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ライカMDaというフィルムカメラ(前編)

序文

2024年3月某日。私ことアラサー会社員は、フリマアプリで1台のフィルムカメラを購入した。この世にフィルムカメラは数多存在しているが、今から新たなマウント(レンズとカメラを接続する部位:メーカーごとに規格が異なる)を集める体力と財力はない。故に買うならばライカの“M型”ことMシステムと決めていた。それを前提にした更なる条件は“電池不要の完全機械式”であるということ。中古カメラを見に行くと《露出計の保証なし》的なコメントが書かれていたりする。長期使用で、そうした機構から劣化していくのだろう。また、使用する電池も特殊だったりする(現在でも買えなくはないが)。私の怠惰さによりこれらは“リスク”だと判断され、先の条件追加に至った。


さだめ

もとを辿ると、私はライカQ2かM11またはM-A(Typ127)のどれを買うかで悩んでいた。M-Aは新品購入が出来るライカの機械式カメラで電池は必要ない。それに惹かれた訳を《フィルムを入れてファインダーを覗いてシャッターを切る以外の行為はできないのだ。そんなシンプルさに惹かれたのと、デジタルと違って古くなることがない。故に自分がいつかカメラに飽きるまで、もしくはこの世を去るまで付き合うことが出来るだろうと思った。》と生意気に綴っている。ただ、この気持ちは今も変わっていない。リスクになるような機構がない分、経年で故障する箇所も少ないだろう。“オールドコンデジ”などと括られるように、デジタルは人間と同じく常に歳を取っていくものだ。

そうして我が家にやってきたのが、ライカのフィルムカメラ“MDa”である。もはや露出計どころではなく、ファインダーが存在していない。M11モノクローム(以下:M11M)というカメラのレビューで、私はライカのMシステムおよびレンジファインダーについてこう綴った。《“レンジ:距離”を“ファインドする:見つける”のだ(ルー大柴さん的)。》と。そう、MDaはMシステムでありながらレンジをファインドすることが出来ない。インターネッツでシリアルを調べるに、1971年2月4日に製造された1200のうちの1台のよう。ボディは1967年に発売開始されたM4をベースとしつつ、M2のパーツも流用されているらしい。このキメラのようなカメラは、ある宿命を持って誕生している。

“Leica MDa”
裏側

計測

そう、MDaは一般ユーザー向けではなく主に“計測”のために誕生した。英語の記事が多く翻訳が追いつかないが、例えば郵便局(ドイツ)で電話利用に伴う検針票登録の際に使われていたそう。電話メーター?をMDaで撮影し、先月との差を出した後に請求書作成を行なっていた感じだろうか。私のMDaは普通のMシステムと同様にレンズが簡単に交換可能な仕様だが、“Postkamera(ポストカメラ)”という同系列の機種は焦点距離35mmのズマロンなどが文字通り“固定”されている(ちなみに先日、北村写真機店で1台のPostkameraが販売されていて危うく購入しかけた)。このように、決まった位置のX(被写体)を撮影する用途からファインダーが取り除かれているのだ。

製造数は通常機種よりも当然ながら少ないためレアとも言える。さらに、それにしては安価で売買されているのでM4の修理時の“パーツ取り”として生贄に捧げられてしまうことがあるらしい。つまりは減る一方か。とはいえ市場価値はさほど上がっていかないだろうが、オリジナルを保っている個体はより貴重になりそうだ。ライカでは1954年に発売されたM3の人気が根強い。“ザ・ライカ”なイメージ。だが、私はどうもこの“のっぺら坊”な佇まいに惚れてしまった。古い言い方をすればマブい。加えて、M10-Dという機種が気になり始めていたことも関係している。2018年に発売されたM10-Dはデジタルカメラでありながら背面液晶がなく“フィルムライク”な楽しみ方が出来る。


寛大な拒絶

しかし、こちらもある種のレアであるため中古市場で今だに100万円前後の値が付く。そこで「ライクを味わいたいなら本気(マジ)もんのフィルムカメラを買えばいいんだ!」と思いついた私は阿呆である。M10-Dにはファインダーや露出計が備わっているが、MDaはどう撮れるか/撮れているかも分からない。人によっては究極にストレスだろう。ただ、私にはフィットする利点があった。それは基本的に単焦点28mmのレンズぐらいしか使っていないということだ。所謂パンフォーカスに設定してしまえば、細かく気にする必要がない。そして不思議なことにそうした広角ばかりで撮影しているので、ファインダーを覗かなくても「こんな感じだろうな」というのが分かってきた。

もう少し慎重な方法では、被写体までのだいたいの距離とレンズ側の距離を合わせれば撮れなくもない。これがMシステム、というかレンジファインダーというカメラの面白さでもあると思う。そんなこんなで実際に撮ってみると意外と“普通”だ。コールドシューにファインダーを外付けすることも可能だが、現在は必要性を感じていない。その辺に煩わしさを感じる方は、そもそもこうした機種を選ばないだろう。先のM3は名機だが、私が使う28mmなどにブライトフレームが対応していない。もちろん装着して撮ることは出来るが、通常以上にアバウトなフレーミングになるだろう。その点、MDaは何の制約もない。広角を愛そうと標準を愛そうと、すべてを受け入れながら拒絶する。

FUJIFILM FUJICOLOR 100
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KODAK COLORPLUS 200
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KODAK PROFESSIONAL T-MAX 100
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(つづくはず)


これまで

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