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大学における合理的配慮に関するメモ

九州大学に勤めていた頃、合理的配慮に関するセミナーを企画したり、関連セミナーに参加したりしていた。今回のnote記事はそれらで学んだことに関するメモだ。

合理的配慮(reasonable accommodation)の広がりは、2006年の「障害者権利条約」で取り上げられた「障害の社会モデル」に端を発する。これは障害の原因は、個人の機能障害や能力障害ではなく、「社会的障壁」の存在にあるという考え方である。

そして、社会的障壁を除去するための適当な変更や調整(=合理的配慮)を提供することは社会の責務だと考えられるようになった。したがって、合理的配慮の不提供も「差別」だとされる。

合理的配慮に関する法整備も進められた。2016年には「障害者差別解消法」が施行され、大学においても合理的配慮の提供が法的義務ないし努力義務となった。以下のページには関連のパンフレット等が公開されている。

それに伴って、各大学での体制づくりが進んでいる。例えば、九州大学においても「インクルージョン支援推進室」が核となり、合理的配慮の提供が進められている。

「第4次障害者基本計画(平成30年度~令和4年度)」でも「基本的な方向」の一つとして「教育の振興」が据えられている。その中の「高等教育における障害学生支援の推進」を見ると、以下のような記述がある。

大学等が提供する様々な機会において、障害のある学生が障害のない学生と平等に参加できるよう、授業等における情報保障やコミュニケーション上の配慮、教科書・教材に関する配慮等及び施設のバリアフリー化を促進する。

第4次障害者基本計画(平成30年度~令和4年度)

障害のある学生の支援について理解促進・普及啓発を行うため、その基礎となる調査研究や様々な機会を通じた情報提供、教職員に対する研修等の充実を図る。

第4次障害者基本計画(平成30年度~令和4年度)

このように、大学教育においても、合理的配慮の提供やその理解促進が求められている。冒頭にも書いた学生支援セミナーで、横田晋務先生は合理的配慮における「2つの合理性」として、以下の二つを挙げていた。

  • 障害特性と配慮内容の合理性

  • 配慮内容と教育の本質、過重な負担との合理性

「障害特性と配慮内容の合理性」を模索するためには、学生と教職員の「建設的対話」が不可欠となる。この建設的対話をスムーズに進めるための、組織整備が求められる。

また、「配慮内容と教育の本質、過重な負担との合理性」は、大学教育において特に気にかけねばいけない点だろう。合理的配慮の提供要請があった場合、それに全て応えねばいけないわけではない。例えば、講義の場合、その講義の本質は変えてはならないのである。判断をするために、講義担当者は自身の講義の本質を明確化し、明示することが必要となる。これをしておくことで、先述した建設的対話もスムーズに行うことができる。

合理的配慮は、多様な学生に対し、学びの機会を公平に提供するための方策である。それが推進されることは、大学がよりユニバーサルな教育空間になることにつながるのだと思う。


P. S. 北海道大学に勤めていたときには、北海道大学のアクセシビリティ支援室の皆さんにインタビュー取材をする機会をもらった。以下はそのときのインタビュー記事である。

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