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束の間小説

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以前なるべく一日一本投稿していたもの。 ほんのすこし読みたいのに、本一冊は重すぎる、と思っている人に。 束の間の小説を贈ります。 あなたの京都になれなくても、あなたの箱庭になり…
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記事一覧

ひさしく

もうやめてしまったものの残骸の上を歩いている 残骸は何度も感電したように振動してもうどう…

頭痛のしない音はないんだった。

耳に異物をつけたまま、各駅停車に揺られる。 再生リストをしばらく眺めて、頭痛のしない音楽…

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冬の息、意外と

白い、暑い、湿っぽい。 喉を焼き切るような冷たさ。 君の亡霊は地平線の向こう側を走っている…

3

駅前の明るい階段をのぼってた。神殿へと続くらしい。どろどろに酔って足元がふらふらしてた。…

4

ひとりごと

ひとりごとを集めたゴミ箱がある。 あちこちの通学路の排水溝に蹴った石たちが、流れ流れて薄…

2

初めましての場所

 どこかであった気がするとか、そういうのは置いておいて、ただ新鮮な風をそのままにスカート…

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いつも。

寂しい。それ以外の感情はあるんだけど、ごった返していて、引っ越したばかりの部屋に積まれた段ボール状態。段ボール箱に「寂しい」って書いてあったから読み上げたけど、実際中身はもう読まない茶色の本やダサい横縞のTシャツや昔沖縄で買ったポストカードなんかが入っているんだろう。私の生活はそういう意味のないもので囲まれていて、豊かさが不純物で濁ってゴミ箱同然になるのをみていた。ああ、だから「寂しい」なのか。感情がゴミみたいに散乱しているから。そのせいで、私の身体はひとつのまとまりある行動

夜を歩く胎児

生まれてからこんなにも経ったのに、まだ生きている心地がしない。 私の中に眠っている胎児の…

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束の間小説 3本

生きていたとして。あなたが生きていたとして。ずっと胸の奥がえぐられるように傷んだとして。…

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いきをすういぞんしょう

これで人生終わりにする。 ビルの隙間に沈むのも終わりにする。 わざと喫煙所のちかくを通っ…

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音声入力

私はもうここにはいない いていいはずがない だってあの時 消えたんだもの あの時 死にたい思…

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ああ忘れちゃった

夢がインクに沁みて、そのまま雨に流れた。紙は溶けて霧散した。夢だったと思う。それは確かに…

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わたしの園

わたしの園はなるべく飾りたいと思う。チョコレートだとか花壇だとかがたくさんあるお庭がいい…

夕焼けに透かした秘密

少し待ってほしい。横断歩道の真ん中で夕陽を見ていて。引っ越し業者も賃走のタクシーもきみに見蕩れるでしょう。クラクションで歓喜を伝えるかも。ドライバーは楽しく足でアップテンポのリズムを刻む。そのうちもう街灯がともって、バチバチの照明があなたを囲む。そんな想像をして夕方を歩く。みんな、私の秘密を知らないだろうなあ。あたしの靴裏はアップテンポ。