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書評 『行動経済学が勝敗を支配する』、今泉拓著、日本実業出版社、2024年

スポーツ・ファンなら、今すぐ買うべき本だ。

まず、この手の本にありがちな、「まとまりに欠ける」、「終盤にかけてダレていく」ということがない、良書である。丁寧に構成がされていて、教科書を読んでいるようだ(教科書として書かれているかもしれないが。)

また、著者はスポーツ分析の実務に携わっていたので、よくあるサッカー、野球という事例だけではなく、ゴルフ、テニス、マラソン等も取り上げている。これらのスポーツの分析は、私もはじめて読んだので大変興味深かった。ちょうど、オリンピックが始まるので、読むきっかけになるのではないか。

その意味では、日本語で読める「スポーツ・アナリティックス」の最先端の本である。ただ、スポーツの世界は、ハイスピードで動いているので、どうしても事例の賞味期限が早い。読もうと思っている方は、今すぐ読んだ方がいいと思う。

さて、本題の「行動経済学」であるが、まずは「数式」は出てこないので、数学嫌いの方はご安心を。

ただ、数学を使わないということは、モデルの汎用性を担保できない、ということを意味する。自分で、この本を道具にして、考察したいという方には不満足に終わるかもしれない。

しかし、それは数学を使わないことの代償であるので、仕方がない。その代わり、本書は丁寧に書かれているので、議論についていけない、ということは起こらないのでご安心を。

この本以上の分析、また他の事例に応用したい方は、数学を使った「教科書」を読むしかないだろう。理論を実践するには、必ず数学が必要になる。なぜなら、数学が一番汎用性がある言葉であるからだ。

最後に、私が関心したのが、参考文献の紹介の多さである。しかも、章ごとに案内されているので、学術書なみの量である。





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