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いじめとスクールカウンセラー 2

いじめにスクールカウンセラーはどう取り組むか

 では、いじめに対してスクールカウンセラーは何ができるでしょうか?
 多くの人が誤解しているかもしれませんが、重大ないじめがあった場合に学校に行ってSCにカウンセリングを受けるというのはあまりお勧めできることではありません。学校で傷ついた心をわざわざその場所である学校でカウンセリングを受けるというのは、あまりいい方法とはいえないでしょう。大津のSCが心のケアとして被害者の兄弟と学校で話した内容が学校側が知れるようになっていたというのは先ほど書きました。。
 受けた傷にもよりますが、いじめが起きてからいじめの心の傷を学校の相談室で癒やすというのは、そこでしか相談できないような環境以外では避けた方がいいでしょう。
 いじめに対してSCができる仕事としては、生徒からの相談からいじめを発見し改善へと動き出すということがあるでしょう。その生徒に打ち明けることができた勇気を讃え、相談室の中だけの話にしないで学校全体で対応する同意をもらって動き出す。こんな感じでいじめの発見と改善にSCが貢献することはあります。


 
「いじめ」とスクールカウンセラー

 いじめは行為そのものではなく行為が見過ごされるメカニズムであるという「いじめ」の概念からSCができるいじめへの対策を述べていきます。
 いじめについてのSCのできることの一つに行動観察があります。厳密な意味での行動観察というのとは少し違うかもしれませんが、授業や休み時間などの学校での様子を見て、今までと何か違うことに気づいて、そこからいじめが発覚していくということがあります。
 これは専門職の観察力によって気づくとか、毎日会っていないからこそ気づくという部分もありますが、ここに「いじめ」の概念を入れて考えてみます。
 「いじめ」は集団の力によって本来なら許されないことが見過ごされる現象のことです。それは子どもの集団だけでなく、時として担任など大人も含めた集団にまで働くことがあります。学校が「いじめはなかった」と結論づけてしまうことにはこの「いじめ」の力が大人にまで及んでいるからと考えることができます。
 SCはその専門性と学校という集団の中でも外である存在から、この「いじめ」の持つ集団の力に気づける存在です。そういった集団の力を発見することがSCの「いじめ」に対する大きな仕事の一つだと私は考えています。

「いじめ」から見る大津のスクールカウンセラー

 もう一度、大津のSCについて考えてみましょう。
 大津のSCについては、SCは学校と一定の距離を置くべきという第三者委員会や新聞社の提言がSCの現状に合っててないのではないかという指摘を前に書きました。しかし、これは決して第三者委員会等の提言が間違ってたというわけではありません。
 ここでまた「いじめ」の出番です。
 事件が明るみになることによって、学校という組織には起きてしまったことはいじめではないのではないかというそれまでもあった「いじめ」の力がよりいっそう強くなってしまっていました。起きてしまった暴力などをそう大きなものだとは認めたがらない力です。
 この段階でSCは学校と明確に距離を取って、「いじめ」の集団の力から離れるべきだったのです。
 もっとも「いじめ」の概念を考えるまでもなく、いじめの有無を巡って学校と保護者が対立することが予想された時点で、SCは学校組織の一部という立ち位置から、学校と保護者の間の中立的な立場に立ち位置を変更するべきだと考えられます。

 心の専門家として「いじめ」という集団の持つ力を見抜くことがSCに求められるいじめに対する役割だと考えます。

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