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鵜の孤独【短編】

みんなのフォトギャラリーから生まれた物語。

グルルルル、グルルルル。

これは、ワタシの泣き声です。

グルルルル、グルルルル。

鶯や郭公のように、上手になくことができません。

不格好な泣き声で、すみません。

、、、紹介が遅れましたワタシは「鵜」というものです。

なぜ、泣いているかというと、探しているのです。

だれか知りませんか。

空を見上げても、雲しか見えません。

涼やかな風の中を、蝶が舞っています。

探しているのは、蝶ではありません。


川の中にいるのでしょうか。

冷たい水の中に潜ってみます。

水の中を見渡しても、いないようです。

川面に蛙が浮かんでいます。

探しているのは、蛙ではありません。

鮎が目の前を通っていきました。

今だ。おなかがすいていたので、鮎を1匹食べました。

それでも、ワタシの心は満たされません。

探しているのは、鮎ではないのですから。


身体が冷えるので、陸に上がって、岩場で一休みです。

グルルルル、グルルルル。

だれか知りませんか。

クヌギの木に、蝉が静かにとまっています。

探しているのは、蝉ではありません。


ここにもいないのでしょうか。

空を自由に飛べる翼を持っているのに。

水中で自在なくちばしを持っているのに。

地面をつかむかぎづめを持っているのに。

探すことができません。

出会うことができません。

だれか知りませんか。


ワタシの兄を。

ワタシの父を。

ワタシの母を。

ワタシは「鵜」というものです。


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