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『ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から』(三井誠 著 光文社 2019)読書感想文

コロナウイルス感染症の感染者がずいぶんと減ってきている。行動制限も緩和の方向に動いている。振り返えれば、コロナウイルス感染症に関する科学者側からの発信に不信感が募った時期もあった。科学技術が発展し、社会に浸透している現代においても、科学は不信がられる存在であり続けている。

この本は、アメリカにおける科学不信の現場について描かれているルポルタージュだ。

アメリカではキリスト教信仰の関係で、ダーウィンの進化論を教えない学校もあるそうだ。科学の視点で見れば常識だとされることを常識としない社会があることに、僕は驚いた。

他方でこの『ルポ』には、“政治と科学”の問題としての地球温暖化も描かれている。地球温暖化問題は政治利用のためにでっち上げられた問題だと不信感を抱いている人々を、著者の三井氏は取材している。

「人は、それほど科学的に物事を判断しているわけではない」

『ルポ』に通底する三井氏からのメッセージに、「僕はどうだ?」と自問を繰り返した。あなたはどうだろうか?

この『ルポ』と共に、自らの中にある宗教観や政治観、そして、科学技術観のせめぎ合いについて見つめ直すことができる。そんな見つめ直しは、きっと、社会における科学技術について考える土台になるかもしれない。

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