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【詩】18・月に吠える

満ち欠けをする月は
古来より女性の象徴
潮の満ち引きも
女性の多産も
植物の生育も
宇宙の周期に関わることは皆
月が司ってきた

姿を変える月は霊力を持ち
崇拝の対象になった
月は万物の成長の秘密を握っており
生命の源である水を統御している

世界には月と結びつけられる女神が多い
イシス
ダイアナ
アルテミス
デメーテル
ヘカテー……

ギリシャやローマでは
満ち欠けする月の中に
女神の三つの様相を見た
処女と母と老女の姿だ
アルテミスは潔癖な処女性を
デメーテルは産み育てる母性を
ヘカテーは知恵と力を持つ老女の層を
表しているとされるようだ

錬金術においては
月は宇宙の女性原理であり
女性的なパワーの全てを象徴する
大いなる男性原理と女性原理の統合は
王と王妃の結婚にシンボライズされた
王すなわち太陽は
王妃すなわち月と結合し
プリア・マテリアを生みだす

錬金術的結婚で生まれた
賢者の石は
月の光と太陽の光によって
浄化されるだろう

一方で月は魔術や狂気とも
結びつけられてきた
18番・月のタロットカードは
どことなく不穏な気配を漂わせる
月に向かって吠える犬と狼
手前には水辺から這い出すザリガニ
背景の二本の塔は
2番の女教皇の面影を忍ばせる

このカードにおいては月を
鬱屈した気分を支配する星として見る
満月の光は人の心を狂わせる
月の暗黒面は冥府の入り口だ
女教皇は月より遣わされた存在で
潜在意識を目覚めさせるだろう

月は幻想や夢を司っている
銀色の静謐な月光に照らされて
世界はいつも見ている姿とは
別の層をひらくだろう
水から這い上がってくる甲殻類は
潜在意識に沈んでいた感情が
その姿を顕にしようとしているところだ

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