国境を越えて生きていこうと思うなら
国連で働きたいんですけど、どうしたらいいですか?
食い詰めれば道は開けるよ、という線で応答すると、そこで何かを感じ取ってくれて、だいたい話はそらせる。が、中には、そこで引き下がらない猛者もいる。
お前、終わってるよ、とは言わない。それでも、全身全霊で爆発を抑えて聞いている。
何とか、この場を収拾させなければいけない。沸騰した脳みそがフリーズ寸前になっている。この場を鎮火させたい一心で、一言しぼり出す。
色々ある。
「ちょっと次のアポがあるので」と、強ばった顔に気づかれないように(自分的にはニコッとしながら)、そそっと小走りっぽく退散する。
いや、分かります、分かりますよ、何もかも勘違いしてるってことは。きっと色んな人に同じことを訊いただろうと思う。国際公務員になるための手引きみたいな本も読んだだろう。分かります、肝心なことは誰も教えてくれない、何も書いてない。
どうしてそうなるのか?
知らんがな。
だから、書くよ。書きますよ、面白くもなんともないハウツー本みたいなことから、国際公務員の日常生活みたいな興ざめ話まで。机上の空論から現場の勿論まで行ってみましょう。
ずーっと昔、90年代後半、ダイヤルアップ接続の全盛期にブログやメルマガに国際援助の現場について、私はかなりたくさん書いたと思います。私はブログ第一世代でした。読んだ人はほとんどいないんじゃないかというくらい、インターネットそのものの浸透率は低かったと思います。そもそもSNSというコンセプトもまだ存在しない時代です。
2001年の9・11テロがあって突然世界の中心に躍り出たアフガニスタンについて、日本のメディアはいっせいに情報を求めたことがありました。その頃までには、アフガニスタンについて私が書いたものがウェブ空間に散在していました。それを見つけた出版社やテレビ局が一斉にコンタクトしてきて、私はいくつかのテレビに出て、NHKでは特別番組が作られました。
出版社6社と会って、その中の一社を私は選び、私が書いたものがいくつかまとめて出版されました。それが『カブールノート〜戦争しか知らない子どもたち』です。今は絶版で、中古がアマゾンで時々1円で出てたり、2000円で出てたりします。どうして、そんなに違う値段になるのかはさっぱり分かりません。
出版後も『カブールノート』は一つのサイトにまとめて出ていました。つまり、無料で読むこともできたのですが、今はサイト自体が消滅してどこでも読めません。自分のコンピュータにも、そんな古いデータがあるわけなく、古い外付けHDのどこかにないかと今、探しているところです。
『カブールノート』に収められたもの以外にも、国際援助の現場でのプロジェクト実施の葛藤や、単なる戦場での思索などもかなり大量に書きました。その頃の気負いや不安定な情緒や若気の至り感はもう取り戻せない。少しずつそれらを集めて一極集中させる場所として、noteを選びました。
国境を越えて生きていこうと思うなら、知っておいた方がいいだろうと思うことを自分を一つのデータとして残していこうと思ってます。
[後記]
その後、散逸していた原稿を回収して、関連原稿も含めて、大幅増補版を出版しました(6割増量)。
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