【キッチンカー物語⑦】'23年振り返り~精神面編~
『人はどこまでもモチベーションの生き物である』
前回は俯瞰しての業界分析。
今回はマインド面の振り返りをnoteしておきたい。
◐タイヤバースト事件
今年2月、高速道路で大阪に向かっていた時に突然タイヤがバースト(破裂)。幸いにも自分の身も、誰かの身も、トラック本体も無事でしたが、ドライバーになって初めて『死』を感じた出来事でした。
レッカー車が来るまで生きた心地がしなかった。運転席にひとり。孤独。寒さで震えていたのか孤独で震えていたのか。
「こんなタイヤで走ってたんですか。他もだいぶいってますよ。ここの溝が…」と初めて訪れるタイヤ専門店で説明を受けてゾッとした。自分の無知を心底恥じた。
車検は通っていたはずなのに、あの業者めと、とっさに誰かのせいにしたくなったが、そこには誰もいない。事業主なんだから。すべては自分のせい。
しょぼくれ気分でいた中、今日なら在庫に余裕があるけどどうしますかと聞かれ、それもまた運命。タイヤ削って、命削らず。ここでケチっている場合ではない。
「すべてのタイヤを取り換えてください」
近くのコンビニに走り二枚のキャッシュカードから現金をかき集めた。店長に頭を下げ、スタッフさん総出でジャッキやらなんやらで重い車体を持ち上げ作業を着々と進めてくれたその姿にただただ感激。自分ひとりのなんと無力なこと。
こんなに頼りになる人達となぜ繋がり合えなかったんだだろう。いや、今日知り合えたじゃないか。
自宅の暖房の前にへたり込み、やっと全身に血が巡ってきた。
改めて店長の名刺を見つめ「ひとりじゃない」「ひとりじゃない」「ひとりじゃない」と三回唱え、最後に「ありがとうございました」とおふだのように名刺をおでこにやった。
今年のお告げ『安全走行』がむしろ、小雪残る頃で、まだよかった。
◐病気の発覚
初夏。今度は自分の身に病気が見つかってしまった。放っておけば十年後か二十年後か死に至っていたかもしれない。またハッとさせられた。
どんな風邪もこじらせれば死に至る。と同時に今の医療でちゃんと治すこともできる。
この病気を見つけてくれた偉人、お薬を開発してくれた偉人、質問に答えてくれたお医者さん、苦手な採血を淡々とこなしてくれた看護師さん、再び自分の無力さと誰かの英知に感謝。
原因を振り返ってもしようがなかったが、自分の行いや、いま体内にうごめいている不穏な何かをおもうと、目の前がついつい暗くなりそうだった。
幸いにもほとんど無症状。数か月間の薬物投与ののち何度かの検査を経てドクターのOKが出た。
しかしなんだろう。あの頃から始まった気がする。このしんどさ。だるさ。ああ、これが倦怠感というものか。
仕事は通常通り行えた。が、どうもパワーが出ない。どんどんHP(体力)が減っていく感覚。人に笑顔を振りまくMP(魔力)も帰る頃にはゼロ。寝ればある程度回復するもののとにかくパワーの減りが早い。一日仕事をすれば一日寝込む。そんな日々。
抗生物質による免疫低下かもしれない。酷暑による夏バテかもしれない。だいぶ前に打ったワクチンの毒性かもしれない。もしくはただの"老化のニューノーマル"が来たかも苦笑。わからない。
その頃トラックのほうにも原因不明のエンジントラブルが続いていて、オートマなのにエンストしまくる事態。
タイヤ屋さんから今度は”特殊車輌”に対応できる整備士さんを紹介してもらい、相談に乗ってもらった。今年は本当に人様に頼りっぱなし。
それから毎月のように点検・整備を繰り返し、なかなか治らない子の様子をみていた。今日は自分の病院。明日はあの子の病院…
お茶の先生いわく、
『低空飛行』でいいから飛び続けよう。身体が資本。車も。僕も。今年はそれでいいと。
◐パートナーの支え
パートナーとお付き合いし始めた矢先の病気発覚。隠していてもしょうがないし、少々根暗な気持ちで「別れるなら情が移る前。今だよ」と伝えたが、彼は即答。
去年は真夏のフード売上が散々だった(真夏真冬はキッチンカー弱い)ので、今年はかき氷を始めようと春からいろいろ準備をしてきた。
去年出逢いがあった瀬戸内から仕入れた香川や岡山のイチゴや桃、ぶどうなどフレッシュフルーツを使った『手作りシロップ』。もちろん保存料着色料は不使用。ハデじゃないけど素朴な甘さ。僕が食べたいかき氷。
ただ僕は酒飲みなので普段甘いものをあまり食べない。キライなわけじゃなく、五百円玉があれば、ショートケーキでなく生ビールを選ぶ。
たまたまパートナーが大の甘いもの好きで(逆にお酒を一切飲まない…!!)試作シロップを何度か味見してもらった。これがまた面白くて。「この柑橘は"大人の甘さ"やな」とか、「練乳ナシでいくならイチゴはもっと甘さを引き立たせていいかもな」とか、甘党らしい意見をハッキリ言ってくれて参考になりました。「またいつでもシロップチューチューさせてくれ!シッポ振って来るから!笑」と。大原の赤紫蘇でジュースも作ったりなんかして。ほんまの京都のおばあちゃんちみたいやなと。
そんなこんなしてたら無事に夏が終わりました。トラックも調子を取り戻してきました。
◐新規事業構想
秋頃。よく出店している船岡山公園のマルシェにて、ゲストスピーカーとして来ていたアメリカ人社会活動家の『City Repair』というプレゼンを聞き感銘を受け、「二号店やりたい!」という熱が急浮上した。車一台、アート一枚で、町は様変わりする。『新しい和のコンセプトカー』(詳細ナイショ♡)
プレゼン資料まで作り知り合い何人かに聞いてもらった。
結果『今ではない』という結論に至った。主に『人の問題』が大きい。逆を言えば”相棒”さえ見つかればそれは”そのタイミング”なのかもしれない。
種子は発見できた。だけど発芽の時期を間違えれば、うまく発育せず終わってしまうかもしれない。いつでも孵化できるように身体を温めておく。今はそれでいい。
今あるフィールドで試作や自己表現を重ねていく。第一子である『たいたん』さんをかわいがってやらないと、またスネられたら困る笑。
◐孤独でなく孤高
新規事業構想を広げる中で、いま自分がやっている商売がいかに『属人的』であるかに気付いた。
メニューは和のジャンルならなんでも。できないことはできないと言うのでご相談下さい。誰もが簡単にできるチェーンオペレーションではないので。
だから人に頼みずらいことばかりで自分で抱えちゃうのですが。
料理だけのことだけじゃない。僕は英語がヘラヘラ(※notペラペラ)しゃべれるのでインバウンド全然Welcome。
それも当たり前のようにこなしてるけど、実は僕にしか出せないvibesなのかもしれない。
Enjoy 雑談!
一期一会に言語も国籍もない。『日本料理を世界へ』を地で行っちゃう奴。
属人的な商売って孤独になりがちだし、商売の拡がりが難しいのかなと思うけど、それだけ存在自体が稀有/誰もマネできないことをやっちゃってるということだと気持ちを落ち着かせる。すべては表裏一体。
孤独でなく孤高。
そういう生き方、きらいじゃない。
***
孤独を感じることで、孤独じゃないと知れた。ひとりで解決できないことにぶち当たって「ふぇ〜」となっていたら、ちゃんと誰かが助けてくれた。
いろんな不調をたまたまとはいえ発見できた。そこから目をそらさず、ごまかさず。向き合ってこられた。年越しまでに一応の決着はつけられた。それだけでもよくやったよ。
無欠席(タイヤバースト/台風大雨除く)でこられたし、新しいメニューも開発できたし、新しい取引先も開拓できたし、新しい場所にも行けたし。
何より『新規事業のタネ』が自分の身から湧いて出てきたということは、まだまだ前向きな証拠。まだ見ぬ世界が見える瞬間がある。
いろんな出費が重なり精神的にしんどいときもあったけど、いいこともちゃんとあった。まさに『正負の法則』みたいな一年でした。負が爆発しなかっただけよしとしよう。
とりあえず経験と思い出は『純増』という結果に終わりました。
忘年する準備はできている。
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