見出し画像

『集中力はいらない』(森博嗣 著 SBクリエイティブ 2018)読書感想文

この本は研究者(大学教員)であった森博嗣氏が考える思考法についての新書だ。様々なこと考え(思考を「分散」させ)、何らの着想を得て、その思考を「発散」させることの大切さが説かれている。

「研究者」というと何か一つのことを集中して考えているイメージもあるが、いつもそうではない。特に、新しい研究テーマを探っている段階や、何か解決したい課題の突破口を探っているときには、ことさら思考を「分散」させている(だろう)。森氏も研究者時代を以下のように回顧している。

一直線の道を進んでいる感覚はまるでなく、頭の中を彷徨っている、ぐるぐると回っている感じである。

森博嗣『集中力はいらない』 SBクリエイティブ (2018)

さて、集中型の思考は大量生産の工場などで求められる素養といえる。そういった現場での作業において、思考を分散させたりなどしたら、ミスを生む可能性を高めるからだ。しかし一方で、集中型の思考が要される仕事は、今後、コンピューターが担っていくとも予想されている。

そこで、「分散」や「発散」の思考が重宝されるようになる。

ときどき発想し、全然関係ないものに着想し、試したり、やり直してみたりすること、あるいは、より多数の視点から目配りができることなどの能力が、これからは求められるようになるだろう。

森博嗣『集中力はいらない』 SBクリエイティブ (2018)

では、「分散」もしくは「発散」の思考をするにはどうすれば良いのか。読者としては、アドバイスがほしくなる。

まずは、リラックスして、考え方を柔軟にしていく。ものの見方から改める。もし、行動に移すのならば、毎日コンスタントに、少しずつ進める。これも、分散型の鉄則である。一つに絞らず、なんでも、いくつでも始めれば良い。達成することだけが目標ではない。

森博嗣『集中力はいらない』 SBクリエイティブ (2018)

読了して、あることを思い出した。お世話になっている先生に、「常にアンテナを張っておくことが大切」と言われたことだ。この言葉は、今でも大切に心に置いている。そして、この言葉の前提には、思考を「分散」させておくことがあるのだと気付いた。つまり、「分散」させた思考を「発散」させるチャンスを逃さないために、「常にアンテナを張っておく」のだ。

気楽に思考を「分散」させても良いのかもしれない。「達成することだけが目標ではない」のだから。

この記事が参加している募集

#読書感想文

189,141件

#最近の学び

181,438件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?