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ユーラシア大陸横断③ 【日本出国】

2018年1月6日早朝、僕は京都駅から米子駅行きの高速バスに乗った。鳥取の境港でフェリーに乗船して、旅の最初の目的、ウラジオストクに行くためだ。

同じバスの人は国内旅行に行くのに、自分だけこれからロンドンまで行くなんて、とても不思議な感覚だった。JR米子駅から境港駅まで、ゲゲゲの鬼太郎がペイントされた列車に乗った。そこで初めて、水木しげるが鳥取出身だということを知る。笑

耳慣れない方言と鬼太郎のアナウンスを聴きながら、つかの間の鳥取を味わう。境港駅でかなり時間があったので、お土産になりそうな日本酒や、昼飯の弁当を買い込んだ。DBSクルーズという船会社のフェリーに乗るのだが、船着場は少し離れた場所にある。無料のシャトルバスで船着場に向かう。

ぱっと見、倉庫のような建物だけど、この中に、出入国審査や税関がある。早くつきすぎたので、待合室には誰もいなかった。しばらくすると、もの珍しそうな目でずっとこちらを見ていた売店のおじさんが話しかけてきた。乗客の8割以上が韓国人で1割がロシア人。日本人は珍しいらしい。まして、冬のロシアに行く日本人だ。なおさら珍しい。親切に寄港する韓国の町、東海市の観光マップをもらったり、フェリーのことを色々と教えてもらった。「冬の日本海は大荒れするぞ、酔い止め持ってきなよ」という有難い忠告を頂き、酔い止めを買いに近くのドラッグストアに走った。思いのほか遠く、往復45分ほどかけて、途中、にわか雨に打たれ、やっとの思いで酔い止めを手に入れる。(後からこの酔い止めに救われる事を知る余地もない)

待合室に帰ってくると、韓国人で溢れかえっていた。(写真がその図) いよいよ出国だという高揚感と2ヶ月の一人旅が始まるという寂しさとが混じった複雑な感情になる。

日本人は自分1人か…と思っていたら、「日本人の方ですか?」と大きな荷物をいくつも持った5.6人の団体に声を掛けられた。話していると、NHKの取材班だという。

平昌オリンピックの前に、現地の取材に行くらしい。ロンドンまで行くことを伝えると驚かれた。学生はいいですね〜と言われた。そうだ、こんな旅が出来るのも学生最後になる。やり残すことがないようにしよう。そう思った。

取材班の方と雑談していると、出国の時間になった。手荷物検査も緩いので、査証を押すだけであっさりと船に乗り込めた。

これからどんな旅が始まるのか、ワクワクする。船室は2段ベッドが4つの8人部屋だった。みんな韓国人の中年男性だった。見た目はいい人そうで一安心。

船に乗り込むと急にお腹が空いてきた。そこで初めて、船内で食べるものを買い込んでいなかった失態に気づく。船内には売店もあるけど、値段が高い、その上、ウォン払いでレートも悪い。仕方なくカップ麺を一つ買った。約400円のまるちゃんごつ盛り。

食べ終わって、さぁ日記でも書くかと思って書き始めると、だんだん気持ち悪くなってくる。船酔いだ。沖に出て、波が高くなってきたようだ。上下に大きく揺れる。日記を書く気も失せて、船室のベットでじっとする。目を閉じると眠気がグッときた。

2.3時間寝ただろうか?船のクルーに起こされる。何だろうと見上げると、NHKの取材班の方が1人立っていた。日本人にも取材したいから、インタビューに答えてくれますか。ということだった。軽い頭痛と吐き気がしたが、全国放送で放映されるかもという淡い期待で快くオッケーした。(結局、放送ではカットされ、ぬか喜びに終わるが…笑)

寝起きで、寝癖だらけの冴えない顔でインタビューに答えて、また酔いが激しくなってきたのでベットに横になる。船の揺れに同調して、ズキズキ頭が痛い。こんな調子でロンドンに辿りつけるのだろうかと不安を感じながら、酔いに耐える。そうしているうちに、薬が効いてきたのか、意識が遠のいていった。

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