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評論、エッセイ

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バンド『コンテンポラリーな生活』の歌詞の世界

バンド『コンテンポラリーな生活』の歌詞の世界

シンプルでキャッチー、「ゆるふわ樹海ガール」で一世を風靡した石風呂(朝日廉)がボーカルをとるバンド、それがコンテンポラリーな生活(通称コンポラ)である。

その魅力は色々あるが、なんといっても飾り気のなさ、率直さ、開き直りが挙げられる。世間は色々ゆうとりますが、その通りやってられへんのはそうですが、まあまあそんな恐い顔しないで、変な踊りでも踊ってやり過ごしましょ、そんな肩の力の抜けた感じ、あっけら

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無のなかに身を置くこと、グレン・グールドを聴きながら

無のなかに身を置くこと、グレン・グールドを聴きながら

最近グレン・グールドのピアノソナタを聴いている。三枚のアルバム。バッハ、モーツァルト、それとブラームス。バッハは料理中、モーツァルトは通勤中、ブラームスは就寝前。

なんていうか、凪。

不幸や嫉妬や身の境遇に気鬱になるこんな乱世にクラシック、ピアノソナタ。どんな了見かといえば、反抗への疲れ。もういいよ一旦置いとこうよってそんな意図。

僕だってロックが好きでそればかり聴いている。だが四六時中三百

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月にあなたの居場所はあるか――村上春樹とスガシカオ

月にあなたの居場所はあるか――村上春樹とスガシカオ

   1 月に戻りなさい、君
『ダンス・ダンス・ダンス』(1988)を読み終えた。三回目の読了だ。村上春樹の作品には、どこか喪失感を和らげてくれる力がある。もちろん、読むことによって僕の現実世界における問題に、抜本的な解決法が示されるわけではないし、あるいは無暗に昂揚感を与えてくれるわけでもない。喪失に向き合う際の姿勢や態度といったものだ。村上春樹の小説が教えてくれるものは。
 暗闇に足を取られな

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