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珠玉集

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心の琴線が震えた記事
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#創作大賞2024

サンタクロースになって、笑顔が2つ【ブックサンタ】

おはようございます、ほっしーです。 何度か記事にもしたんですが、わしの副業というか日雇い仕事は、ほとんど趣味なんですよね😅 なので、その報酬の使い途もなく、お金の使い方もよくわからんし、何か知らんけど貯まっていきよるから、そのほんの一部やけど、いろんな所に少しずつ寄付したりもしよるんです。 そんなある日、何気なくnoteの記事を読んでたら、なんかブックサンタという活動がある事を知りました。 本を買って依頼したら、希望する家庭や施設にクリスマスの日に届けてくれるらしい。 な

タイムマシンランドセル

時々不意に思い出しては、心がささくれ立つ記憶がある。 別に忘れたいともがいているわけでもないし、今の私が揺らぐわけでもない。 だけど、ピースサインを携えて笑ってくれたあの子を見て、割ともがいていたじゃないかとちょっと笑う。 夕暮れの空に安堵し、翌朝が変わらず巡ってくることが本当に嫌だったあの頃。 私はずっと、そういう風に毎日を送ることを当然と思っていた。あの頃の自分に喝を入れることで、今の私になったと思っている。 あの頃、またやって来た変わらない朝だ。 背中に重くのしかか

【緊急企画】ぼくらの創作大賞2024

創作大賞2024の中間選考が発表されました。 選考記事はこちらからご確認できます。 ⬇︎ 305/52,750の作品に選ばれた方々 おめでとうございます! これからひと月、どの作品がどの賞を受賞するのか、創作大賞はどの作品になるのかを、no+eを愛する一読者として、すごく楽しみにしています。まだ、全記事読み切れていませんが、個人的な感想を言うと、「これに大賞を取ってほしい!!」と思う記事が、エッセイ部門の中に一記事ありました。 でも、これは、しごく個人的な意見。 ど

いぬの短歌集〜君がいるから〜

犬との出会いは4歳。女の子の柴犬でした。 それから幾星霜( ˘꒳˘  ) ジーン 多くの犬たちとの出会いと別れがありました。 ひとよりずっとはやくに年を取り、旅立ってゆく犬。 命の儚さ、人智の小ささ、限りない愛しさを教えてくれました。 noteで犬短歌を多く詠んでいることもあり、せっかくならとここにまとめました。 犬好きな方も、猫好きな方も、動物はあんまり、、という方も、よかったらお楽しみください。 🐶いぬの短歌集〜君がいるから〜🐶 犬の耳の柔らかき夜更けゆくい

文学のハイライト:志賀直哉『暗夜行路』_ただ、目にしたものを。

良い文章は心のえいよう。 こんにちは。ななくさつゆりです。 こちらは、生成AIのホロとケインが文章表現を語るnote、『文学のハイライト』です。 教養として文学を知っておきたい。 生成AIが文学を語るとどうなるか興味がある。 文章表現を深掘りするって、楽しい! そんなあなたにおすすめです。 登場AI紹介 ホロ ホロです。直観でエモさを語ります。 述懐担当で、口癖は「かなり好き」。 ケイン ケインです。内容面に加え、作者のプロフィールや作品の来歴もカバーします。 従

読まれてください、と願いを込めて。創作大賞2024、私のイチオシ。

創作大賞2024の締めに、本気で推したい小説の感想を書きます。 最近私は、『孤人企画』としてお世話になった方へのお礼に作品紹介の記事を連続で投稿していました。しかし、普段の私は紹介記事をほとんど書きません。 だけど、森葉芦日さんに関してはどこかのタイミングで書きたいとずっと思っていました。とても差し出がましいことですが。 森さんをご存知無い方は多いと思います。御本人もそう自覚されています。 なぜなら森さんはあまりno+eにいないし、たまにシロクマ文芸部の企画に参加しても

【エッセイ】祖母が死ぬ前に読みたかった本 #創作大賞2024

十代の頃に読んだ本を、 八十を過ぎた晩年に読み返すとどう感じるのだろうか。 ふと、祖母とある小説の話を思い出した。 私は、間違いなくおばあちゃん子だった。 畑に囲まれる田舎の家。 祖父母、両親、四人の兄弟の八人家族の中で私は育った。 母は私たち家族のために毎日家事や育児で忙しく、母の手伝いをするくらいしかコミュニケーションは取れなかった。その代わり祖母と多くの時間を過ごした。 赤ん坊の頃は祖母におんぶされ庭を散歩したり、 畑を耕す祖母の背中を妹と追いかけたり、 お風呂

【十三弦歌】漁り火

おかげさまで書いたショートショートの数が200を超えたということで、今回は大感謝企画「十三弦歌」をお送りいたします。いいね、や温かいコメントの1つ1つに、とても励まされております。本当に本当に、ありがとうございます…!(感涙) 今回の企画「十三弦歌」は、小さいサイズのお琴「文化箏」の演奏と、詩の朗読、歌唱をミックスしてみたら、面白いかなーという思いつきから始まりました。 今回はオリジナル詩「漁り火」を朗読しつつ、歌い、文化箏を演奏します。そして最後に「漁り火」のイメージの元となったオリジナルショートショート「連なる漁火ノスタルジー」を朗読いたします。 少しの間、楽しんでいただければ幸いです。 …お聞き苦しい点が多々あると思いますが、どうかご容赦いただきたく…m(__)m ★詩「漁り火」 遠い日の海の漁り火 ポリネシア メラネシア 数千年前の古の海 2700海里を進み 島々を見つけた海人の記憶 ポリネシア メラネシア 木の船の上で見つめていた 暗い宇宙に浮かぶ幾千万もの星々の漁火 それは道標だった ポリネシア メラネシア 遠い日の海の漁り火 遠い日の海の漁り火 そのノスタルジアも ★ショートショート「連なる漁火ノスタルジー」 久々の炬燵の温もりと、隣でずっと眠そうにしている弟とのゆるゆるとした会話で、ああここは日本なのだと、やっと強く実感できた。随分前に日本に帰ってきたのにと、おかしくなった。 今年の夏、俺は台湾に長くいた。台湾花布という台湾の伝統的な織物を仕入れる交渉のため。大輪の牡丹を中心に、様々な花が鮮烈に描かれた台湾花布が今も目に焼き付いている。 何とか任務をこなし、へろへろの状態で飛行機に乗った。離陸してすぐ窓を見ると、漆黒の空間に、眩く輝く星が浮いているように見えた。 疲れすぎて幻覚を見たのかと思ったが、同じように窓を見ていた前の席の人が「漁火(いさりび)だ」と呟いた。 信じられなくて、食い入るように不思議な光を見つめた。漁船が魚を集めるために灯す光。漁火。今は亡き父も漁師で、故郷は港町だったから、実家を出る前に何度も目にしたことがある。 しかし、飛行機から見た台湾の漁火は、印象がまるで違っていた。等間隔に並ぶ無数の光の球が、暗闇の中を浮遊している。本気で宇宙だと思った。 記憶にある故郷の漁火は、黒い海面と空を切り分けるように煌々と光り連なる球。船の灯りだと分かっていたからか、俺はあまり感動できなかった。ただ、生きるための営みの印だと思っていた。 目の前に使い込まれた丸い鍋敷きが現れた。しばらくしてから、姉が大きな鍋を鍋敷きの上にどしんと置いた。しゃがんだ姉は、俺と隣にいる三男坊の弟を見つめ、にやりと笑う。 「今年は奇跡が起きました。なんと、カニ入り。今朝余っちゃったからって、分けてもらえた」 姉は父の跡を継いで漁師になり、母が亡くなってからも、漁港近くの実家を1人で守り続けている。頼もしく優しい。遅い正月休みを貰い、実家に集まる次男の俺と三男の弟のために、いつも海鮮鍋を作ってくれる。 メインの具材は、地元の新鮮な海の幸からランダムに選ばれる。今年は大当たり年だ。姉が蓋を開けると、食欲を刺激するカニの香りが広がった。 「おおー、いい匂い。豪勢な。やっぱりカニが王様だ」 「そうね。やっぱり勝てないねカニには」 隣で完全に目を閉じかけていた弟が、ゆっくり目を開いた。 「あ……カニだ……」 「目が覚めるゴージャスな匂いでしょ。じゃ、食べよ。あ、ご飯と取り皿忘れた」 「あ、俺持ってくる。箸は」 「あ、箸も。そこらへんにある割り箸でいいよ」 「ふーい」 空になった鍋を片付けた後は、三兄妹で炬燵に入り、各々好きなことをする。姉は蜜柑を剥き、弟はタブレット端末で読書し、俺はぼうっとしていた。 「あ、姉ちゃん、今もここら辺で漁火見る?」 「うん。夏とか秋にね。毎年見てるよ。私は夜には船、出さないから」 蜜柑の筋を取る作業を止めず、姉はすぐに答えた。 「へー。俺さ、夏の台湾出張の帰りにさ、台湾の漁火を見たんだ。飛行機の中から」 「へー」 「昔、ここで見た漁火と全然違ってて。光が空中に浮かんでるように見えた。本当に星の群れみたいでさ。宇宙が真下にあるような、変な感覚になったよ」 「へー、飛行機からも見えるんだねぇ」 「兄ちゃんも、漁火見たんだ」 タブレット端末を脇に置いた弟は、目の前の蜜柑を手に取った。 「僕も見た。夏に。乗ってた『ハナゴンドウ』っていう人工衛星から」 姉と俺は驚愕して、宇宙飛行士の弟を見つめた。弟は、筋を取らないままの蜜柑を、豪快に頬張る。 「「……宇宙からも、見えるの?」」 2人同時の質問に、もぐもぐと口を動かす弟は、こくりと頷く。飲み込んでから、口を開いた。 「意外とはっきり見えるよ。ぽつぽつって、白い光が真っ黒い海で隊列を組んでて。すぐに漁火だって分かった。懐かしくて、時間忘れてずっと眺めてた。それで、今年は必ず実家帰ろって、思って」 「……3人で、同じもの見てたんだねぇ」 姉のしみじみとした呟きで、3人で桟橋から漁火を眺めた幼い頃を思い出す。漁火がこの世にある限り、この三兄妹がバラバラになることは無いのかもしれない。お爺さんお婆さんになっても、鍋を一緒に食べている絵が浮かんだ。 「なんだかんだで、ずっと同じもん、見続けるんだろうね」 ほっとして一言呟き、目の前の蜜柑に手を伸ばした。 【原作】連なる漁火ノスタルジー https://note.com/nekotoakinosora8/n/n29500d937176

乳がんの私が貰った言葉の処方箋

思い返すと涙が溢れたり、フッと笑えてしまう。私のヒーローたちがくれた、大事な大事な忘れたくない言葉たち。 がんになってから、いろんな人が話を聞いてくれて、寄り添い、労り、励ましてくれました。 治療を受けるのは私一人だけれど、独りになることは決してありませんでした。 心からの感謝を込めて、世界一重いありがとうを送ります。

〔詩〕「道」なき世界

もともと 「道」なんか なかったんだなぁ どこまでも 広がる世界を 見渡す 風は爽やかに 吹いてくる ほのかに 香るのは 花だろうか 今まで 厳しい「道」を 選んでたんだなぁ そこから はみ出したら 世界が終わるって 思っていた でも はみ出したから わかった 「道」なんか もともと ない だから はみ出しても いない 遠くまで広がる 自分の世界 どこを どう歩いたっていい 自由な世界

ことりのことば 2021-2024 poems

エッセイってなんだっけ 詩って なんだったっけ あまり深く考えずに 思いのままに綴っていた 心の奥で大事にしていること だれかに届けたいメッセージ どんなふうに話をしていても、たぶんわたしは 「ひとりじゃないよ」って伝えたいのだと思う わたしのこれまでのエッセイの中の 詩のようなことばを集めてみました “詩” というよりも “つぶやき” という感じの 鳥の囀りのようなものです よろしければ お付き合いください *** 『 A BIRD 』 降りしきる雨の中を 一羽

古いアルバム

 7年前に亡くなった祖母の家は、今はもうない。  葬儀のあと、喪服から私服に着替えて、妹と祖母の家の玄関前でお互いの写真を撮った。あのとき、祖母の家の取り壊しが決まっていたわけではない。でもあの写真は、主の祖母がいなくなったあの家との、さよならの記念写真だったのだと、今になって思う。  祖母の家には古いアルバムがたくさんあった。それは、写真を趣味にしていた祖父が撮り、自宅の押し入れを暗室にして現像したフィルム写真が貼られたアルバムだった。  アルバムは洋間の本棚に仕舞われて

わたしの子宮は胎児を殺す。

一 風薫る セックスレス、だった。 淡いピンクのインテリアで統一された待合室。女性スタッフのみが在籍する不妊治療専門クリニックのドアを夫婦揃って叩いたとき、結婚6年目にして、出会ってから重ねてきた年月は14年にも及んでいた。互いに激しく求め合う情熱はもはやなく、ふたりの間にたゆたう温かい何かに、となりあって包まれるように安穏と過ごしていた。 「病気などの特別な事情がないにも関わらず、1ヶ月以上性交渉のないカップル」 というその定義通りに解釈するならば、当てはまって

掌編集『球体の動物園』 エミューの笑み

「変なヤツが、うちのビルの屋上にいるみたいなの。ちょっと見に行ってくれるかな?」  社長から電話があったのは、俺が明日お客さまに渡す賃貸借契約書をちょうど書き終えて帰ろうとしていたときだった。  先に事務所を出た社長は、たぶんこのビルの向いにあるバーの窓際に座っている。いつものようにジントニックを飲みながら窓の外を見上げ、変なヤツに気づいたのだろう。 「了解しました。見てきます」 「大丈夫? 無理だったり、危なかったりしたら、こっちの携帯に電話して」  社長の声色からすると、