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マルシンスパ

 あー。忙しさにかまけて、なかなかnote書けない。
 せっかく文章を書く習慣をつけようと思って始めたのに、これでは本末転倒である。そもそも、私は少しでも空いた時間を有効活用することが、ものすごく苦手なんだな。今回でよくわかったので、改善していきたいな。

 今回はサウナ。
 テルマー湯を体験したことで、サウナ熱が本格化した私。暇を見つけては「サウナイキタイ」にアクセスし、次はどこのサウナに行こうか、と妄想を繰り広げる日々を送っていた。

 しかし、そこへきての緊急事態宣言。
 スーパー銭湯を始め、多くのサウナ施設の営業が中止されたほか、この宣言を受けて、外食はおろか、外出もままならないという状態へ陥ってしまった。
 サウナ熱が一番高まっていた時期ということもあり、「ひとつの趣味が消えた」という感じがして、私はかなりショックを受けてしまった。
 なんとか家で整うことができないものかと思い、湯船に長く使った後、水シャワーを浴び、ぼっとしてみる。
 場合によっては、水風呂に上がった直後のような感覚になることはできたものの、外気浴で得られるディープリラックス状態へ導くことはできなかった。

 そこから数ヶ月、家での擬似サウナを経て、緊急事態宣言の解除と、東京の新規感染者の減少もあり、私は友人と六本木にて行われていた「ダブル・ファンタジー」というジョン・レノンとオノ・ヨーコの展覧会に出かけることとなった。
 この機会にサ活も復活させようと目論んだ私は、友人と私の最寄り駅と六本木の間にある、笹塚の「マルシンスパ」という施設に行こう、と友人に提案した。

 友人は以前、私とサウナに行った際に、初めて「整う」を経験しており、サウナに対して興味を持ち始めたこともあって、快くその提案を受け入れてくれた。

 2時間ほど夢中で展覧会を見た後、笹塚へ移動。
 マルシンスパは、笹塚駅からは国道沿いを徒歩で数分の雑居ビルの中にある。
 若干タバコの匂いが残るエレベーターと、しきじよりもさらに狭い受付が、初心者である私たちに緊張感を与える。まるで学園祭の模擬店のような規模感で、両肩が壁に擦れそうなほど狭い通路を通り、更衣室(もはや更衣スペース)で館内着に着替える。

 浴室もかなり狭い。マンションの一室より少しだけ広いような程で、その中に洗面台、風呂、水風呂、リクライニングチェア二台がある。しかも、浴室の入り口からはサウナの入り口は死角となっているので、浴室に入ったばかりの私は一瞬、「サウナどこ??」と戸惑ってしまった。


 サウナ室は中央のストーブを囲むように座るスペースが作られており、入り口側が一段、奥が二段という作りになっている。
 テレビはなく、その代わりにソロピアノにアレンジされたジャズのスタンダードがBGMとして終始流れていた。流れた曲の中には私の好きな「エンジェル・アイズ」が流れていて、まさかサウナでこの曲を聴くことにはなると思っていなかったので、おっ、となった。

 肝心のサウナは100度越えでかなり暑く、普段行き慣れない六本木という街を冒険した我々の体にはかなり堪える。その暑さは、何分にサウナに入ったのかも忘れさせるレベルで、テレビがないことも相まって、体に感じる熱に集中が削がれていく。サウナハットを被っているお客さんも多く、この施設がその道の者に好かれていることが分かる。
 しばらくその熱を全身で味わっていると、一人のおじさんが
「あっ、ロウリュいいですか」と切り出した。

ロウリュ(芬: löyly)は、フィンランドに伝わるサウナ風呂の入浴法の一つである。 熱したサウナストーンに水をかけて水蒸気を発生させることにより、体感温度を上げて発汗作用を促進する効果がある。 サウナストーンに掛ける水には、アロマオイルなどが加えられる(wikipedia)

 この施設はロウリュがセルフ式(自動のところと、従業員の方がかけに来てくれる施設もある)で、各々の好きなタイミングで体感温度を高めることができる。
 おじさんがロウリュを行うと、顔に痛いほどの熱波が流れてくる。思わず顔をしかめるが、慣れてくると、その熱気すら気持ちよくなってくるので怖い。

 十分ほど入った後、水風呂へ向かう。水風呂は、水泳の授業の際に入る消毒用のプールのかさを深くしたような無骨なつくりで、水温は15度前後。この温度は先ほどのサウナの後では、ほとんど冷たいとは感じない。思わず長浸りしそうなのを気をつけながら、1,2分浸かる。

 そしてこの施設の目玉である、外気浴へ。ここの外気浴は雑居ビルのバルコニーにベンチをつけたような形で、「天空のアジト」との異名がある通り、そこから京王線や高速道路、笹塚の街を一望できる。全裸(腰にタオルは巻いている)の状態で街を一望しながら「整う」というゼウスのような体験。もはや私はそのシチュエーションで整ったと行っても過言ではない。

 遠くで京王線の電車や高速の車の音を聞きながら、今日見て来たジョンとヨーコの展覧会に思いをはせる。

 「イマジン」の歌詞に私が一行付け足すとしたら
 「想像してごらん。世界中の人が整っている世界を」となるだろう。
 それこそ世界平和の第一歩ではないのか、とその時本気でそう思った。


*

 この施設では、浴室を出たところに水はもちろん、塩も置いてあって、サウナ後に舐める塩は絶品だということを知ることができた。塩が置いてある施設、増えないかなあ。

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