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動物愛護系の方からの手紙への返信。

始まりはHPの問い合わせから

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■お問い合わせ内容
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お名前:XXXXXXXX
メールアドレス: XXXXXXXX@gmail.com
お問い合わせ内容:
イルカの生体展示についてお願い申し上げます。
イルカの生体展示を、おやめください。

イルカショー等はイルカの犠牲の上に成り立っています。
イルカショー等が行われる限り、イルカの生体販売ビジネスが続きます。
イルカは自然の中で生きるべきです。
人間の娯楽の為に、イルカの家族は捕らえられ,引き裂かれ、イルカ展示に向かないイルカは赤ちゃんであろうとも殺されます。
全ては人間の刹那の娯楽の為にです。
イルカ猟で追いかけられる時、イルカは弱いものを庇うように群れで泳ぎます。イルカにも仲間を思う気持ち、母を慕う気持ち、子を思う気持ち、悲しむ気持ちがあることはご承知のことと存じます。
必死に泳いでも人間の魔の手からは逃げられません。
人間の私利私欲のために怖い怖い思いをして苦しみ殺されてゆきます。生体展示されたイルカもまた苦しみながら生きてゆかねばなりません。
イルカが感情を持つ生き物だと知りながら狭い水槽の中に閉じ込め、薬づけにし、朝で行動をコントロールし、人間の言うことに応じさせる。あなた方は心が痛みませんか?ご家族に「イルカを奴隷にして利用して金儲けしてる」と胸を張って言えますか?
これがあなた方ご自身だとしたら。
イルカ達は精神がズタズタに破壊されています。
世界中で動物の権利が主張される中、日本の動物福祉は大変遅れております。世界的非難を浴びるのは当然のこと。
イルカショー、生体展示等の動物虐待を早急におやめいただきますよう何卒ご検討ください。

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私の心を込めた返信

この手の問い合わせや電話には、100%私が答えます。僕にはぶれない軸があるので、その部分でしっかりと向き合って、話していきたい。議論を重ね、日本の飼育そのものも見直していきたい、と本気で思っています。ということで、僕の返信は以下になります。

お問合せありがとうございます。
壱岐イルカパーク&リゾート代表の高田と申します。

私も元々全くの畑違いからこの施設の運営を行なっていますので、
XXXX様の想いはよくわかりますし、おっしゃることもまさにその通りだと思います。
せっかくなのでしっかりとご回答させていただきますが、
以前からこの手の問合せに対して回答しても何もご返事いただけないことばかりです。
XXXX様とは引き続き繋がりができていけることを願っております。

まず、私もイルカの捕獲は直ちに止めるべきだ、と心から思っています。
現在、弊施設で飼育している子達は和歌山の太地から購入したものです。
太地町ではXXXX様のイメージに程近い環境で、捕獲が続けられています。
その多くは生体販売で、水族館などの施設に販売されています。
最近では中国などの外国への流通が多いようです。
もはや太地町の捕鯨は、文化として食べる<生体販売 になっているのも明白です。

この業界に入り、飼育を学んでいく中で、このような背景について詳しくなるにつれ、片棒を担ぎたくない、という想いに駆られました。
一番の転機はアメリカフロリダ州にある、Dolphin Research Center に出会ったことです。
こちらの施設では、通常の餌を使ったトレーニングだけではなく、
信頼関係構築をベースにしたトレーニング方法、つまり餌に頼らないトレーニングを実践しています。
数十年前にはこの施設に日本から千人単位で視察に入っています。
しかし、日本においてこのトレーニング手法を取り入れた人も施設もありません。
こういうところが、XXXX様の仰る「日本の動物福祉は遅れている」というポイントだろうなと思います。
これは遅れているというより、日本の飼育業界は50年前の世界の流れから独自に進化してきて、完全にガラパゴス化している状態かと思います。
遅れているとかではなく、別物になってしまっているのです。
こういうところを、根本から変えていかないといけないのではないか?と私は思っています。

お時間のある時に、こちらの動画をご覧ください。
少しでも私の想いが伝われば幸いです。
https://www.youtube.com/watch?v=Q9LQ3jQEfZg&t=17s

ということで、弊社は今後一切イルカの購入はいたしません。
いま飼育している4頭のイルカの幸せだけを考え、向き合い、頑張っていきます。

次に、私は「飼育すること」自体もあまり前向きに考えてはいません。
おっしゃる通り、小さなプールや生簀で無理矢理飼っているスタイルは本当にかわいそうだと思います。
ただ、今すでに飼育されているイルカに関しては、絶対的に守るべき存在であると考えます。
ショーをやめてください、飼育をやめてください、と仰る方は数多くいますが、もしもやめたとして、来客が減り、施設が潰れたら、飼われているイルカはどうなるとお思いですか?
人の手から餌を食べる習慣のついたイルカは野生に戻れない、というのは既知の通りです。では、飼えなくなった時、みなさんのような個人や保護団体は保護できますか?

最後に、動物虐待のお話です。
飼っていること=虐待 とは一概には言えません。
ただ、海洋哺乳類を飼育すること自体は、だいぶ無理のある行為だな、とつくづく思います。

割とショーに否定的な皆様も多いですが、ショーの立て付けは僕もあまり好きではないですが、「運動量の確保」という側面では、とても重要です。
「運動量の確保?そんなのそもそも狭いところで飼っているからだ!」と言われますが、すでに飼っているのでそこを言っても仕方ないので、前向きに善後策を考える時ではないでしょうか?
野生に戻せない、狭いところにいる、そんなイルカをどうやって幸せにしてあげられるか、という議論を当たり前にしていきたい、と思います。ですから、ショー=悪ではなく、「イルカが楽しめるショーって、なんだろう?」という思考が必要かな、と思っています。

水槽に閉じ込め、薬漬けにし、餌で行動をコントロールして、という部分は、残念ながら日本のどこの施設もほぼおっしゃる通りだと思います。
狭い水槽は、日本は国土も施設も狭いですから、なかなか大変な問題だと思います。また飼育する上では当然健康管理をしていかないといけないので、薬の投与も致し方ないかな、と。こちらは、良かれと思って、血液検査などができてしまいます。すると血液結果が数字で見えてしまいます。こうなるとどうしても異常(異常と思われる数値)も見られてしまう。
そうすると人間の観点からいくと薬を投与する、ということになるのでしょう。薬漬けかどうかは施設によりますが。投薬が100%悪いとは思いません。適切な量、は薬を投与した方が早くよくなったり、治ったりすることは当たり前にあるからです。ただ!あげすぎは絶対にダメだと思います。
これらの病気の一連の流れの中には、人間のように「ストレス」というファ
クターはほぼ無視されているように感じます。

<ここは返信にはありません>
→ストレスって、原因がわからないことを全部ストレス、って言っている感じがしていて僕も嫌いなのですが、経営においてプログラムを減らしたり、イルカの気持ちになってみる、という視点はほとんどないように感じます。
僕は、「もし自分がこのイルカだったら」といつも思うようにしているのですが、これはトレーナーの社会では良しとされていません。理由は様々ですが、いうても別の生き物だから、同じような感覚が100%あるとは限らないから、わかるのですが、とはいえ、「もしも自分なら」って超大事な気がするんですよね。人でも動物でも相手のことを絶対的にわかったり、理解していることなんてほとんどないわけですから・・・結局、僕は何事も偏らないことかな、と常々思っています。<以上>


この点については、日本の施設は全面的に見直して、是正していかないといけないな、と私も思います。
結局、動物がどう感じているか、どう思っているか、言葉が通じないから本当に難しいのですが、しっかりと心をイルカに向けて、イルカに合わせていくことが大切だなぁ、と思いました。

餌で行動をコントロールする、については、そもそも全ての動物のトレーニング(調教)は、「強化の原理」がベースなので、そう思われても仕方ないと思います。また、多くの専門学校で「トレーナーの本分は100%動物をコントロールすること」と習います。ですから多くのトレーナーやその予備軍は、動物をコントロールしよう!と頑張っています。

そんな中でも弊社のような取り組みにシフトしたり、少なくとも「強要」にはならないように努力はしていると思います。

私は自分が経営して、日々飼育を目の当たりにしながら感じているのは、
トレーナーにとって大事なことは、イルカのやりたいこと、ほしいもの、を察知して、提供してあげられるか、だと思います。
みんな、こんなことを当たり前に考えて、やっていければ最高なんですけどね。現場にいるトレーナーの多くもこのように考えていると思います。ただ、施設の飼育方針はトレーナーや経営方針にも紐づき、担当者の人格にもよるので、相当根深い問題だと思います。

長文になり失礼いたしました。
また何かお考えがあれば、ご連絡ください。

高田



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