【小説】幸福 37

2015年11月24日 日本時間22:15放送

香奈
起立。礼。着席。ロッククラッシーズ、略してロックラをお聴きの皆さん、こんばんは。緊急授業の先生をします元エイントの香奈です。

今日は私の担当の日じゃないんですが、重大発表があるので枠をいただきました。
もうご存じの方もいるかもしれませんが、なんと私達、グラミー賞にノミネートされました!
すごいよね!びっくりしたよ!
私達エイントは解散してるのに、最優秀レコード賞にノミネートされました!
ただし、注意書きがありまして、解散しているので受賞はないとのことです。
つまり私たちはノミニー止まりです。
でももうじゅうぶんです。
本当にうれしいです!
みんなのおかげだよ。
ありがとうございます。

そして本日はお祝いの会ということで、スペシャルゲストをお呼びしています。
大崎直樹さんです!

大崎(以下、大)
こんばんは、大崎直樹です。

香奈(以下、香)
みんな大崎さんを知ってるかな?
ずっと音楽活動をされてる大御所です。
私がたまたま大崎さんのライブを見て、感動して、一緒にやってほしいってお願いしました。
それで今、大崎さんとのコラボをすすめています。
そして今回のお祝いの会に、絶対出たいとおっしゃったので出てもらいました!

大:はい。絶対出たかったです。

香:なんでですか?
普通に来月のゲストで来ていただければいいのに。

大:うん。ちょっと香奈ちゃんにいいたいことあってきました。

香:ラジオで言わなきゃならないんですか?

大:そう。

香:なんかいやな予感がするんですけど。

大:大丈夫だから。さっそくお話してもいいですか?

香:わかりました。
なんか緊張する。どうぞ!

大:言いたいことがまとまらなかったので手紙を書いてきました。
読みますね。

香奈さんへ
グラミー賞ノミネートおめでとうございます。
僕たちミュージシャンはみんな目指している賞ですが、日本人で受賞できた人は数少ないです。
その中に香奈さんが入られたこと、とても驚きましたし、誇らしく思いますし、当然の結果だとも思います。
それだけ香奈さんたちの音楽に対する真剣さ、技術の高さ、貪欲さ、すべてが評価された結果です。
香奈さんと同じことをできる人はいません。
だからノミネートは当然だと胸を張ってください。

そしてそんなグラミー賞にノミネートされた偉大な香奈さんにお伝えしたいことがあります。
僕と付き合ってください。
香奈さんがどんなつらい過去があったのか、詳しくはわかりませんが、僕も多少なりとも苦労しています。
だから香奈さんの気持ちを少しは理解できますし、支えられます。
それに今、こうしてラジオで皆さんの前で告白すると、僕がまたやらかしたり、浮気したとしても香奈さんが責められることはありません。
責められるのは全部、僕になります。
だから香奈さんは何も恐れることなく、僕に飛び込んでもらってかまいません。
僕のことを嫌になれば僕を捨てればいい。
僕の方から逃げることはありません。
ご検討をお願いいたします。

香:まじですか?

大:うん。まじ。

香:まだ知り合って日が浅いですけど。

大:香奈ちゃん、今、危ないから。
俺じゃなくてもいいんだけど、誰かと一緒にいたほうがいいって思うんだ。
だったら俺でいいじゃないかと思った。

香:そうか、危ないですか。

大:うん。俺だけじゃない。
岸さんもウィリアム君も同じ意見だったから。

香:そうなんだ。あの、私、ノミネートの連絡来た時、生きてたご褒美は大崎さんだって言ったの覚えてますか?

大:覚えてるよ。

香:私、あの時正直、グラミー賞ノミネートより大崎さんに相談に乗ってもらった方が嬉しかった。
大崎さんのぎゅーは高いのに、特別に無料でしていただいたことのほうが嬉しかった。
それぐらい、わたしにとって大崎さんって大事な存在で、こんなのおかしいですけど、ものすごく好きになってるんです。
でも私なんかでいいんですか?

大:もちろん。香奈ちゃんがいい。
じゃあ今から付き合おう。

香:わかりました。
あぁ、もうお時間ですかね?
なんかドタバタしちゃったけど、私は結局、幸せです。
ファンの方から応援してもらえたし、ケラングも獲れたし、ノミニーにもなれたし、最高のパートナーと出会えたし、達也やウィリアムみたいな大事な仲間がいるし、頑張ってきてよかったなって思います。
つらいこと、悲しいこと、山ほどあったけど、それをしたから今の幸せをかみしめることができてると思います。
本当にありがとうございます。
大崎さんとのコラボも楽しみにしていてください。
ではまた来月お会いしましょう!

大:僕も幸せです。

香:よかった。ではまた!

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