見出し画像

パンダに乾杯【photogallery短編】

パンダのメイメイは、今年の冬を越せそうにない。

ウサギのシロもリスのチコも心配そうに、メイメイを見た。

今年の秋の終わりは、冬の厳しさを予感させるものだった。
山には木の実が落ちておらず、動物たちはどうやって冬を越せばいいのか戸惑っていた。

体の大きなパンダは、毎日それなりの量の食べ物が必要だ。

リスのチコのように、栗1つで満腹にはならない。
ウサギのシロのように、ニンジン1本で満腹にはならない。

3匹は、ほとほと困り果てていたのだ。

そこに、人間の男がぶつぶつとつぶやきながら歩いてきた。男の名前は信介。都で、わがままなお殿様に仕えていた。
「都ももう飽き飽きじゃ。何かめずらしいものを見つけてまいれ」
あっという間に、都からたたき出されたのだった。
「そんなに珍しいものなんて、そうそう見つかるはずがねーじゃねーか」

そして、3匹を見つけたのだ。信介は3匹をよくよく見て、こう言った。
「山には食べ物もない。都でおいしいものを食べたくはないか」
3匹は、その話を聞くと、喜んで、都に行くことにした。

信介は都に戻る道の途中で考えた。
「しかし、殿様が喜ぶような珍しい動物であるかな」

都に着いた信介は、さっそく殿様の前に3匹を連れて行った。
「なんじゃ、リスにウサギにパンダじゃないか。珍しくもない」
殿さまは不機嫌そうに言った。

「いいえ、殿様、世界に1匹の珍しい動物たちです」
「どこが、珍しいんじゃ。その辺にリスやウサギやパンダはいるぞい」

「リスがどこにいるか、おわかりですか」
「その一番小さいのじゃろう」
「いいえ、この小さいのはウサギでございます。」
信介は、リスのチコを指さしながら言った。
「世界で一番小さくそして耳の長くない、しかも木にも登ることができる珍しいウサギです」
殿様は目を丸くした。
信介は、リスのチコにウインクをした。

「そして、この中くらいのはパンダでございます。」
信介は、ウサギのシロを指さしながら言った。
「耳が長く、白黒模様のない、白一色の珍しいパンダでございます。しかも、ニンジンが好物であります。」
殿様は口をあんぐりと開けた。
信介は、ウサギのシロにウインクをした。

「そして、そして、この大きいのが、なんと、なんと、リスなのでございます。」
信介は、パンダのメイメイを指さしながら言った。
「パンダの模様をした世界最大のリス。しかも、好物は笹の葉にございます。世界に一匹しかいない大変珍しいものにございます。」
殿様は、鼻息を荒くした。
信介は、パンダのメイメイにウインクをした。

殿さまは、目をぱちくりしながら何度も3匹を見比べていたが、しばらくすると、こう叫んだ。
「あっぱれじゃ、信介。世界でも珍しい動物たちをよくぞ、連れ帰ってきた。褒美をとらせる。そして、3匹を大切にしようぞ」

こうして、3匹は、殿様に大切にされて、厳しい冬もおいしいものがたくさん食べられたとさ。信介も無事都に戻ることができたとさ。


教訓:自分の知らない価値を伝えてくれる人がいると、助かるかも。いなければ、自分でアピールしてみよう。

(お礼)oimonoteさん、すてきなイラストありがとうございました。ちょっと悩みましたが、楽しく書けました。

最後まで読んでいただきた、ありがとうございます。スキやコメントをいただけると、うれしいです。どんな教訓になりそうですか?

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?