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ポストパンデミック世界でのフレグランスのチャンスとは? [BoF 2021年7月28日]

BoF (The Business of Fashion)の記事を翻訳しています。

ファッションという視点から見るフレグランスは、また新しい発見があり、思い切ってProfessional会員(年会費294USD)になりました。

知りたいと思っていた情報が多く掲載されていて、今回翻訳したこちらもその一つです。

ポストパンデミックということがフレグランスの世界でも話題になっていて、この記事は、

1.  シトラス以外のジェンダーニュートラルな香りが増える予感
2.  サステナブルは簡単ではないけど、クリーンビューティブームなので必須
3.  オンラインやテクノロジーを駆使しながらもやっぱりリアルも大事

というお話です。

特に、1の「シトラス以外のジェンダーニュートラル」な香りという点に強く共感。

もともと、インドでは男性もミスディオールやシャネルの5番、濃厚なフローラル系の香水を使う人がいると聞いて、「なんて自由なんだ!」と感動したことがきっかけでした。

女性がメンズ香水をつけるのは「クール!」という印象も持たれますが、反対の場合は「・・・」、なかなか理解されないこともあるかと思います。

でも、女性とか男性とかフローラルとかウッディとか考えずに、好きな香りを選んでほしいと思い、私が行っているオーダーメードプランではまずはブラインドで香りのサンプルを試していただき、好きな香りを選んでもらっています。

そうすると、かわいらしいお花の香りを選ぶ男性の方が結構います!それはとてもうれしいことです。


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[BoF Professional 会員限定記事]
BY CHAVIE LIEBER
2021年7月28日 12:30



ポストパンデミック世界でのフレグランスのチャンスとは

昨年から好調な売り上げを記録し続け、フレグランス業界はポストパンデミックの時代に目を向けている。ポストパンデミック世界では、製品の発見やマーケティングにおける変化が業界の未来を左右するだろう。


2020年、フレグランスはパンデミックのスターとして浮上した。消費者が厳しい現実から逃げるために、香水やコロン、キャンドルなどを利用したためだ。1年経った今も、この勢いは衰えていない。

2020年を通して他の美容分野が苦戦する中、8月にはフレグランスの売上が前年比で増加した。NPDグループのデータによると、2021年第1四半期のフレグランスの売上高は9億5,400万ドルに達した。2020年第1四半期からは82%、パンデミック前の2019年からは35%増加している。

「昨年のフレグランスの売り上げ増加は、人々がいつもと違う時間を過ごしたいと思っていることが要因であったが、今年は新鮮で新しいことを始めたいと思っているようだ。」とNPD社の副社長兼美容業界アドバイザーのラリッサ・ジェンセン氏は述べている。

勢いが衰えない中、ブランド各社はフレグランス分野への投資に意欲的だ。ウルタビューティーは、2020年に70種類以上の新しいフレグランスを発売したが、今年はさらに多くの発売を予定している。美容業界大手のコティは今年いくつかのフレグランスを発売しているが、同社の第3四半期の業績報告によると、マークジェイコブス、バーバリー、グッチの高級フレグランスが群を抜いている。

小規模な企業にもチャンスはある。創業5年目のキャンドル会社、ボーイスメルズは、今年初めてフレグランスを発売した。また、フレグランスのサブスクサービスを展開するスタートアップ企業のセントバードは、自社のフレグランスブランドである「サンクチュアリ」と「コンフェションズオブアレベル」で新しい香りを発表した。

しかし、フレグランスの売り上げが急増したとしても、業界は常に変化し続けている。魅力や異性に関するメッセージは、ほとんどの場合、セルフケアに焦点を当ててマイナーチェンジされた。消費者は、サステナビリティやジェンダー規範を重視する企業を求めるようになっている。また、新しい香りを購入する際には、店舗とオンラインの両方が重要なチャネルとなっており、フレグランス企業はマーケティングにおけるディスカバリー(発見)の位置づけを再考する必要がある。


香りの新しいマーケティング


業界内では、フレグランスのマーケティングは、セクシュアル重視で厳格なジェンダーのメッセージから離れてきている。

他のファッションやビューティの世界でも、ジェンダーにとらわれない香り に挑戦するブランドが増えてきている。この動きは、ジェンダーの流動性に慣れているZ世代の顧客にとって特に重要だ。広告代理店のビッグアイの調査によると、Z世代の50%は、性別で区別することは時代遅れだと考えている。

フレグランスの世界では、1994年にカルバンクライン社が初のユニセックス香水「シーケーワン」を発売し、ベストセラーとなったことがきっかけで、ジェンダーニュートラルの動きが始まった。「シーケーワン」をはじめとするジェンダーニュートラルな香りは、一般的には柑橘系の香りが多いが、一部のフレグランス企業は、ローズなどのステレオタイプな女性的な香りを取り入れ、すべての人に向けてその香りを売り出している。例えば、ボーイスメルズ社が新たに発表したフレグランスは、ジェンダーニュートラルであるが、共同創業者のマシュー・ハーマン氏によると、ローズやムスクなど、伝統的にどちらかの性別を連想させる香りを意図的に使用し、それらをミックスすることも多いという。

「伝統的に男性的な香りと女性的な香りを混ぜ合わせ、男性は木やムスクの香り、女性は花の香りという時代遅れのジェンダー概念を捨て去りたい 」とハーマン氏は語った。

すべての人をターゲットとした香りをつくることで、ブランドの可能性が広がる。これは、大手に対抗する小さなブランドにとって重要な戦略だ。

今月発売された新しいフレグランスのスタートアップ、リーズの共同設立者であるアリッサ・サリバン氏は、「女性向けのフレグランスだと言うと、自分を型にはめてしまうことになるが、何も言わなければ、誰にでも評価してもらえる」と語っている。

それでも、「非常に伝統的な」フレグランス業界では、多くの消費者が性別を意識した香りを好むと前述のジェンセン氏は言う。しかし、進化するチャンスはまだある。ウルタビューティ社のマーチャンダイジング担当副社長であるペニー・コイ氏によると、今年オープンするウルタの新店舗では、既存の店舗が行っているような性別ごとではなく、ブランド別に分類して陳列するという。

「お客様には、どちらを買っても全く構わないということを伝えたい」とコイ氏は語る。

フレグランスの広告のトーンも変化してきている。歴史的に性的なイメージを持たれてきた香水やコロンは、ジェンダーのステレオタイプや女性を物扱いしたマーケティングに頼ってきた。それに代わり、ブランド各社は消費者が自分のために購入すべきものとして、フレグランスを位置付けている。これはパンデミック時には特に効果的なメッセージとなり得る。

「フレグランスのキャンペーンは、ドルチェ&ガッバーナの最新のフレグランスをつければ、アマルフィ海岸の岩の上でセックスができるというように、セックスや人を惹きつけるということがテーマだった。しかし、今の消費者はもっと感情的になっている。フレグランスはもっと成長し、(マーケティングにおいて)自分自身を省みるべきだ」とハーマン氏は述べている。


サステナビリティへの取り組み

また、アップサイクルされた原料の使用を増やすなど、サステナビリティを考慮したフレグランスの販売や製造も行われている。

世界最大級の香料メーカーであるジボダン社の北米ファインフレグランス部門責任者エミリー・ボンド氏は、アップサイクルフレグランスについて、「地球の資源を有効活用し、環境への負荷を軽減するための重要な手段である」と語る。ジボダン社は、The Nue Co.の「Forest Lungs」やSt.Roseの「Vigilante」などにアップサイクル原料を使用しており、クリーンビューティーブームが続く中、アップサイクルフレグランスに対する消費者の関心は高まる一方だと予想している。

しかし、アップサイクルにはハードルがある。ハーマン氏によると、アップサイクル原料は高価であり、多くのフレグランス会社はもっと手が届きやすい価格になるのを待っているという。また、消費者が美容に「新しさ」を期待することもあり、アップサイクル原料のマーケティングも難しい、とフレグランス会社エリスブルックリンの創設者であるビー・シャピロは語る。同社は、アップサイクル原料を「Salt」と9月に発売予定のフレグランスに使用している。

「アップサイクルの話をすると、『これはゴミを使っているのか?』とコメントされることがある。美的な物語は、少し違った形で語られる必要がある」とシャピロ氏は話す。


消費者が自ら発見するマーケティング

2020年には店舗が閉鎖され、多くの消費者がオンラインで香水を購入するようになった。店舗が再開されても、ブランドはオンラインチャネルを維持する方法に取り組んでおり、購入可能なサンプルを顧客獲得戦略の要と考えている。

「新しい香りを発見することは、(オンラインでは)非常に珍しいことだ。オンラインでの販売を行う場合には、誰もがクリエイティブになる必要がある。」とジェンセン氏はいう。

ボーイスメルズとリーズは、サンプルセットの発売からブランドをスタートした。ハーマン氏によると、ボーイスメルズはサンプルセットでは利益を得られないが(4つの香りを16ドルで販売)、マーケティング的な価値があるため、コストをかける意味があるという。

「顧客に直接リーチして、製品の全ラインナップを体験してもらうには最適な方法だ」と彼は話す。

デジタルを視野に入れていても、フレグランスはブランドの大小に関わらずまだ小売に比重を置いている。ボーイスメルズは3月にNordstromへの出品を開始し、リーズはバージニア州フェアファックスのArielle Shoshana、フィラデルフィアのRennes、テキサス州オースティンのSunroom Boutiqueなどのコンセプトストアで販売される予定だ。今月初めに、コティは買い物客が香りを嗅ぐことができる非接触型のフレグランスデバイスを発表したが、このデバイスはまもなく美容系小売店での展開を予定している。

コティ社のサステナビリティ・テック・イノベーション担当上級副社長のティエリー・モリエールは、「新しい常識とは何かを考えていたところ、衛生と安全性を重視した、タッチレスのコネクテッドデバイスというアイデアがすぐに浮かんだ」と語る。さらに彼はこのデバイスについて、「買い物客に1滴ずつ拡散することができる。香りは十分に強いが、強すぎることはない。空間を香りで圧倒することがないので、店内での買い物環境を改善する意味もある」と加えた。

買い物の実体験への投資を継続することが、フレグランスの未来にとって極めて重要であるとモリエール氏は話す。

「eコマースは重要な役割を果たしているが、香水は嗅覚を体感するものであり、物理的な販売拠点は重要であり不可欠だ」とモリエール氏はいう。

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原文はこちら

画像:The Business of Fashion

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