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シンプルだけれど、豊かさの最高の表現:"春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷しかりけり"

私は世界の様々な文化芸術に興味があり、思想や宗教の本も読んだりしますが、禅の教えはしっくりくるものがあって(芸術面でも素晴らしい)、色々と学んでいます。

禅に興味を持った理由は、一冊の本との出会いです。「道元「禅」の言葉 境野勝悟 著」という本。

本屋さんで特集コーナーがあったんでしょうか。何かのご縁でこの本を手に取ってみたのですが、とても分かりやすく身近に思えたので、購入しました。

4章にまとまっていて、全部で100話あります。

第1章
「本当に大事なもの」に気づく30話
ー少し見方を変えるだけで

第2章
「悩み」から自由になる30話
ー”捨てた”分だけ楽になれる

第3章
自分の中から自信が生まれる20話
ーゆっくり、じっくり、自分のペースで

第4章
「生き方」を考える20話
ー迷いや悩みがすっと消える


それぞれ、右ページに道元さんの言葉、左ページに解説という構成で、1見開きに1話なので、どこから読んでもいいし、続けて読まなくてもいいので気楽に読めます。

例えば第33話

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(右ページ)
タイトル「相手の意見に耳を傾ける」
知発(ちほつ)にあらず菩提心発(ぼだいしんほつ)なり 
<身心学道>

(左ページ)
見出し:自信を持つことと、自分の考えに固執することは別物
解説:12行くらい

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こんな感じです。
道元さんのそのままの言葉だと何のことやら全く分かりませんが、著者の境野さんがとても分かりやすく、優しい文章で書いてくださっています。

いつ読んでも心に響くお話ばかりなのですが、100話目は特に好きなものです。

第100話
「周りの全てのものに感謝する」 
春は花 夏ほととぎす 秋は月 冬雪さえて 冷(すず)しかりけり
<傘松道詠(さんしょうどうえい>

四季は、宇宙がくれた最高の贈り物

有名な歌なのでどこかで聞いたことはあると思いますが、いつ見ても、何度読んでも、美しい。その情景がすぐに思い浮かび、あっという間にこの歌の世界に惹き込まれます。

当たり前すぎて、その素晴らしさをすぐに忘れてしまうけれど、よく見ると豊かさはすぐ近くにありました。そんな感じで、真理を実にシンプルに分かりやすく表現しているなぁ、と感動します。


素敵だなぁと思って、この歌についてちょっと調べていたら(すぐ調べたくなる 笑)、なんと1968年に川端康成がノーベル文学賞を受賞したときの記念講演は、道元さんの「春は花 夏ほととぎす...」の引用から始まったそうです!

続いて、明恵さんのこの歌を読み上げ、講演は続きます。

隈くまもなく 澄める心の 輝けば
我が光りとや 月思ふらむ


それから、記念講演のタイトルは「美しい日本の私」。紋つき袴の正装で授賞式に参加してこの講演を行った川端さん、最高にかっこいい!

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ちなみにノーベル賞のウェブサイトで、この時の講演の音声を聞くことができます!1968年の音声が残っているのがすごい。
※全文は本にもなっているので、最後にご紹介しますね

Nobel Lecture by Yasunari Kawabata - short excerpt in Japanese (3 minutes) 
Yasunari Kawabata delivered his Nobel Lecture on 12 December 1968.
※サイトは英語ですが、スピーチは日本語


さて今日は日曜日。のんびりと身近な豊かさを味わってみたいなぁ、と思います。興味がある方は、道元さん、川端さんの本をどうぞ。



川端さんのスピーチの全文です。


道元さんが開いた永平寺。私も一度行ったことがあるのですが、荘厳な雰囲気の中に、どこか暖かさも感じる心落ち着く場所でした。

大本山永平寺ウェブサイト
(2018年までウェブサイトがなかったんですよ!)

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