炎節の頃が過ぎたら
エアコンのないドミトリーで汗まみれになって目が覚める。
水着の上にラッシュガードをはおって海へ向かう。ビーチまでは徒歩5分。ひと泳ぎしてゲストハウスに戻り、シャワーを浴びる。
リビングでは、何人かの長期滞在者が思い思いにくつろいでいた。
秋庭さんが顔を上げて「今日バイト?」と言う。
「休み」
「今から高良行くけど、行かへん?」
「行く!」
ビーサンをつっかけて、秋庭さんと並んで歩く。
アスファルトに陽炎が立ち昇っている。
夏真っ盛り。つまりは、私がここに来てもう半年になる。
「どうした?」
「夏だなと思って」
「今さらやな」
高良で大盛りの沖縄そばを食べて、また秋庭さんと並んでゲストハウスへ帰る。
アスファルトには相変わらずの陽炎。
「……そろそろ帰らんでええの?」秋庭さんが言う。
「どこに?」
「家に」
「……今、帰ってるじゃん」
夏が終わったら、帰るよ。
ゲストハウスは夜中に発つと決めている。
秋庭さんに見つからないように。
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