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バンクシーからKAWSまで ー 京都市京セラ美術館 MUCA展

 2024年1月、3連休のうちの1日を使って京都市京セラ美術館へやってきました。ドイツ・ミュンヘンの美術館、MUCAの展覧会があり、バンクシーやKAWSカウズなどの作品を直接見ることができるというのです。3月には東京でも開催されることは知っていたのですが、早く見たいとやってきてしまいました。
 

 京都市京セラ美術館の開館は午前10時。朝早く東京を出発し、開館直前に到着しました。すでに行列ができていました。
 

 地下1階が入り口になっていて、同じフロアにチケット売り場やコインロッカーがあります。チケットはオンラインで事前に購入しており会場に直行できるのですが、背負ってきた荷物を預けることにしました。コインロッカーは返却時に100円玉が戻ってくるタイプです。
 中央の階段を1階へ上ります。写真は階段を上っている時に撮ったものです。この時の、先が開けるような感覚が好きで、これからも京都市京セラ美術館にやってくるような気がします。
 

 講堂のような広い空間が中央ホールです。左右に北回廊、南回廊の入り口があり、そこでも展覧会が開かれています。
 MUCA展はまっすぐに進んだ先にある新館の東山キューブで開催されています。
  

 本館を抜けたところの正面が一面ガラスになっていて、日本庭園が目の前に広がります。この時は池の水を抜いてメンテナンスしているところでした。春に向けて準備期間中のようです。
  

 日本庭園に向かって左方向へ進むと東山キューブ会場の入り口になります(※1)。チケットのQRコードを開閉ドアのスキャナーにかざして中に入ります。今回の展覧会は廊下の途中から入場する形になっていました。

(※1)ちなみに、向かって右方向は日本庭園への出口になっています。庭園を散歩するための近道なのですが、いったん出てしまうと、この出口を通って館内に戻ることはできません。その場合は、建物を周り込んで正面まで行って地下1階の出入り口から入り直してください。


いよいよ MUCA展の会場に入ります。

 MUCAは Museum of Urban and Contemporary Arts の略で、略称は「ムカ」と発音するようです。ドイツ・ミュンヘンにある美術館で、今回の展覧会ではバンクシーをはじめとする10人の所蔵作品が日本にやってきました。
 

 さっそく、タイトルのすぐ右側にバンクシー(BANKSY)の作品がありました。《弾痕の胸像(Bullet Hole Bust)》。2006年にバンクシー自身が開催した展覧会「ベアリー・リーガル(Barely Legal、かろうじて合法)」に出展されたものでした。彫刻胸像は古典的な従来のアート、埋め込まれた弾痕はストリート・アートを意味していると解説されています。
 

 右隣の金網の向こうがわには、作品を運搬したであろう木箱などが置かれていました。これ自体が作品なのかはわかりませんが、だれでもみることができるように配置されています(前にもこのような形になっていた気もしますが、記憶があやふやです)。そのあたりの解説があったのかもしれませんが、胸像の他の場所は暗くなっていてわかりませんでした。
  

 この作品から広い部屋に飾られています。ただし、暗くしてある部屋です。かなり近づかなければ解説は読めません。
 でも、タイトルはわかります。
《Love is in the air》
「Flower Thrower(フラワー・スロウワー、花束を投げる男)」とも呼ばれています。
 この作品自体はカンヴァスにスプレーペイントで描かれていて、2002年に制作されました。

 

《Girl With Balloon》
 元々は2002年にロンドン・サウスバンクで描かれているのですが、ここでは2004年に作成したカンヴァスにスプレーペイントした作品が展示されていました。型を抜いた板状のものの上からスプレーする ステンシル技法 はストリートで素早く描くための手法でしたが、この手法をスタジオでも用いるようになった作品ということです。
 

 広い部屋の中央にあるのが《アリエル(Ariel)》。写真で見ると、この作品のどこかに鏡とかガラスとかで、光を屈折させているのではないかと思わされます。目が錯覚に陥り脳が混乱し、焦点を合わせるのが大変な瞬間もあるのですが、実際にはこの写真の通りの作品です。
 バンクシーは2015年に期間限定で、ディズニーランド(Disneyland)のパロディで「子供にはふさわしくないファミリー向けテーマパーク『ディズマランド(Dismaland)』」をプロデュースし、このアリエルは目玉作品として展示されたものだということです。当時の記事を検索すると、お城(シンデレラ城のパロディ?)の前の池に置かれていたようです。
 ただ、ディズマランドは2015年ですが、MUCA展のウェブ上にある作品リストでは2017年となっていました。そこらへんの事情?はちょっとわかりませんでした。
 

《Are You Using That Chair?》
 20世紀に活躍したアメリカの画家、エドワード・ホッパー(Edward Hopper)が1942年に作成した《Nighthawks(ナイトホークス)》に対して、バンクシーがオマージュした(敬意を表した)パロディ作品です。ナイトホークスの2倍以上の大きさにし、ナイトホークスには描かれていないユニオンジャックのボクサーパンツを穿いたイギリス人を登場させています。2005年の作品です。
  

 次の部屋からは照明が明るくなっていました。
 アメリカ・サンフランシスコ出身でパブリックスペースに作品を展開するグラフィティ・アーティストのバリー・マッギー(Barry McGee)の作品が並べられています。展示されていたのは2018年から2021年の作品です。
  

 シェパード・フェアリー(Shepard Fairey)の部屋には有名人の肖像画などのポスターが並べられています。上の段、《ボブ・マーリー(2004年)》と《ジミ・ヘンドリックス(2004年)》に守られているのは《Peace Goddess(平和の女神、2009年)》で、フェアリーがよくモチーフにしているフランス人プロレスラー、アンドレ・ザ・ジャイアントと、女神に内在している平和への概念を重ね合わせていると解説されていました。
 Peace Goddess の下が《Big Brother Is Watching You(2019年)》。この6つの作品の右側には《Obey with Caution(注意して従え、2006年)》もあります。フェアリーは監視社会を風刺しており、その一部がここで展示されていました。
  

 覆面アーティストのインベーダー(INVADER)による《Rubik Arrested Sid Vicious(ルービックに捕まったシド・ヴィシャス)》
 この作品は少し厚みがあります。真横から見るとこの作品がカンヴァスではなくルービック・キューブであることがわかります。
 そして、シド・ヴィシャスは1970年代後半にイギリスで活躍したパンク・ロック・バンド、セックス・ピストルズのベーシストで早くに亡くなっています。
 シド・ヴィシャスの肖像をルービック・キューブで表現した作品で、携帯電話を通してみると、よりわかりやすいと解説されています。ですが、今のスマホのカメラは解像度が高くなっています。見た通りにしか撮れていないのでは、と茶々を入れたくなります。遠くから目を細めて見るのが良いのかもしれません。2007年の作品です。
 

 最後のコーナーにはアメリカ・ニュージャージー出身のグラフィティ・アーティスト、KAWSカウズの作品がありました。私は「コンパニオン」という、目がX印のキャラクターを題材にした作品が好きですが、この作品は「チャム」というキャラクターの《Running Chum(走る友だち)》でした。不思議なかわいらしさが描かれています。
 この近くには、コンパニオンの《4ft Companion (Dissected Brown) 》という背の高い子供ぐらいの身長のキャラクター作品も立っています。学校の理科室にあった人体模型を思い出しました。
 

《KAWS BRONZE EDITIONS #1-#12》
 2010年から世界各地で開催したパブリック・インスタレーションに登場したキャラクターを小型化したものということです。
  

 会期終了間際だったこともあるのでしょうか、会場出口にある展覧会ショップにはトートバックとTシャツしか残っておらず、残念ながら図録は完売していました。図録は東京での開催までには増刷するということです。
 
  

 

京都市京セラ美術館に来ると、行ってみたい場所があります。

 美術館の中央ホールは2階に上ることもできます。左側に見える螺旋らせん階段を上ってもよいですし、右側にあるエレベーターを使ってもよいと思います。
 

 行ってみたいところとは、新館の2階にある東山キューブ・テラスです。さきほどのMUCA展会場の上に位置します。周りに高い建物は見当たらず開放的な空間にです。
 南方向の山寄りにはウェスティン都ホテル京都が見えますし、美術館の隣は動物園で動物たちの鳴き声が聞こえてくることもあります。
 

 そして、手すりから下方向には1階では目の前に広がっていた日本庭園の全体像を眺めることもできます。
 この日のように天気がよければ壁側の階段に座って日向ぼっこでもしたいところですが、もう時間はありません。弾丸旅行のような行程にもかかわらず、MUCA展で時間を使いすぎてしまいました。次のスケジュールが迫っており、庭園を見てすぐに美術館を後にしました。
 

アクセスは「京都、大阪への日帰り旅行」を参考にしてください。




 MUCA展は3月には東京でも開催されます。会場は現在、キースへリング展が開催されている 六本木ヒルズ の 森アーツセンターギャラリー です。特徴的な形の会場ですので、京都で見た作品がどのように展示されるか、特に 京都市京セラ美術館 では広いスペースを使っていたバンクシー作品の展示形態がどうなるのかが楽しみです。

 


参考

 図録が完売していることは、展覧会のウェブサイトで事前にわかっていましたので、音声ガイドを参考にしました。
 MUCA展では、The Chain Museum(※2) が運営するアプリ「ArtSticker」で音声ガイドを発信していました。私は iPhone のカメラと音声ガイドアプリ を切り替えながら作品を観ていましたので、ちょっと大変でした。
 音声ガイドは日本語版と英語版があり、日本語版は『ドラえもん』でジャイアン役の声優、木村昴さんが担当しています。

 でも、この音声ガイド。私は iPhone だったので Apple を通じて決済され、MUCA展の音声ガイドページには購入後80日間利用できるとなっているのに、京都での展覧会が1月8日で終わってしまったのにあわせたのか、現在はサンプル版しかアクセスできなくなっています。
 購入時の注意書きにこの点も書き込まれてはいるのですが、東京展でも同じ仕組みで音声ガイドが提供されるかもしれませんので、利用する場合はこの点を気を付けておいたほうがいいと思います。MUCA側との間で制約が設けられているのかもしれませんが、やっぱり要注意だと思います。木村昴さんの声がすばらしいので、また利用したいという気持ちはあるのですが…

(※2)The Chain Museum は、美術館ではなく日常のふとした場所に「小さくてユニークなミュージアム」を展開することをコンセプトとした会社です。私は 渋谷 MIYASHITA PARK にあるホテル sequence MIYASHITA PARK やJR横浜駅に隣接する NEWoMan横浜で The Chain Museum の作品を見たことがあります。特に NEWoMan横浜 では1、2階ラグジュアリーショップ向かい側の壁に作品を一定期間で置き換えていましたので、横浜へ行くたびに作品を見るのが楽しみでした。


(2024年1月10日。京都市京セラ美術館へは1月7日に行ってみました)

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