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2023 東北楽天(&他球団)ドラフト レポート


今回は2023年の『東北楽天ゴールデンイーグルス』のドラフトを振り返り、他球団のドラフトにも触れつつ分析をしていきたいと思います。

①補強ポイント

1.即戦力スターター
2.高卒スターター
3.1B/3B スラッガー
4.CF / SS / 高卒C


個人的に考えた楽天の補強ポイントと優先度は上記のようになります。

まず、チーム防御率最下位でチーム奪三振数最下位と明確に投手力の低さが課題となっており、これが楽天がAクラス入りを逃した最大の要因と言えるでしょう。
現状、先発ではルーキーの荘司、リリーフでは同じくルーキーの渡辺や内ぐらいしか若手の台頭がなく、まだまだ岸や則本、田中将大らベテランが一軍の主力を張らざる負えない状況となっています。
よって、今年は大卒投手が豊作な市場であることも踏まえ、1年目から一軍ローテ入りを狙える即戦力先発が最たる補強ポイントであると考えました。

また、そもそも若手の突き上げがないのはU-22世代のプロスペクトと呼べる投手がいないことが原因となっていることから、有望な高卒スターターの確保も優先事項となっていたでしょう。

しかし、悩ましいことに投手にばかり目を向けている訳にもいかず、常々言われているスラッガー不足問題も解決する必要があります。
佐々木麟太郎がプロに進んでいたら恐らく佐々木に入札したと思われますが、渡米してしまった以上、他の候補の中の「誰」を「どの」順位で指名するのかは今ドラフトの注目ポイントだったと思います。

加えて、層の薄いCFやSS、U-20世代の捕手も補強したいポイントでした。

②ドラフトの結果



常廣入札から前田悠伍を指名するも2連続で外れ…それにしてはかなり良いドラフトが出来たと思います。

それは、しっかりと補強ポイントを抑えられているからです。

1.即戦力スターター ➡️ 古謝、松田
2.高卒スターター
➡️ 坂井、日當、大内
3.1B/3B スラッガー
➡️(青野)
4.CF / SS
➡️ 中島、ワォーターズ


特に、今年の高卒右腕でもトップクラスの素材である坂井、日當を獲れたのが大きいです。


今春世界一となった侍JAPANの投手陣には「高卒」「185cm以上の高身長」の投手が多くいましたが、坂井(186cm)日當(190cm)大内(191cm)らフレームの大きい高卒投手をしっかり確保してる点で楽天はトレンドに沿った投手ドラフトが出来たとも言えるでしょう。

とはいえ、本格派の1B/3B スラッガーを確保できていない点は気になるところ。それでも、今年は全体的にコーナーのスラッガーに対するプロの評価が低かったことから見送るのも納得ではあります。(まさかの真鍋指名漏れ…)

以上より、楽天は補強ポイントを全体的に抑えつつ高卒スターターの中でもトップクラスのプロスペクトを獲得出来たことでかなり中長期的な視点で見た時に面白いドラフトをしたと言えるでしょう。

③指名選手メモ

[1位]古謝樹 投手 左/左 22歳 (桐蔭横浜大)

出所の見にくい独特なフォームからMAX153kmのストレートを投げ込む左腕。また、曲がりの大きいスライダーを軸として複数の変化球を操る実践的な投手。

リーグ戦では課題だった四死球率をショートアームにすることで3.97→2.17と大幅に改善し、奪三振率も一気に向上したことで無双状態。大学日本代表にも選出された。

膝の割れが大きく負担が大きそうなフォームはプロ入り後にテコ入れされる可能性は低くなさそう。シーズン中盤~終盤にローテーションに入ってくれるとありがたい。

【将来像】田嶋大樹

[2位]坂井陽翔 投手 右/右 18歳 (滝川第二)

高卒右腕のトップクラス。MAX149kmの力強いストレートとプロですぐに通用しそうなレベルにあるスライダー、フォークが武器。

変化球の質、精度、全体的なコントロールは完成度が高いことから、早い段階から出てくることも期待できる。

順調に身体を作れば、将来的には代表入りを狙える投手。

【将来像】戸郷翔征

[3位]日當直喜 投手 右/右 18歳 (東海大菅生)

190cm 100kgの体躯を誇る高校最大級右腕。最速154kmのストレートを高角度から投げ下ろし、7種類にも渡る強烈なフォークを投げ分ける馬力のある投手。

フレームの大きさの割にはコントロールは良い。また、メンタリティにも非常に長けている。

憧れの投手は田中将大。2013年の日本シリーズ最終戦で田中将大が9回を抑えていた姿を見たことがきっかけで本人はクローザー志望。

ただ個人的には日當なら先発で日本代表を狙えるポテンシャルはあると思うので、まずは先発でプロにチャレンジして欲しい。

【将来像】山崎颯一郎

[4位]ワォーターズ・ 璃海・ジュミル 内野手 右/右 18歳 (日本ウェルネス沖縄)

沖縄のモンスターアクセル。アメリカ人の父と日本人の母を両親に持つ身体能力の高い遊撃手。

武器はセンター前ヒットを二塁打にしてしまうほどの圧倒的な脚力。しかし、打撃は粗が多く、守備も優れた脚力がかえってステップワークを難しくしそうで課題は多い。

それでも、フィジカルは今年の高卒野手の中でもトップクラスであり、WARで高数値を叩き出しやすいポジションであるショートでモノに出来ればリターンは相当大きいはず。

【将来像】周東右京

[5位]松田琢磨 投手 右/右 21歳(大阪産業大)

細身ながらMAX149km、岸のカーブを参考にしたカーブとスプリットを武器に9登板で69.1イニング 7勝0敗 防御率1.30と春は無双。秋も同様に好成績を残している。

今永らを指導している有名な北川トレーナーが代表を務めているDIMENSIONINGのサポートを受けており、将来的な伸び代が期待できる。

【将来像】武田翔太

[6位]中島大輔 外野手 右/左 22歳(青山学院大)

東都が誇るスピードスター。守備では広範囲をカバーする俊足のセンターフィールダーでプロでは盗塁の量産も期待される。
打撃でも3年、4年次は安定して3割近い率を残しておりコンタクト能力の高さが伺える。

チームと大学日本代表でキャプテンを務めており、こうした実績や守備走塁能力の高さを考えると6位で獲れたのはかなりオイシイ選手。

【将来像】岡林勇希

[7位]大内誠弥 投手 右/右 17歳 (日本ウェルネス宮城)

地元・宮城県出身の191cm高身長右腕。開校、そして野球部創部から4年目で初のプロ野球選手の輩出となる。

実績は乏しいものの実力は底知れず。佐々木朗希の軸足を高く上げるフォームを真似たフォームでもコントロールは破綻していないことから、ただ身長が大きいだけでなく股関節の可動域が広く柔軟性が高いと思われる。

ビルドアップで身体を仕上げフォームが固まれば平均球速150kmを超える投手になる可能性は十二分にあるだろう。

思いきって

【将来像】佐々木朗希

[8位]青野拓海 内野手 右/右 17歳 (氷見)

投手としてはMAX145km、一塁、三塁、捕手もこなす運動能力の高いユーティリティプレイヤー。

通算23発と打者としても長打力を兼ね備えている。楽天では三塁手として一軍レギュラーを目指す模様。

【将来像】今江敏晃

④他球団のドラフト

【パ・リーグ】

オリックス・バファローズ


かなり攻めた素材型ドラフトでした。ここまでリスクのあるドラフトをできるのは戦力的余裕があり育成体制が整備されたオリックスだけでしょう。とはいえ、下位でしっかりと社会人トップクラスの古田島、権田を確保してきたのは流石としか言えません。個人的に紅林の守備を一軍レギュラー級まで育て上げたオリックスなら、横山もモノにできるのではないかと思います。

千葉ロッテマリーンズ


全体的に臨機応変にバランスの良い指名をしてきたと思います。素直に投手を指名し続けるのではなく、残った野手の中だと確実にトップの打者で補強ポイントにも合致する上田希由翔を指名したのはファインプレーでしょう。2位で大谷を指名したのは驚きましたが、木村早坂と高卒トップクラスの右腕を二枚抜き、高校屈指の好打者の寺地を獲得と即戦力・プロスペクト両方をしっかりと確保できていると思います。

福岡ソフトバンクホークス


12球団でもトップクラスの王道ドラフトをしてきました。高卒最強左腕・前田悠伍、伸び代抜群の大卒屈指のパワーP・岩井俊介、2023ドラフト最強クラスのスラッガー・廣瀬隆太、この3選手を獲れた時点で勝ち確でしょう。将来性は間違いなくホークスドラフトが優勝です。中位~下位で技巧派のまとまったタイプの投手を指名したのは意外でした。また、育成でちゃっかり高校でもトップクラスの打者である佐倉、中澤を獲得しているのも見逃せません。

埼玉西武ライオンズ


今年のドラフトにおいて最もハイシーリングでハイフロアな左腕である武内夏暉を既に先発ローテーションが強力な西武が獲ったのはせこいとしか言えません。来年以降ただただ脅威です。2位の上田大河と大卒投手を重ねてきたのはメジャー流出対策でしょうか。それ以降は素材ドラフトという感じ。意図はわかりますが素材ドラフトが成功するかは西武の環境次第な気もするチョイスです。

北海道日本ハムファイターズ


2023ドラフトの優勝チームでしょう。未だ底知れぬ最速158km左腕の細野、近年でも屈指の総合力を誇る大卒捕手・進藤、大卒No1.ポテンシャルの外野手である宮崎、フィジカルモンスターで高卒トップクラスのスラッガー・明瀬と補強ポジションにおいて考えられる最高の指名を連続でしてきました。

【セ・リーグ】

阪神タイガース


即戦力とプロスペクトを堅実に確保したドラフトという印象。好投手・下村を一本釣りし、MAX159kmを叩き出した椎葉を2位、高校屈指の総合力の高さを誇る山田・百崎の両遊撃手を重ねてくるという独自路線。及第点は固いと思います。

広島東洋カープ


間違いなく12球団の中でも上位の勝ちドラフトだと思います。常廣、高、滝田、赤塚と前評判の高い大卒投手を4枚も獲得。特に滝田、赤塚は投球の完成度からして伸び代という点でも面白い存在だと思います。また、沖縄尚学のスラッガー・仲田、幻のポケモン枠の杉田、佐藤と下位でも下克上し得るポテンシャルを秘めた選手が複数いるのも面白い。

横浜DeNAベイスターズ


横浜ファンの間では今永の後釜として武内を希望する声が大きい中、横浜は社会人最強スラッガーの度会隆輝に入札し見事獲得。個人的には度会入札で良かったと思います。正直、今永の穴を武内で埋めれたとしても優勝する確率自体は大して変わらない、何なら下がる可能性が高い以上、ドラフトの本来の意義である中長期的な補強に舵を切った方が良いでしょう。また、投手の穴埋めに注力し続けると今度は野手がすり減っていくというリスクがありますからね。
その点、次世代のコアプレイヤーが不在の外野においてまだ21歳と年齢的にも将来性が高い度会はフィットすることでしょう。また、今年のドラフトからスカウティングに動作解析を取り入れるという近年のドラフト覇者・オリックスに近しい取り組みを行っている点でも来年からの横浜ドラフトに期待ができそうです。また、度会に加えて二刀流の大器・武田陸玖を獲得できたことでDeNAの外野層のコア不在問題は一気に解決に向かっていると思われます。

読売ジャイアンツ


個人的には賛否が分かれるドラフトかなと思います。何故なら、即戦力に全振りして一軍の穴埋めをするという意図はわかるものの、誰一人としてハマらなかった時が悲惨だからです。何人か高卒を指名してバランスを取っても良かった気はします。とはいえ、1位の西舘はもちろん、全体的に今年の市場の中だと即戦力性の高い選手たちを確保できたのは事実です。特に、西舘はコンスタントに150km台の直球を投げ込めてかつハイレベルな落ちる系の球種を投げれるということで、1年目から一軍ローテを回せる可能性は高いです。今年の巨人ドラフトは早くも来シーズンある程度結果が見えてくるかもしれません。

東京ヤクルトスワローズ


ヤクルトファンの方には申し訳ないですが…個人的には微妙だと思っています。全体的にチョイスがハイフロア気味で巨人と傾向は被るものの巨人に比べると確実性という点で一段落ちるかなと思います。1位の西舘と鈴木叶のハイシーリングコンビがどこまで伸びるかによって成否が分かれるかもしれません。

中日ドラゴンズ


指名のチョイスはかなり良いと思います。球速とマネーピッチを兼ね備えた草加、近年で最も優秀な遊撃手であろう辻本、高卒トップクラスの左腕である福田と指名選手だけ見れば十分に成功だと言えます。しかし、補強ポイントを抑えているかと言われれば答えはNOです。ドラフト補強が実り村松、田中幹、福永、土田が揃っていて比較的に層が厚い二遊間を辻本、津田で更に固める必要があったのかは疑問です。(間違いなく二遊間の厚みは強みにはなったが…)それよりも層の薄い先発陣の強化を優先した方が結果的に勝利に結びつきそうに思えます。兎にも角にも今後中日もとい立浪監督がどういった編成を敷いてくるのか要注目です。

⑤総括


東の佐々木と対を成していた西の大砲・真鍋の指名漏れという衝撃に始まり全体的に前評判の高いスラッガー候補の評価が低く、全球団が上位は投手を優先的に獲得してきたドラフトという印象です。

投高打低が顕著になっている現代野球において、各球団とも投手の補強を重要視しているということでしょうか。

そんな今年のドラフトにおいて、個人的に高く評価しているのが日ハム、SB、楽天、横浜の4球団です。

補強ポイントを抑えつつプロスペクトと即戦力をバランス良く指名できた日ハムとSB。目先の利益に囚われず中長期的に弱点部分のポテンシャルを引き上げて強くしようというビジョンが垣間見えた楽天、横浜。非常に上手いドラフトをしたのではないかと思います。

以上で2023ドラフトレポートの締めくくりとさせて頂きます。ここまで長らくお付き合い頂き誠にありがとうございました!

また来年会いましょう~👋

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