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61歳の岡本吉起が考える、クリエイター人生の最終章

ぼくにとって、ゲームとはなにか。この問いはすごく難しい。

端的に言えば、お仕事です。

そしてぼくは、このお仕事を介して成長させてもらい、ぼくという人間を世の中に出ていくことができました。ユーザーとコミュニケーションをとるためのツールにもなりましたし、財を成す道具にもなりました。

ほかにも、ほんとうにたくさんのものをゲームは与えてくれました。

だからこそ、恩返しがしたい。それができて、ゲームクリエイター人生の畳み方、つまり引退があると考えています。今回は、ぼくが考えるクリエイターの最終章について、語ってみます。

日本円と連動したWeb3ゲームを開発中

ぼくが還暦を超えながらも、Web3というゲームの「新大陸」に挑戦したのは、Fracta(フラクタ)の加藤崇さんとの出会い、そしてその想いや社会課題の解決に共感したことがきっかけでした。

その加藤さんから、光栄なことに「このゲーム(『TEKKON』)をおもしろくしてください!」と声をかけていただいたこと、そして携帯ゲームの時の「出遅れ」の悔しい経験をくり返さず、今度こそ業界全体を正しい方向に導きたい想いが、ぼくの原動力となりました。

そしていま、『TEKKON』とは別にあらたなWeb3の取り組みの一環として、ブロックチェーンを使ったプラットフォームづくりも始めています。複数のゲームタイトルで遊べて、NFT販売をしながらも仮想通貨ではなく、クレジットカード決済ができる日本円との連動。今年、段階的にタイトルをリリースしていく予定です。

このあたりについては、また次回以降でお話しさせてください。Web3に関しての取り組みや情報発信は、どんどん続けていくつもりです。

「……え、新しい挑戦の話とか、どこが最終章なんだよ!? 」「引退する気あるのか!?」そう思いますか?(笑)。いや、まぁここだけ聞くとそうなんですけど、ちゃんと考えてるんですよ。

デジタル→アナログと引退は2段階で

ぼくはいま61歳。Web3をはじめ何年か先まではお仕事を続けます。ただし、途中どこかで新規案件はもう受けない、いま受けてる案件が終わったら引退、と正式にアナウンスするつもりです。

引退は、2段階で考えています。まずはデジタル(テレビゲーム)を引退し、次にアナログ(ボードゲーム)から引退することで、完全に幕を下ろす。しっかり後進の育成をしてから辞めたいので具体的な時期は未定ながら、周囲から「まだやってくださいよ!」と惜しまれるうちに辞めることだけは決めています。

運転免許の返納は70歳ですると決めてるので、そこまでには絶対引退しますけどね。66歳ぐらいでデジタルをやめて、68歳ぐらいでアナログからも抜ける感じかなぁ。

「生涯クリエイターでは、ないのですか?」そう言ってくださる人もいるかもしれません。70歳近くまでやれば、それはもう実質ほぼ生涯クリエイターでしょう(笑)。

会社員だって65歳までやれば生涯やってることになるわけですし。50年もやって、まぁまぁ結果も出したわけですから。むしろ長ぇわと思いますよ、もっと早く引退するつもりだったのになぁ。

ボードゲームはクリエイター育成に最適

この連載では書いてきませんでしたが、ぼくはボードゲームも大好きで、真剣に取り組んでいます。今年クラウドファンディングで400%の目標金額を達成しようと考えていて、いますごく力を入れてるんですよ。

なぜ、ボードゲームか。

ずばり、ゲームクリエイターの育成につながるからです。

テレビゲームの場合だと、「残機はあと2機」「こうなったらゲームオーバー」等、決まったルールの中でしか遊べません。ボードゲームの場合は、未完成な部分のルールが多いんですね。

以前のnoteで、「小さい子と一緒に鬼ごっこをしても、みんなが平等に楽しめるようなルールを常に考えながら遊んでいた少年時代」を紹介しました。これこそが、ゲームクリエイターになるためのトレーニングとなったわけです。

既存の遊びのルールに対して、「変えてもいいところがある」「変えたらもっとみんなが楽しめるぞ」とアレンジすることが、クリエイターの第一歩です。

その遊びの「おもしろさ」をどこで演出するのか、どういう「ゲームバランス」をとれば全員が楽しめるのか。どこに着目して変えるかで、違うゲームになりうるんですよ。

ルールがガチガチのテレビゲームだと、もうそれ以上触る余白がない。だから、いくら好きで遊び続けても、クリエイティビティみたいなものは芽生えないというのがぼくの考えなんです。

そんなわけで、まずは10タイトルぐらいのボードゲームを、連続でリリースしていく予定です。大事なのはその個数ではなく、世界で通用するボードゲームを出せるかどうか。

先ほど紹介した『ドラゴン探偵団』は、1発目の試し打ちみたいなもの。2本目からは全力でつくっていますし、リリースする順番にもちゃんと戦略があります。楽しみにしていてくださいね。

YouTube、財団、ボードゲームで恩返し

改めて、ぼくのゲームクリエイター人生は、アーケードから始まり、ゲーム業界の歴史全部に関われてきたことはとても幸運でした。ぼく自身が育てられ、財まで成せた。であればこそ、ぼくがゲーム業界に還さなきゃいけないもの、後輩に伝えなきゃいけないものは、たくさんあると思っています。

その1つの方法として続けているのが、YouTubeチャンネル。ここでぼくは、できるかぎりのことを伝えていくつもりです。

2つめは、ぼくが代表理事をしている「日本ゲーム文化振興財団」。ここでゲームクリエイター育成のための金銭的なサポートでお返しをしています。

ボードゲームは、「ゲームクリエイターになるには、こういう路線もあるよ」という1つのルートを証明する位置づけですね。テレビゲームでディレクターになるには相当長い道のりがあるのに対し、ボードゲームなら1人でもつくれる。最初からディレクターなわけですからね。

繰り返しますけど、ぼくはゲーム業界への感謝の気持ちや、残しておかなきゃいけないものがたくさんある。だって、めちゃくちゃ稼がせてもらってますもんね(笑)。全然お返しできてないんですよ。

残された宿題は後継者問題

そんなわけで、ぼくは若い子たちにチャンスを与えたり、一緒にやってくれた子たちにお金をきちんと渡したり、やっておきたいこと・やらなきゃいけないことがたくさんあるので、現役を続けています。

特に大きな宿題は、後継を育成・指名すること。その進捗としては、現状は5%ぐらい。候補生はいっぱいいるものの、手放しで任せられるような人がいる状況でもありません。

任天堂を世界的企業に育て上げた経営者、故山内溥さんが2002年に引退された時、6名の代表取締役が指名されて集団指導体制が開始されたように、複数名に託すやり方もありです。1人に全部託すのは荷が重いところもあるでしょうし、「2代目岡本吉起」というグループとして継いでもらうとかもアリですよね(笑)。ぼくがちゃんと引退するためには、どうにかしないといけない難問なんですよねぇ。

お金目当ての人が去ったここから、Web3ゲームはおもしろくなる

最後に、ぼくが現在進行形で取り組んでいるWeb3ゲームの今後について。

最初はやっぱり投機目的の人が多かったので、フィールドとしては食い荒らされちゃった感じは正直あります。だけど、いまはそういう人は減りました。アメリカのゴールドラッシュ時代を生き残ったのは、金を掘りに行った人たちではなく、金を掘りに行った人たちにデニムを売ったリーバイスだけだった。そんな歴史に似てますね。(笑)

逆に、「荒地を耕してもう一度花を咲かせよう。俺だったらこんな方法で咲かせてみせるぞ」などと考える人たちが、Web3ゲームのつくり手として残っています。

現状をきちんと理解しつつ、この荒地は整えたら価値があると信じている人だけが集っている新大陸。いってみれば、アメリカ大陸を発見して、先住民との交渉とかいろいろありつつ、絶対よくなる! と開拓・開墾した人たちみたいなもんですね。

ちゃんとしたWeb3ゲームがつくられる時代はすぐにくるし、ここから1つのジャンルとして育っていくでしょう。その1発目となるのが、ぼくがつくったゲームであればいいなぁと思っています。

というわけで、今回はここまで。

ようやくいい感じで、新大陸への挑戦を語るnote連載っぽくなってきたんじゃないですかね?(笑)


社会貢献しながらトークンが貯まる、Web3ゲーム『TEKKON』

編集協力/コルクラボギルド(文・ぐみ、編集・平山ゆりの)


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