【小説】幸福 26
ウィリアムをホテルで降ろした後の二人だけの車内は息が詰まった。
香奈もトビアスも何も言葉を発さないからだ。
夕日に包まれたLAのハイウェイを走らせるトビアスの横顔もまた夕日に包まれていて、この横顔を永遠に見ていたいと思う。
でもきっと今日で見納めだ。
香奈は胸に焼き付ける。
そして走馬灯のように良い思い出が湧き出てくる。
トビアスの家にはレコードがあった。
トビアスがセットして針を落としてくれた姿。
そしてダンスを踊ろうと言われて、踊れるわけがない香奈に手取り足取り教えてくれ