)。ただ、“写真を撮る”という行為をより味わいたくなった。

Leica MDa
M 愛すべき人がいて

亀のように

私がMDaを使って写真を撮ると、多少は大袈裟だがシャッターを切るまでに1分ほど掛かる。両目で撮れる範囲をイメージして、iPhoneの露出計アプリを起動させて計測する。その計測結果と自身の薄い経験を擦り合わせて、F値やシャッタースピードを決定。そして、脇を絞めてカシャとシャッターを切って巻き上げレバーをガシャと動かす。フィルムカメラでは“サニー16ルール”というものが存在しているし、慣れていけば「だいたいこんなものかなぁ」という具合になっていくだろう。それでも、私は何となく1枚ごとにこの手順を行っている。ストリートスナップとしては致命的だろう。ブレッソンに見られたら怒られるかもしれない。じっくりと撮影すれば良い写真が撮れる、というわけでもないし。

友達と食事をしつつ同手順で写真を撮っていると「え、いまiPhoneで撮影したんじゃないの?」と驚かれた。周りから見ると、それぐらい不思議な行動なのだろう。それ故か、現像した写真を見ると「ああ、自分で撮ったな」と強く思う。ファインダーがないため倍率も関係ない。自分の目と風景の間にカメラがあるだけ。アップルの空間コンピュータ“Vision Pro”は、私たちの視界の中に様々な情報を出してくれる。実際に試してみると、自身の視覚が拡張していく感じがした。そんな両者はまったく異なる製品だが、どこか似ている気もする(たぶん気がするだけ)。大抵36枚か24枚撮りのフィルムを、亀のようなスピードで満たす。フィルムが高騰している今、私にはこれぐらいのペースが合っている。

ビゾフレックス(概念)。かなり強引だがこういうことも出来なくはない。iPhone15 Proはカメラで24mm, 28mm, 35mmなどの選択が可能。重すぎるので使わないけれど。
私が使っている露出計アプリ(iOS App)。有料契約もしていたけれど、更新せずに現在は無料版で利用している。単体露出計を買おうか迷うところだが、とりあえず保留中。

跋文・点てる

日本文化の1つに茶道がある。私は体験したこともないが(記憶にはない)、単にお茶を振る舞う/飲むということだけではないだろう。そこには“作法”というものがあって、最終的にお茶へ辿り着く。それに対して「もっと早くお茶を出してもらえませんか?!」と言う人はいないだろう。私にとってはデジタルカメラが煎茶で、フィルムカメラが(茶道を通じた)抹茶のような存在になるのかもしれない。MDaを満足に使いこなせる日が来たら、他のカメラにスイッチしても怖いものはなさそうだ。いや、別にそんな日は来なくても良い。何度も抹茶を点てるように過ごす。その茶器として、MDaはぴったりだと思う。いつか私が眠りにつく日まで共に。と駄文を綴りつつ、すでに私の手元にはない(謎)。

KODAK ULTRAMAX 400
KODAK PROFESSIONAL PORTRA 160
KODAK PROFESSIONAL PORTRA 400
KODAK PROFESSIONAL PORTRA 400
KODAK PROFESSIONAL T-MAX 100
FUJIFILM FUJICOLOR 100
CineStill 800T
CineStill 800T
FUJIFILM NEOPAN 100 ACROS II
KODAK COLORPLUS 200

これまで

付録

2024年6月19日、私は快晴の浅草にいた。カバンにはライカMDaが入っている。フリマアプリで見た画像通りの個体が届き、動作もおそらく問題がない。そのまま3ヶ月ほど使用したが、長く使うためにここでメンテナンスへ出すことにしたのだ。ご依頼したのは“ハヤタ・カメララボ”。預ける前にフィルムの巻き上げやシャッタースピードなどをざっと確認していただいたが、特に問題はないとのこと。とはいえ、せっかくなのでメンテナンスをお願いした。店長さんの「1回メンテナンスをすれば、ライカは長く使えるよ」という言葉が響く。私のMDaがどれだけの人の手に渡ってきたのかは分からない。だが、私の手元にある以上は次に繋げるべく大切にしたい(雑にカバンに放ったりはするけれど)。

混み合っているようで、メンテナンスが終わるのは9月中ということだった。ライカジャパンにフィルム機のオーバーホールを依頼することも可能なのだが、現在は1年以上待つことがアナウンスされている。それに比べれば早い(マッハ)と言えよう。この夏に使えないのはとても寂しいが、完全な状態で再会することを楽しみにしている。あとは、この間に別のフィルム機を購入しないようにしたい。そう綴りつつも、懲りずにM3を探していたりする。特段の意味はないが、両親(健在)の誕生年に製造された個体を中心に。時期としてはダブルストロークだったり、カナダ製(ビッグMと呼ばれたりするらしい)が含まれている。これもまた長い旅になるだろう。急いでもいないので、出会いをじっと待つ。

MDaよ、9月に会おう!

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