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山崎光学写真レンズ研究所(後編)

2024年3月13日、私は再び新宿区の路地を彷徨っていた。数日前に「レンズの修理が完了した」とお電話をいただいたのだ。インターネッツを見るに“数ヶ月掛かった”という話もあったので、1ヶ月弱で完了するとは思ってもいなかった。もしかすると、そこまで重症ではなかったのかもしれない。山崎光学写真レンズ研究所に到着すると、我が沈胴ズミクロンが机の上に置いてあった。先の通り、ありがたくも早く修理が完了したので感動の再会でもない。勿論、ワクワクはしている。


退院

問題だったレンズ内は再コーティングし、ピンは出るように調整いただいたとのこと。シリアル番号通りなら、70年の歴史があるレンズである。そのため“どの時点で”ということは分からないが、コーティングはカビを取り除く際に剥がれてしまったようだ。早速、持参したライカM11モノクローム(以下:M11M)に取り付ける。1月に伺った際に、山崎和夫さんから「この室内で何枚か写真を撮っておいてください」と言われた。修理前と修理後で見比べてみてください、という意図だ。

前回と同じく机上の照明を撮らせていただいた。すぐにプレビューを押して、1月の写真と見比べる。正直、その時点で私はしっかりと違いを言語化することが出来なかった。しかし、照明に垂れ下がる紐の質感はよりクリアに写っている(気がする)。何よりピンが正確に出るようになった。山崎さんの「多少のゴーストやフレアは出ますよ」という言葉もそうだが、基本はオールドレンズなので修理後に“モダンになる”ことを期待してはいけない。それでも、私としては大満足の治療だった。

2024年1月31日
2024年3月13日
2024年1月31日(拡大)
2024年3月13日(拡大)
以前よりも気にならない

with a7IV

with M11モノクローム

終わりに

以降、M11Mやソニーのa7IVで使っている。言葉が正しいか分からないが、修理前と比べると断然シャープだ。特にF2.8から4周辺の切れ味に驚いた。こんなにも鋭いレンズだったとは。沈胴ズミクロンの購入金額は10万円以下で、今回の修理代は3万円ジャスト。これをどう捉えるかは人によると思うが、私には良い選択(買い物)だった。この世には数多の単焦点50mmがあるが、現在のところ他に買うつもりはない。なるべく長く大切に使い、可能であれば次世代に託したいレンズだ。

レンズの確認をした後に、山崎さんと少しお話をさせていただいた。多くはないが「レンズのコーティングを剥がしてほしい」という依頼が来ることもあるそうだ。私がマイナスに捉えた過度なゴーストやフレアを出したいということらしい。色々な需要があるものだ。逆にそうしたレンズが市場に出ることもあるだろう。“オリジナルとして買ったレンズがコンバージョンだった”的な動画も見かけた。買う側の心持ちにもよるが、オールドレンズを選ぶ際は目利きがより重要になりそうだ。

2024年1月31日
2024年3月13日

これまで

付録

帰りのこと。プリントして持参した写真を持ち帰ろうと思っていたが、山崎さんより資料として欲しいとお声がけいただいたので1枚を寄贈した(大袈裟)。そのため、山崎光学写真レンズ研究所さんの机のどこかに私の写真が紛れているはずだ。今後も来るだろう患者さんたちの役に立てば幸いである。なお、私がこのレンズを購入したお店を含めて実際に試させてくれるカメラ屋さんは多い。それって、とてもありがたいことだなと改めて思った。今後も私にとって素敵なレンズに出会いたい。

机のどこかに

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