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ユーラシア大陸横断⑥ 【ウラジオストクの街並み】

2018年1月8日お昼過ぎ、日本を出国して丸3日、僕はついにウラジオストクに到着した。気温は-10℃くらいで、北海道とさほど変わらない。緯度でいうと、ちょうど札幌くらいだろうか。北海道の冬を経験したことのない僕とっては、今まで人生で最低気温だ。

旅客ターミナルから一歩踏み出ると、いっきに西洋の雰囲気になる。北海道から日本海を越えた先に、このような街があるなんてビックリだ。旅客ターミナルの向かいに、シベリア鉄道の東端、ウラジオストク駅がある。

線路を挟んで左が港、右が駅だ。

僕が乗るイルクーツク行きの列車は、夜10時の発車だったので、それまで街をぶらつくことにした。これから始まる三週間のロシア旅に向けて、まずはSIMカードを入手して、両替を済まさなければならない。

話は脱線するが、旅行中の両替について少し話したい。皆さんは海外旅行される時どのようにお金を管理されているだろうか?今回、僕は総予算40万円を海外専用プリペイドカード、クレジットカード、現金に分けて持ち歩いた。比率は、左から5:3:2くらいだ。盗難の危険から現金はなるべく持ち歩かず、プリペイドの比率を上げた。現金を最小限にしすると安心感は上がる。しかし、旅を終えてみて、プリペイドカードをユーロ圏で使用するのは、おすすめしない。プリペイドカードのレートはメジャーな通貨ほどレードが悪いからだ。逆に、ハンガリーなどマイナーな通貨が流通する地域では、現金両替よりかなりレートが良かったりする。ユーロ圏は大抵の場所でクレジットカードが利用できるので、プリペイド:クレカ:現金=3:5:2くらいがちょうど良かったと思う。

さて、話をウラジオストクに戻そう。僕は、まず現金を消費したかったので最もレートが良いと評判の銀行に向かった。道路にはオレンジの除雪車両がずらりと並び、皆寒そうにフードを被って足早に歩いていた。(写真はその時のもの)駅から20分ほどで銀行についた。銀行の中は打って変わって暖かい。というより暑い。僕は、ヒートテックの極暖をインナーに、フリース1枚とダウン2枚を羽織っていたが、室内ではインナーとフリース1枚でも少し暖かく感じる。

両替を済ませて、次はSIMカードを求めてショッピングモールへ。街を歩くほど、異国感がなくなってくる。ロシアといえど、中国の国境近くに位置するので中華系移民も多い。だから、どこか親しみも感じる。

ショッピングモールの一角にあるYOTAという携帯会社に入った。店員の女の子は全く英語が話せない。プリペイドSIMを買いたいという事すら通じなくて、10分ほどあたふたしていると、店員と思われるおじさんがやってきた。片言の英語で何とか意思疎通が出来て、やっとの思いで購入した。そう、ロシア国民の大半が英語を話せない。友人から聞いていたけど、これまでとは…。

SIMカードは、データ100GB・1ヶ月契約で3500円ほどだった。日本では破格の値段だ。これだけのデータ量があれば、サンクトペテルブルグまで余裕だろう。

そのあと、列車での食料を買いにスーパーへ。パン、水、クッキー、カップ麺、りんごなどを買い込み駅へ向かう。

日が暮れて、だんだん冷え込んできた。駅の待合はドアが開けっ放しになっており、風がダイレクトに吹き込んでくる。待合室の奥の方のベンチでじっとする。
隣に座っていたおじさんがロシア語で話しかけて来た。ロシア語が分かるはずもないのだが、何となく「どこから来た?」と訊いているように感じる。「Japan」と答えると「そうか」と言った風に大きく頷いた。これからロンドンまで行くのだとGoogle翻訳で伝えると、また大きく頷いた。もっとリアクションがあるかと思ったら拍子抜けした。広大なロシアの地で長年住んでいる人にとっては、ロンドンも近いのかも知れない。

ロシアの駅には電光掲示板があるが、全てロシア語表記だ。自分の乗る電車は、列車番号で判断するしかない。列車の発車時刻が近づくにつれて、そわそわしてきた。その様子を見て、おばあさんが話しかけてきた。列車のチケットを見せると、こっちこっちと手招きする。おばあさんに連れられてプラットホームに出た。

粉雪が降っていた。列車は先から先まで見えないほど長い。おばさんは、僕のチケットを見て、列車番号と座席を教えてから自分の列車へと消えて行った。

それから20分ほど待っただろうか。プラットホームで待つロシア人は体を揺らして、寒さに耐えていた。僕も足踏みしながら列車が開くのを待つ。やっと車掌さんが出てきた。チケットを確認してもらって列車に乗った。

僕が予約した席は一番グレードが低い3等車だ。写真がないので分かりづらいが、車両の中にパーテーションで区切られた部屋がいくつもあり、各部屋に二段ベッドが3つ、合計6人寝れる。通路を挟んで、右に2人、左に4人だ。
僕は左の下段のベッドを予約していた。

真っ暗の車内の中、ベッドの下に荷物を収納して横になる。向かいのベッドにはロシア人のおばさんが来た。忙しなく独り言を呟く面白いおばさんだった。

おばさんの独り言を聞きながら(もちろん何を言ってるのかサッパリ分からない)、目を閉じる。今日あったことを色々と思い浮かべた。ここに来て初めて、寂しいという感情が起こった。ロシア語しか通じず、凍てつくロシアの気候のせいも知れない。

こういう感情を味わうのも旅の醍醐味だ。そんな気持ちもして来て、いつのまにか眠っていた。









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