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接点

中三のとき少し気になっていた背の高い陸上部の女の子のこと。高校に入って少し経った頃、街で見かけた。ピンクの原チャリに半ヘルをあみだにかぶって、仲間と甲高いエンジン音を響かせながら駅に向かう道を疾走していた。昔よりも伸びた髪が風になびいていた。中学校では見たことのないような笑顔だった。


中三の一年間だけ同じクラスだった。言葉を交わしたのも一回か二回あるかないか。ぼくたちのグラフはほんの一瞬の接点のあと、また果てしなく遠ざかっていき、もう二度と交わることはなかった。過ごした学年の数だけクラスメイトは存在するけど、みんなそんなものだ。一生の単位で見れば、触れるか触れないかのほんのわずかな点の交わり。たまたま見かけたことで、思いがけず忘れ得ぬ人になったけど。


クラスで見せていた姿勢がよくて凜とした姿と、駅前をバイクで走り抜ける弾けるような笑顔。いまでも鮮やかに思い出せる。





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