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クロード・モネの<睡蓮> 上野の森美術館 と 世界文化遺産の国立西洋美術館で…

上野の森美術館 「モネ 連作の情景」展

 フランスの印象派画家 クロード・モネ の展覧会が上野の森美術館で開催されると聞いてやってきました。上野公園の中にあり、上野駅からも近い場所にある美術館です。

 上野の森美術館では、開催中展覧会の大きなポスターがこの壁に掲げられます。現在は「モネ 連作の情景」展が開かれていることがわかります。向かって右側が入り口で特設テントにチケット売り場があります。チケットは日時指定の予約販売ですが、入場枠に余裕があればここで購入できます。この日は並ばずにすぐ入ることができました。


 会場に入ってすぐに体験コーナーがあります。壁に映っているのが クロード・モネ が自邸に作った「睡蓮の池」で、実際に撮影した映像ということです。床にはソニーが開発した装置があり、睡蓮の葉を模したデザインが映されています。その上を歩くと床が振動し、あわせて、水面に波紋が広がるように見せる仕掛けになっていました。
 撮影したという モネの家 はセーヌ川をパリから下った川沿いの ジヴェルニー という小さい村にあります。この展覧会でも後半に モネ が ジヴェルニー の風景を描いた作品が取り上げられています。


「100%モネ」
 展覧会のパンフレットに書かれている言葉です。展示されているすべてが クロード・モネ の作品でした。展示は5部構成です。

 1章 印象派以前のモネ
 2章 印象派の画家、モネ
 3章 テーマへの集中
     (3章の途中で2階に上ります)
 4章 連作の画家、モネ
 5章「睡蓮」とジヴェルニーの庭

 写真撮影は入り口近くの展覧会あいさつ文のところまでだったのですが、進んでいくと2階の4章エリア途中から再び写真撮影できるようになっていました。
 そして、そこには<国会議事堂、バラ色のシンフォニー>や<チャリング・クロス橋>、それに3つの<ウォータールー橋>が展示されていました。モネが印象派として取り上げられる際に紹介されることの多い作品たちです。
 5章のエリアへ進むと、ジヴェルニーでの風景や<睡蓮>、<睡蓮の池>などがありました。ここも一部を除いて写真を撮ってもいいということで、混雑していましたが人と人との間隔が広がったタイミングに撮影してみました。

クロード・モネ<睡蓮> 1897-98年頃、ロサンゼルス・カウンティ美術館所蔵

 それがこの<睡蓮>です。横にあった説明には、「モネが最初期に描いた<睡蓮>」で、後に描かれるようになった「空や樹木の水面への映り込みや、光と水が戯れるような表現はまだ見られず…」と書かれていました。いくつかの睡蓮だけに焦点を絞った作品であることがわかります。


 モネの作品を一通り鑑賞し外に出てみると行列ができていました。展覧会に入るための列ではなく、ミュージアムショップの行列でした。美術館の前から、さらに公園側にも伸びていて、この時点で最後尾から30分から40分はかかるだろうとのこと。グッズを購入できるのは展覧会を見た当日だけということでこの行列に並びたかったのですが、この日は時間がなく残念ながらパスすることに…。会期は来年2024年1月28日まであり、それまでにもう一回くらいは見に来ることができるかもしれません。関連グッズはその時のお楽しみにします(無くなってしまうグッズもあるかもしれませんが、しょうがない)。私は展覧会の図録がお目当ての一つでした。展覧会の公式ウェブサイトをチェックしたところ蔦屋書店の代官山店と銀座店でも扱っているのがわかり、そちらで買い求めました。

「モネ 連作の情景」展は東京の後、来年2024年2月10日から5月6日にかけて大阪中之島美術館でも開催されます。名前のとおり中之島 中心部近くの、国立国際美術館に隣接する比較的新しい美術館です。その大阪会場では東京会場の展示作品を一部変更するということです。
 図録の資料によると大阪会場では別の<睡蓮>2点が加わり、<テムズ川のチャリング・クロス橋>も追加されるようです。この時期に大阪に行く機会があれば、寄ってみたいと思います。


国立西洋美術館 常設展

 上野公園に来ると、余裕があればもう一か所寄ってみたいところがあります。JR上野駅公園口に近い 国立西洋美術館 です。この時期は企画展として「パリ ポンピドゥーセンター キュビズム展 ー 美の革命」が開催されていましたが、私は常設展へ向かいます。

 1階の常設展入り口は「19世紀ホール」と呼ばれる吹き抜けになっているエリアです。オーギュスト・ロダン のいくつかの彫刻が置かれ、奥には当初の国立西洋美術館全体を設計したフランスの建築家 ル・コルビュジエ に関する資料も展示されていました。
 その横のスロープを上って2階の展示会場で最初の部屋に入ると順路の案内は右方向を示しています。ですが、私は左方向の新館を目指しました。別の吹き抜けの回廊を通り抜け、さらに次の部屋も通り過ぎて左へ曲がった先の部屋へ進みます。すると…


クロード・モネ <睡蓮> 1916年、松方コレクション(国立西洋美術館所蔵)

 入ってまっすぐ前、向かい側の壁に クロード・モネ の<睡蓮>がありました。上野の森美術館の睡蓮は1897-98年頃の作品でしたが、この睡蓮は1916年で20年弱の時間差があります。上野の森美術館の睡蓮にはなかった「空や樹木の水面への映り込み」がこちらの作品には描かれています。
 この部屋には<陽を浴びるポプラ並木>、<セーヌ河の朝>、<舟遊び>などのモネの作品が多く掲げられています。また、上野の森美術館では3点が比較するように展示されていた<ウォータールー橋>の絵画も1点ありました。
 他にも エドゥアール・マネ の<花の中の子供(ジャック・オシュデ)>や ピエール=オーギュスト・ルノワール の<木かげ>などの作品もあります。


 写真は別の日、10月初めに国立西洋美術館へやってきたときに撮ったものです。美術館の中にある CAFÉ すいれん です。中庭を眺められるいい場所にあり、この時は窓側の席に案内してもらいました。草木の向こう側に見えるのが 前川國男 が設計した新館の建物です。カフェの名前にもなっている先ほど紹介した モネ の<睡蓮> は、新館2階の展示室にあります。目の前の建物の2階部分、真ん中より少し左側にあるのだろうと考えなら中庭を観ていました。メニューには載っていなかったのですが、店員さんが期間限定の抹茶ティラミスを勧めてくれましたのでそれを注文し、さらに抹茶ラテもお願いしました。


オーギュスト・ロダン <考える人(拡大作)>
1881-82年(原型)、1902-03年(拡大)、1926年(鋳造)
松方コレクション(国立西洋美術館所蔵)

 国立西洋美術館では ロダン の彫刻を数多く所蔵しています。その中でも有名な <考える人> は美術館の前にある広場にも飾られています。目の前の通りは、上野駅の公園口からまっすぐの道で、その先(写真では右側)には上野動物園があります。美術館の広場は開放的で、動物園や他の美術館、博物館に向かう人たちにも見てもらえます。

 ここは2020年から2022年にかけてリニューアルされ、開放的な空間に変わった場所です。国立西洋美術館は、美術館の前の広場(前庭)を含む敷地全体が 世界文化遺産 です。建築家 ル・コルビュジエ が設計した7か国、17の建物が2016年に世界文化遺産として登録され、その中に国立西洋美術館が含まれていました。しかし、世界遺産委員会は国立西洋美術館を登録すると決定したものの、あわせて ル・コルビュジエ による当初の前庭の設計意図が一部失われているとも指摘しました。1959年の開館以降、改修を重ね、前庭が変わってしまっていたようです。それをできるだけ開館当時の姿に戻そうというのがリニューアル工事でした。

 具体的には、広場の公園道路側には草木が植えられていたのを取り除き、このロダンの<考える人>を植栽が無くなった元の位置に戻しました。他の彫刻も当初の場所に移したということです。また、周りの柵は向こう側が見えるようなものに置き換え、リニューアル直前には閉められていた西側の柵の一部を開けて、開館当初のように人が通れるようにしたということです。その結果、いまのような開放的な空間に戻りました。

世界遺産一覧表 記載認定書(複製)
国立西洋美術館 19世紀ホール


美術館へのアクセス


 上野の森美術館、国立西洋美術館は上野公園の中でも上野駅寄りにあります。公園口の改札を出ると斜め右側が国立西洋美術館です。
 公園口の斜め左側がコンサート会場として使われる東京文化会館。上野の森美術館 へは東京文化会館の手前を左に進むように案内があるのですが、裏側から通る細い道で、初めてそのルートを歩いた時は美術館にたどりつけるか不安になりました。ですので、それ以降は遠回りですが東京文化会館の先で左に曲がるルートをたどることにしています。東京文化会館と運動場の間を抜けた先が開けており、最初に紹介した 上野の森美術館 の壁にかけられたポスターがわかります。

 東京メトロの地下鉄上野駅からだと、JRしのばず(不忍)口の前に出ますので、交差点を公園側に渡りさらに右に進みます。レストランなどのビルの右奥、歩道橋のような階段の手前に屋外のエレベーターがあって屋上(R)まで上るとそこが上野公園です。位置はちょうど 上野の森美術館 の裏側になりますので、こちらが近道かもしれません。エレベーターの左隣が階段になっていますので、混んでいる時はそちらを上るのも方法です。


※補足として 「松方コレクション」について

 国立西洋美術館の作品には所蔵経緯として「松方コレクション」と説明されているものがあります。現在の川崎重工業である川崎造船所の社長だった松方幸次郎は戦前にヨーロッパで収集した作品の一部をパリの美術館に預けていましたが、日本の敗戦とその後のサンフランシスコ平和条約でフランス国有となってしまいます。フランスが日本に寄贈返還するとした時に、日本政府がそれを展示するための美術館として作ったのが国立西洋美術館でした。そして返還された作品を松方コレクションと呼び、その中に クロード・モネ の作品が複数存在していたということです。
 このような経緯もあって、現在は川崎重工業が美術館のスポンサーになっているようです。


(2023年10月24日)

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