見出し画像

【随筆】心理療法と侵襲性

 ぼんやりと職業をカミングアウトしたばかりだけど、実はある程度当事者性も持っている。尤も、そういう支援者は多いのではないかと思うけれど。

 そういう要素のせいか、トラウマティックヨガとか、ポリヴェーガル理論とか、そういうのを勉強していると、ふと心がざわつくことがある。共通するのが、身体へのアプローチについて触れられている場面だ。別に直接身体に触れられているわけではないのに、身体にアプローチするという理論を聞いただけで、交感神経や背側迷走神経が働き始める。怒りとも恨みともつかない感情に振り回される。

 僕自身は幼少期にはっきりとしたトラウマ体験があるわけではない。けれど、幼少期から僕は、自分の身体を意識するのが、ものすごく嫌だった。今でもあまり得意ではない。性別違和とも違うと思う(尤も、何故か文章を書く時は男性が使う一人称を使う傾向があるけど)。あまり身体が思い通りになったためしがないという事も影響しているのかもしれないし、単に自分自身が好きではないだけなのかもしれない。

 おそらく、PTSDを有す人も、フィジカルな療法には同じような嫌悪感を持つのではないかと思っていたら、案の定そういう事もあるとのこと。

 僕のはそういう人たちの抵抗感とは違うかもしれないけど、身体というのは、案外根深く「自己」に繋がっていて、意外と厄介なものなのかもしれないと実感した。


 ポリヴェーガル理論を勉強する前から、僕はメンタルが健康になる兆しを「身体と仲良くなる」と表現してきた。確かにヨガなどのフィジカルに影響を与える活動は、「身体との和解」を促し、それに伴ってメンタルの健康度を上げる。

 同時に、「身体に感謝する」という事が想像以上に困難だとも感じている。自分を好きになれないというだけで、自然と身体も大事にできなくなるものなのだ。


 せめて、今の一瞬、今日の一日、部分的にでも、身体を労ったり感謝したりすることができれば、何かが変わってくるのかもしれない。現代日本では、たかが身体。CMでは風邪を引いたら市販薬を呑んで仕事をするのが当たり前と云われている文化圏の中で生きてはいるが、僕はもう少し、自分の身体と仲良くする方法を模索してみようと思う。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?