ジョバンニの食卓1 しあわせ
幸せについて、考えてみる。
リビングのソファで眠りこけている陸生(りくお)の、そのおへその下に数本ちろりと生えた情けない毛を引っ張ってみたりしながら。
「いちばんの幸いは、ぼくがここにいることだ」
そう言ったのは、『銀河鉄道の夜』のジョバンニだ。
『銀河鉄道の夜』の絵本は小さい頃、何度も何度も広治(こうじ)が読み聞かせてくれた。ざらざらした画用紙に水彩絵の具で描かれた、手作りの絵本。
主人公のジョバンニは「いちばんの幸い」を探して親友のカムパネルラと銀河鉄道に乗る。