【県人寮レポートを読み解く】記者発表の模様を特別公開!
みなさんこんにちは!#YourChoiceProject編集部です。
#YourChoiceProjectは2024年7月9日に、「県人寮への女子学生受け入れに関する実態調査レポート【2024年度調査結果】」(以下、県人寮レポート)を発表しました。
県人寮とは、特定の道府県出身の学生のみを受け入れる寮のことで、首都圏に県人寮を設置する35自治体のうち、およそ半数が男子学生専用の寮しか設置していない、言い換えると52県人寮のおよそ7割近くが男子専用寮であるという現状があります。本調査では、首都圏に設置されている県人寮のうち男子学生のみを受け入れている24舎を対象に聞き取りを行い、県人寮において深刻な男女格差が見られる現状を明らかにしました。県人寮レポートにつきましては、以下のリンクからぜひご確認ください。
:https://note.com/yourchoice_ycp/n/n5f9a099894d6
今回の記事では、県人寮レポートの記者発表の模様から、ゲストとしてお呼びした奈良県議会議員山田洋平氏との対談を公開します。奈良県のジェンダー意識とその解決方法、県人寮問題の進展などについてお聞きしました。また別で章立てをし、発表後の質疑応答から、#YCP編集部が県人寮レポートを読む上で参考になると考えたものをピックアップして取り上げたいと思います。
記者発表_特別対談パート
<ゲストプロフィール>
山田洋平
奈良県議会議員:日本維新の会
公認会計士、税理士
2023年初めて県議会議員に当選。2024年3月、奈良県議会において県人寮「養徳学舎」への女子学生の受け入れ可能性について質問。県知事も前向きに受け止め、現在、議会では受け入れの方策などについて検討中。
—県議会で質問したきっかけ・動機はなんですか?
(山田氏:以下略)昨年初めて県議会議員に当選し、県の事業を調べるうちに、東京に男子学生寮があるのを知って、今どき男子学生のみ?とびっくりしたところがありました。私には息子、娘がいますが、娘には入寮を検討する権利すらないのかと非常に残念に思いました。
奈良県の県人寮である養徳学舎には100年の歴史がありますが、前の建物の老朽化が進んでいて約10年前に建て替えられました。10年前というとジェンダーフリーが話題になり始めていましたが、なぜこのとき男子学生のみを補助しようとしたのかと疑問を感じました。今の時代に合わせて然るべき形にする必要を感じて、議会で取り上げました。
奈良県のジェンダー意識の傾向で言うと、数年前の意識調査「男は仕事、女は家庭」といった性別役割分業に肯定的な意見が半数をこえ、全国最多になっていました。その他の指標で見ると、国勢調査などを見ると、女性の就業率が全国で最下位だとか、女性の家事従事時間が4時間と全国1位になっており(※)、ジェンダーギャップの解消は、あまり進んでいないと思っています。
※ 令和2年の国勢調査では、奈良県の女性就業率(20〜64歳)は70.6%で全国最下位となっている。
—実際に質問をしたときの県議会での反応はどのようなものでしたか?また、その後の動きはどのように進んでいますか?
議会がはじまって、3月に議場で初めて質問をしました。事前に知事と話した時も「これはおかしい」とおっしゃっていただき、議場でもご理解をいただき、前向きな検討をすすめていくと答弁いただきました。
議場で質問してから約3ヶ月経ちますが、現状で言うと、どうやって女子学生の受け入れを可能にしていくのか—男女でフロアを分けるのか、セキュリティを強化するのかなど—について様々な観点から前向きに検討中です。
—女子学生の受け入れが検討に挙げられるのは、建て替え時が多いと考えられます。建て替え時の検討だけではなく、入寮の権利のない女子学生には住まい支援の手当てを行う、などの方策についてはどう考えますか?
個人の意見として、確かに、住まい支援のような方法でも公平さが保たれると思います。
—調査をしていく中で、県議会議員の方が県人寮の問題に取り組んでいるということを知って、団体としても非常に励みになりました。こういった動きを全国に広げるためにはどうしたらよいと考えますか?
私としても、学生側からも県人寮の問題に取り組んでいることを知って嬉しく思いました。こうした活動を活発にさせていくための方法としては、2つ挙げられると考えます。
1つは、#YCPさんのような、マスメディアを使ってのアプローチ。
もう1つは、議会を使って県を動かすことが挙げられます。市民には請願権が認められています。紹介議員を1名以上用意すれば、請願書を提出することが可能であり、議会で採択・否決をはかって、議会の総意を得ることができるかもしれません。そうしたら前向きに進んでいくのではないかと考えます。
—最後に、何かご意見はありますでしょうか?
ジェンダーギャップの解消は、当たり前にすべきことだと感じます。このような取り組みをあえて取り上げていただかなくとも、社会でジェンダー問題を自然に扱うようになる、そういう世の中になっていけばいいなと思っていますし、それに向けて私自身も活動していきたいと思います。
質疑応答パート
—県人寮に着想を得た理由・きっかけは?
昨年(2023年)8月に株式会社PoliPoliが主催したZ世代による政策提言イベント「Policy Pitch」に出場し、最優秀提言賞を受賞しました。その際に、政策の観点からアプローチしやすいものとして、県人寮を提言の内容として設定しました。提言のために調べていく過程で、ほとんどの県人寮が女子学生の受け入れを行っていないことに気がつきました。コンテストでは高い評価を得られたのですが、実際の提言の場、政策の現場ではあまり手応えを感じられず、課題の重要性・緊急性を伝えることの難しさを感じたので、より詳細な調査の必要性を感じ、今回の調査を実施しました。
—県人寮での受け入れがなくて、進学を諦めた例を聞いたことはあるか?
具体的に「県人寮に入寮できないから、進学を諦めた」という声を私たちの方で直接耳にしたことはありません。ですが、浅野(政策提言チーム・文科一類1年)は奈良県の出身で、県人寮について調べて自分は入寮できないのかと感じた経験があるといいます。「(男子学生専用であるために)県人寮に入寮できないことに気づいて、進学のハードルを感じた」ことのある女子学生の数は可視化されません。潜在的には、かなりの数の女子学生に悔しさを感じた経験があるのではないかと考えます。
—県人寮の女子学生受け入れのハードルは予想していたものだったか?
金銭面でのハードルはもともと予想していたものでした。昨年の8月、いくつかの寮にヒアリングをした時点で、資金面が大きなハードルになりそうだと想像されました。
しかし、「寮の独自性が失われる」「東京に進学する女子学生は裕福な家庭が多いので需要がない」というような意見は、予想していなかったもので問題認識のギャップを感じました。特に後者に関しては、因果が逆になっていると考えます。裕福な家庭が多いから女子学生にニーズがないのではなく、県人寮という選択肢が与えられていなかったために、裕福な家庭の女子学生しか進学することができなかったと考えるのが妥当だと思います。
—県人寮の女子学生受け入れについて、どのようなインパクトを期待するか?地元の雰囲気やジェンダー意識にどのような影響をもたらすと思うか?
例えば、議会でアクションが起きただけでも、地元のジェンダー意識を見直すきっかけになると思います。そもそも、県人寮の課題をはじめとしたジェンダーの格差について、顧みられていない現状があるからです。
また女子学生や保護者へのインパクトとして具体的な例でいうと、「県人寮が女子学生の受け入れを始めたらしいよ」「◯◯さん(同級生や近所のお姉さんなど)が県人寮に入寮したらしいよ」という話が出るだけでも、地域内において進学の心理的なハードルは下がると考えられます。保護者にとっても、知り合いが同じ県人寮にいるのは、安心できる材料のひとつです。
他にも、県人寮には地元との繋がりを維持するという役割もありますが、こうした繋がりは学生たちにとってもプラスに働くものと考えられます。
まとめ
以上、県人寮レポート記者発表の模様をお届けしました。県人寮は、非常に安価であり、実家を出て進学する学生と保護者にとって心強い味方です。また、地元の繋がりを維持し、学生のネットワークを作る役割も持ちあわせています。そんな県人寮の受け入れにおいて、男女での格差が生じている現状は、進学ひいては就職における格差に繋がりかねません。
女子学生の受け入れが進んでいない理由には様々なものが考えられますが、その解決には官民の連携が不可欠だと考えます。#YCPは県人寮が抱える課題に対し、国や自治体からのアクションを期待します。団体としても、各自治体において議論が進んでいくように、今後さらに働きかけを強め、提言を行っていきたいと思います。
また、本記事や県人寮レポートの改善点として、実際の女子学生や保護者の声が反映できていない点が挙げられます。
そこで!皆さまから、エピソードを募集します。「県人寮や市営の寮などに入寮できなかったために、進学先を変更した」「兄弟は県人寮に入寮し、実家を出て進学したけれど、自分は入寮できずに実家から進学した」などの経験のある方、身近な人から聞いたことがある方は、
「#県人寮のジェンダーギャップ」で、エピソードを教えてください!
本note記事にコメントする形でも、X(旧Twitter)で発信する形でも構いません。皆さまの悔しさを次世代の女子学生につなげないために、協力してくださいませんか?
どうぞよろしくお願いします!
#YourChoiceProjectは、全ての学生が生まれついた地域やジェンダーに関わらず、自分の意志で自分の進路を決められる社会を目指して活動しています。本noteアカウントでは、県人寮レポートをはじめ、各種調査結果や記事を公開しておりますので、ぜひご覧ください!また、HPでは寄付を受け付けています。団体の理念に共感いただける方は、単発から金額指定も可能ですので、どうぞよろしくお願いいたします。
県人寮レポート(2024年度調査結果)は以下のリンクから
:https://note.com/yourchoice_ycp/n/n5f9a099894d6
2023年度調査結果は以下のリンクから
:https://note.com/yourchoice_ycp/n/n6f08ef9cfa07
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(文責:きき)