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スーパーポジティブ会社員は、もうどこにもいないので


いまでは考えられないが、わたしはもともとスーパーポジティブだった。

仕事でどんなに嫌なことがあっても、翌日まで引きずることはない。寝ればたいていのことを忘れた。

そんなことより、休日に数少ない大事な友人と会うことや、夢中で追いかけている推しのことで頭がいっぱいだった。「楽しいことを考える時間が多いほうが、人生は得だ」と思っていた。


「メンタルを病む」ということは自分に関係のない話で、「そういう人もいるよね」と考えていたくらい他人ごと。

病みやすい・病みにくいは、その人がもともと持つ性格として、最初から決まってるんだろうなって。そしてわたしは、病みにくい側の人間として生まれたんだと思ってた。



転職して変わったのは、働く環境。

自分には少し荷が重めの仕事。社員同士の密なコミュニケーション。夜中も休日も働くことがあたりまえの毎日。

少し負荷をかけてでも、社員全員で協力しながら猛スピードで成長していく。ベンチャー企業として、正しい在り方だとも思う。でもこれが、自分にはまっったく合わなかったのだ。



たったの半年で、あっというまにメンタルが落ちた。かつてないほど体調が崩れた。

前向きなことなんて少しも考えられなかった。「今日を少しでも穏便に終わらせたい」という、祈りみたいな気持ちだけで毎日を過ごした。

朝がくるだけで絶望したし、夜は明日がこわくて涙がでる。通勤用に新調したバッグが視界に入るたびにがっかりするし、電車ではなにも考えたくなくてずっと目をつぶっていた。


友だちからのLINEを返せなかったし、推しのライブには申込みさえしなくなった。

病院に行くと、うつ病の診断がでた。「うつになると、好きなことからできなくなるって本当なんだなあ」とぼんやり考えていた。



もう半年前とは、別人になってしまった。ポジティブでアクティブだったわたしが、どこにもいなくなってしまった。

悲しくて悔しくて、どこで間違えたんだろうかと自分を責めた。転職しようなんて思わなければよかった。転職先をもっと悩んでから決めればよかった。

その後もしばらく働いたがすぐに限界を迎えて、会社のだれにも相談することなく静かに退職をした。



退職後は、無だった。

自分を責めることにもつかれたらしい。すべてがどうでもよかったし、興味がなかった。寝るか食べるか、そんな毎日。

それをずっとずっとくり返して、やっと飽きた。「そろそろ生活費まずくない・・・?」と考えはじめたとき、まともな思考が戻ってきたとも思った。


もうスーパーポジティブだったわたしには戻れないんだと思う。

いまはネガティブとか無気力とかと、共存しながら生きている。正直、扱いにくいことが多い。すぐに最悪なパターンを優先して想像をするし、サボったりもする。

でも好きだったことや大事だったものを、少しずつ思い出してきた。なくなったわけじゃなくて、忘れていただけだったみたい。ホッとして泣きそうになる。



限界をむかえたことで、自分のキャパシティを知った。「あのラインを越えると病む」ということがわかっているから、いまは環境をコントロールしながら働くことを重視している。

病んで唯一得たものかもしれない。でもこれが、今後の人生における「仕事」や「働き方」の指標にきっとなる。


ポジティブだったわたしに戻れるなら、正直戻りたい。仕事もプライベートももっとうまくやれるはず。

でももうムリだからさ。新しい自分とうまくつきあっていくしかない。自信はないし不安しかないけど、人生をやっていくしかない。

長い付き合いになるけどよろしくね。

またね。



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