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『コペンハーゲン』(マイケル・フレイン 著・小田島恒志 訳 早川書房 2010)読書感想文

この本に登場するのはニールス・ボーア、ヴェルナー・ハイゼンベルクという二人の物理学者とボーアの妻であるマルグレーテの三人のみである。そして、この本には彼らが原爆開発競争の最中、コペンハーゲンで交わしたとされる会話を史実に基づいて描いた戯曲が記されている。

三人のやり取りを通して、量子力学の黎明から原爆開発に至るまでのスリリングな内容がじんじんと伝わってくる。三人のやり取りは勢いが良く、彼らのつくり出す空気感に引き込まれていく。

物理学を学んだ者であれば、会話に登場する様々な物理現象や物理学者の名前も相まってゾクゾクするような感覚も味わえる。物理学を学んでいなくても、科学用語の飛び交いの中に見え隠れする原子爆弾の存在から、科学と戦争との関わりに思いを馳せることができる。

こんな風に科学を伝えることもできるんだ、と感動したことを覚えている。戯曲のような要素を文章に入れ込むこともサイエンスライティングに活用できるのではないか、とも考えた。

さて、実はこの戯曲、日本でも上演されたことがある。最近では、2016年に上演された。

僕は当時、新潟大学の大学院生だったのが、これを観るためだけに、東京まで足を運んだ。観終わって、興奮冷めやらぬまま、新潟行きの新幹線に乗り込んだことを覚えている。

再演してほしいなぁ。

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