初恋 〜二番線の風〜
その日曜日の朝の空気は、吸い込むたびに初夏のようでいてまだ春のような、どちらつかずの思いを想起させた。季節の名前は二十四もあるのは少し多いかなと思うけど、四つではいかにも少なすぎる。そんな名付けがたい日が多いのもこの月の有り様で、十二歳のぼくは五月とはこういう月だと記憶した。母親が朝食を片付けながらカセットテープで聴いているツィゴイネルワイゼンは、狭くて昔ながらの決して明るくはない居間の雰囲気と一対で心の中に刻まれていて、この曲を聴けば少年時代の日曜の朝に戻る。音楽もまた時を