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慢性便秘症と腸内細菌の関係について

(ざっくり)
慢性的な便秘は腸内細菌で改善できる可能性がある

(アブストラクト)

日本人の腸内細菌叢は独特の特徴的な細菌叢であり,Bifidobacterium 属が多いことも特徴である。
慢性便秘症患者では多彩な腸内細菌叢の変化が観察されるが,日本人の糞便細菌叢には明らかな 性差があり,年齢別,ブリストル便性状スコア別にも細菌叢の特徴が明らかにされた。
糞便中細菌叢に加えて,粘液層中心に局在する粘膜関連細菌叢解析も進められている。
慢性便秘患者の糞便を無菌マウスに移植したノトバイオート研究から新たな病態機構の解明が進みつつあり,短鎖脂肪酸,二次胆汁酸 の減少が慢性便秘症の病態に関わっている。
慢性便秘症に対する糞便移植も試みられている。

(イントロダクション)

・メタン産生菌,硫酸還元菌の関与
管腔内の発酵現象 により同時に水素ガスが産生されるが,この水素 をエネルギー源として利用して酢酸,メタン,硫 化水素などのガス状分子が産生され,そのガスが 生体の生理機能に影響を与えることが以前より注 目されてきた。
メタン 産生菌の多い過敏性腸症候群患者では食後のセロ トニン濃度が低下し,腸管運動低下に関わること などが示されている。日本人の腸内細菌叢には メタン産生に関わる遺伝子をもった細菌が少ない。

また、便秘型過敏性腸症候群(IBS-C)における硫酸還 元菌の関与を報告している。硫酸還元菌は水素を 利用して硫化水素(H2S)を生成し,その H2S が 腸管運動や内臓神経過敏に影響する可能性が示さ れている。急速な食生活の 変化による硫酸還元菌の増加が慢性便秘症増加と 関連している可能性もある

・ノトバイオート研究からみた便秘メカニズム
無菌マウスにすでに知られている微生物叢を移 植してノトバイオートマウスを作製し,その微生物叢の生体における役割を解析する実験手法。慢性便秘患者の糞便を無菌マウス に移植し,腸管運動,排便生理に与える影響も研究され始めている。

8 週後に評価した結果,24 時間糞便 回数,糞便水分量,全消化管通過時間,大腸通過 時間が有意に低下していた。

ノトバイオートマウス実験のセロトニン動態の評価において、便秘症ノトバイオートではセロトニン再取り込みトランスポーター(SERT)の発現が亢進し, 腸管局所でのセロトニン濃度が低下することが腸管蠕動運動の低下,便秘につながっていることを明らかにした。

・慢性便秘症に対する糞便移植
腸管通過時間遅延型慢性便 秘症に対する無作為化比較試験の結果が最近報告 されている。
60 名の便秘症患者を無作為に通常 治療群(30 名)と糞便移植群(30 名)に分け, 糞便移植は 6 日間連続,100ml の糞便溶液が経鼻 経腸チューブで投与された.ドナーには各種条件 でスクリーニングされた中から 24 歳健常ボラン ティアが選ばれた。

通常治療を行った対照群に比較して糞便移植群で は,臨床的治癒率は有意に高く(ITT 解析:36.7% vs 13.3%,p=0.04),排便回数,便スコア,腸管 通過時間なども有意に改善していた。

IBSを対象として糞便移植の結果が報告では、10 名の IBS 患者に糞便移植を行い, 6 名に臨床的効果がみられ,ブリストル便スコア1 の 2 名はとも にスコア 4 に改善していた.ドナーの腸内細菌叢 の解析から,g_Bifidobacterium 属の存在が有効性 の予測になる可能性を報告している。

参考文献

https://www.jstage.jst.go.jp/article/nisshoshi/115/11/115_940/_pdf/-char/ja


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