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ほぼ一人制作者の宅録機材紹介 ~ ここまで出来るDTMの世界 その2

前回は楽器やインターフェイス、基本ソフトや打ち込み音源について紹介しました。

今回はミキシングで使用しているエフェクトをご紹介します。

前記事の最後にも書いた通り、エフェクトはたくさんあり、楽曲や使用楽器、方向性などで同じプラグインや設定でも聴こえ方は大きく変わります。
いつも同じ設定というわけには中々いかないのですが、そこがオモシロいところでもあります。

創作とは正解のない世界だからオモシロい。タイパ(時短)なんて言ってないで、まずは色々いじって自分なりの好みを見つけたいですね。
ただ、流行歌を作り、再生回数を目標にするのであればセオリーに従う方がいいかもしれません。
何を目標にするか、が大事です。
ミキシングはどんな音に仕上げたいか、が重要です。
その音になっていないのであれば、どこかが違っている、と思って試行錯誤します。


ミックス前の作業

ということで、ここからは私個人の使い方を紹介します。
まず、ミキシングに入る前に、各楽器やボーカルパートを基本的にはオーディオデータ(32bit float 48KのWAV)に書き出します。
MIDI音源のマスタートラックにはオーディオエフェクトを掛けることが出来ますが、後々動作が重くなってしまうのでオーディオデータにした方が良いかと思います。
それでも、後々微調整したいドラムなどは、MIDIも残して音源はオフにしておきます。

ミックスで使う主なエフェクトはEQ(イコライザー)、コンプレッサー、リバーブ、最後にマスタリング用エフェクトになります。
それぞれのプラグインには優れたプリセットがありますので、出したい音に近いプリセットを選び、微調整をしていきます。

EQ

イコライザーはどの周波数帯をどれだけブーストするか、カットするか、というエフェクトです。
音質の変化としてかなり顕著に分かるエフェクトですが、それゆえついつい聞こえのいいハイファイにしがちなので注意が必要です。

私が使用しているEQというか、ミックスに使用するエフェクトは

T-RackS 5(IK Multimedia)

というトータルエフェクト音源です。

種類が多いので私もイマイチどれを使用すべきか確信をもっているわけではありません。
色々試してみて、しっくりくるものを選びます。
プリセットの項目を見ると、ボーカル、ギター、ベース、ドラム、マスタリングなどの文字が入っているので、それらを試していきます。

もちろん、必ず使用しなければいけない、というわけではありません。
というのも、そもそもDAWの各トラックにもパラメトリックEQがついているので、そこで調整してもいいからです。

なので、私もギターなどには使わないことも多いです。
既に完成された音であればわざわざかける必要はないですし、あまりエフェクトを掛け過ぎても音が濁ってしまいます。
絵画でも混色が多いほど鮮やかさを失ってしまいます。

コンプレッサー

続いてコンプレッサーですが、こちらもT-RackS 5(IK Multimedia)にある数種類の中から選択して使用します。
たまに、KOMPLETE(Native Instruments)の中にあるものも使用します。

コンプレッサーはほぼどのトラックにも掛けています。
ただ、ここでは音圧を上げる、という目的ではなく、そのパートのどの部分を引き出すか(持ち上げたいか)によって色々変わってきます。
音がデカくなるだけならフェーダーを上げればいいわけですから、根本的にここでは音量とは切り離したほうがいいと思います。

EQや他のエフェクトも同じですが、ミキシングの難しいところは、各パートをソロ(個別)で聴いたときにとてもよい音であっても、他のパートと合わせたときにそうではなくなってしまうところです。(特にベースは難しいですね)
各音とのバランスを取りながら、微調整します。

私はまずドラムの音量を基準に他を合わせていきます。
ドラムが埋もれてしまうミックスはあまり好きではないからです。
大きくなりすぎず、しかししっかりスネアやバスの個性が死なないよう気を付けます。

空間系(リバーブ、ディレイ等)

リバーブはボーカルと、必要に応じてギターに掛けます。
演出が必要なパートにはディレイを使用します。
DAWのCubaseに元から入っているエフェクトも空間系は結構使用します。
もちろん、おなじみのT-RackS 5(IK Multimedia)からも使います。
変わり種としては、ADAPTIVERB(Zynaptiq)

も使うことがあります。

その他

ボーカルトラックには一番目にこれを掛けています。
Nectar Elements(iZotope)

AIを使用して、何となくいい感じにまとめてくれます。
その後にコンプとEQで調整します。

マスタリング

ミックスが完成した後、一度マスターデータを書き出します。
この段階では音割れしない程度にマスターフェーダーを上げます。

そのデータにマスタリングエフェクトを掛けて最終ミックスダウンをします。(DAWのプロジェクトは随時作っています)
マスターデータを書き出す際にコンプやリミッターを掛ける人もいるでしょうが、私はしません。
昨今の音圧アゲアゲ傾向は、音をつぶしているだけなので自分としては出来ませんね…
YouTubeも昔は色々な大きさの音があって、突然大きな音が出てびっくりしたことがありましたが、統一されてきたようです。
というか、再エンコードされてしまうので、元の音とは結構違ってしまうことがよくあります。
これは仕方がないですね。
ニコニコ動画ではそれはあまり感じません。

マスタリングに使用しているのは

Lurssen Mastering Console(IK Multimedia)

です。
これはとても操作が簡単で、優秀だと思います。
基本プリセットを選んで、どのくらいインプットを上げるか、という調整です。
たまにEQいじりますが、ほぼしません。

以上が私のミキシング環境と手順になります。

最後に

エフェクトの扱いに慣れるまでは結構な時間を要しますが、その時間はとても楽しいものです。
すぐに一日が終わってしまいます。
数をこなすことよりも、一曲じっくり向き合って、理想の音に近づけることが肝要かと思います。
私もまだまだ知らないことが多いので、都度試して学んでいます。

また、モニター環境についてお話していませんでしたが、
ヘッドフォンはSONYのMDR-7506、

モニタースピーカーはIK MultimediaのiLoud Micro Monitorです。

始めはヘッドフォンで音を作りこんでいき、そのあとはほぼスピーカーでバランスを整えます。
ヘッドフォンだと耳が慣れて全部いい音に聴こえてしまいますので。
エフェクトのかかり具合、特にリバーブはヘッドフォンとスピーカーを交互に聴いたりしてバランスを整えます。
掛かりすぎは一番怖いですが、掛かっているのが分からなくても良くないのでとても難しいです。
また、DAWを立ち上げる前に、自分が目指すミックスの音をなじませるために、理想の曲を流すことも必要です。
指標となる曲(音)ですね。

ちなみに、今回発表した曲はToolの『Fear Inoculum』というアルバムの音を意識しました。

曲が一端仕上がったらウォークマンなどに入れ、通勤時間に聴きまくります。
そうすると色々と粗があるのに気づいたり、もっとこうしたい、と課題が出てきます。
それはエフェクトだけでなく、録音したものもそうです。
その繰り返しで、納得いくまで作り直します。

なので、マスターが出来上がってから一か月くらい余裕があると完成度はかなり上がると思います。
すぐに公開したい気持ちは分かりますが、音楽も推敲する時間を作るといいかなと思います。
締切のないアマチュアだからこそ許された時間かもしれません。

そんなこんなで完成した曲が、イントロの10秒程度で判断されて聴かれない、という非情な世界でもあります笑
だからこそ、自分自身がどれだけ満足できる作品に出来るかが、楽しく音楽を創造することに繋がると思っています。
自分に甘くなってはその残酷な現実(再生数)に意気消沈してしまいます。
もっとやれることがあったかもしれない、と思わないためにも楽器演奏レベルの向上を含めて日々精進です。
もちろん、上には上があるので、今の自分にとって出来ることをする、ということです。
そうしないと作品がいつまでたっても完成しませんからね……

ということで、参考になったか分かりませんが、私はこんな感じで創作をしております。
よろしければ曲をお聴きいただければ嬉しく思います。