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飢餓の要因に政治の問題がある?政治汚職と飢餓問題の関係について

初めに一つの事実を確認します。

世界各国を見たときに、飢餓と政治汚職には、明確な相関があります。

■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、96%以上の国々が、慢性的飢餓問題を抱えています。
■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、80%以上の国々が、「深刻な」慢性的飢餓問題を抱えています。


政治汚職がなぜ飢餓につながるのか(因果関係)については、以下の観点を含めて次回以降に考えてみます。

①量の不足
②流通の不備
③低所得の継続

この記事では、政治汚職と飢餓問題の「事実関係」について整理します。

*援助だけでは不十分、という過去記事もご参照ください。
以前のnote:食料と水の不足の問題に、なぜ政治なのか?援助をすれば済む話ではない理由


政治汚職、飢餓問題、情勢不安の考え方について

■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、96%以上の国々が、慢性的飢餓問題を抱えています。
■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、80%以上の国々が、「深刻な」慢性的飢餓問題を抱えています。

まずに上記に使用したデータの引用元ですが、以下の通りです。

政治汚職の現状認識については、Transparency International(TI)が2020年に発表しているCPI(Corruption Perceptions Index:腐敗認識指数)を参照しました。
出典:https://www.transparency.org/en/cpi/2020/index/gnq

飢餓問題の現状認識については、World Food Programme(WFP)が2020年に発表しているハンガーマップを参照しました。
出典:https://ja.wfp.org/publications/hankamatsufu-2020

情勢不安の現状認識については、外務省の海外安全情報(2021年10月時点)を参照しました。
出典:https://www.anzen.mofa.go.jp/riskmap/index.html


政治汚職について

まず「政治汚職が一番深刻な30カ国」については、TIのCPIにおいての最下位30カ国としています。

■ワーストランキング
ランク 国名
1           ソマリア
2           南スーダン
3           シリア
4           イエメン
5           ベネズエラ
6           スーダン
7           ギニア
8           リビア
9           北朝鮮
10          コンゴ民主共和国
11           ハイチ
12           アフガニスタン
13           ギニアビサウ
14           トルクメニスタン
15           コンゴ共和国
16           ブルンジ
17           イラク
18           チャド
19           カンボジア
20           エリトリア
21           コモロス
22           ニカラグア
23           ジンバブエ
24           ホンジュラス
25           マダガスカル
26           タジキスタン
27           カメルーン
28           モザンビーク
29           ナイジェリア
30           グアテマラ

この30カ国について、WFPのハンガーマップを用いて飢餓レベルを調べました。


飢餓問題について

WFPのハンガーマップは、一つの国における飢餓人口(正確には栄養不足人口)の割合が6段階で分けられているため、軽度な状況から順に、以下のレベル分けをしました。

レベル   飢餓人口
1           2.5%未満
2           2.5%-4.9%
3              5%-14.9%
4            15%-24.9%
5            25%-34.9%
6            35%以上

なお、本記事の冒頭の数値(以下に再掲)は、飢餓レベル3以上の国々を「慢性的飢餓問題」がある国として数えています。また、飢餓レベル4以上の国々を「深刻な慢性的飢餓問題」がある国として数えています。

■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、96%以上の国々が、慢性的飢餓問題を抱えています。
■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、80%以上の国々が、「深刻な」慢性的飢餓問題を抱えています。


■情勢不安について

また同じくこの30カ国について、日本の外務省の海外安全情報を用いて情勢不安のレベルを調べました。軽度な状況から順に、各レベルには以下のような定義が与えられています。

「レベル1:十分注意してください。」
その国・地域への渡航,滞在に当たって危険を避けていただくため特別な注意が必要です。

「レベル2:不要不急の渡航は止めてください。」
その国・地域への不要不急の渡航は止めてください。渡航する場合には特別な注意を払うとともに,十分な安全対策をとってください。

「レベル3:渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」
その国・地域への渡航は,どのような目的であれ止めてください。(場合によっては,現地に滞在している日本人の方々に対して退避の可能性や準備を促すメッセージを含むことがあります。)

「レベル4:退避してください。渡航は止めてください。(退避勧告)」
その国・地域に滞在している方は滞在地から,安全な国・地域へ退避してください。この状況では,当然のことながら,どのような目的であれ新たな渡航は止めてください。


政治汚職と飢餓問題の関係

さて、政治汚職がワーストの30カ国について状況を整理すると、以下の通りでした。
・飢餓レベル1(2.5%未満の人口が飢餓)が1カ国
・飢餓レベル3(5%-14.9%の人口が飢餓)が5カ国
・飢餓レベル4(15%-24.9%の人口が飢餓)が3カ国
・飢餓レベル5(25%-34.9%の人口が飢餓)が4カ国
・飢餓レベル6(35%以上の人口が飢餓)が4カ国
・飢餓データが2020年にない国が13カ国

つまり飢餓データが取れている国においては、1カ国を除いては、国民が1億人いれば500万人-1500万人以上の割合のレベルで食糧問題を抱えています。
飢餓データが取れている国において、16/17が「慢性的飢餓問題」がある国(飢餓レベル3以上)であり、11/17が「「深刻な慢性的飢餓問題」がある国(飢餓レベル4以上)です。

では2020年に飢餓データが取れていない13カ国についてはどうでしょうか?

結論としては、13カ国全てが深刻な食料問題を抱えていると考えられます。下記に箇条書きで現状把握をまとめ、その後に結論の理由を書きます。

・3カ国は最新データが2019年で、飢餓レベル5か6(ワーストが6)
・1カ国は最新データが2018年で、飢餓レベル4(ワーストが6)
・1カ国は最新データが2017年で、飢餓レベル5(ワーストが6)
・7カ国は過去5年の飢餓データがなく、政情不安は3以上(ワーストが4)
・1カ国は過去5年の飢餓データがなく、政情不安は1だが、外務省より
「貧困や食料不足が深刻な課題」を持つ国として2020年に報道発表されている(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008663.html)


■直近5年で途中で飢餓データがとれなくなった国について

・3カ国は最新データが2019年で、飢餓レベル5か6(ワーストが6)
・1カ国は最新データが2018年で、飢餓レベル4(ワーストが6)
・1カ国は最新データが2017年で、飢餓レベル5(ワーストが6)

確認ですが、30カ国のリストは政治汚職のワーストランキングから取っています。ですので、2020年の飢餓データが取れていない国は、データを取るどころではない程の治安状態にあるか、データを取る機構があっても、政治の汚職等もあり実質機能していないと考えられます。(もしくはコロナで2020年の値が欠損している。)

この状況の場合、データが取れなかった期間中に自然発生的に飢餓状況が改善するとは考え難いです。(そもそも生産力に見合わない人口増加が自然発生的に起きて今の状態があると考えられるため、悪化していると考えるのが妥当です。)

上記の理由から、以下の国々は過去の飢餓データが取れた時と同等以上の問題を現在も抱えていると考えられます。
・3カ国は最新データが2019年で、飢餓レベル5か6(ワーストが6)
・1カ国は最新データが2018年で、飢餓レベル4(ワーストが6)
・1カ国は最新データが2017年で、飢餓レベル5(ワーストが6)


■直近5年でそもそも飢餓データがとれていない、政情不安がある国について

・7カ国は過去5年の飢餓データがなく、政情不安は3以上(ワーストが4)

30カ国のうち、情勢不安のレベルが3以上(ワーストが4)の国々で、かつ2020年の飢餓データがある国は6カ国ありました。この6カ国の飢餓レベルの平均をとると、4.3(ワーストが6)です。
つまり、政情不安のレベルが高い国は、基本的には飢餓問題も深刻であると考えられます。

ここから、以下の国々は「深刻な」レベル4以上(ワーストが6)の飢餓問題を抱えていると考えられます。
・7カ国は過去5年の飢餓データがなく、政情不安は3以上(ワーストが4)


■データには出ないが飢餓問題がある国について

・1カ国は過去5年の飢餓データがなく、政情不安は1だが、外務省より
「貧困や食料不足が深刻な課題」を持つ国として2020年に報道発表されている(https://www.mofa.go.jp/mofaj/press/release/press4_008663.html)

報道発表によると、この国は2018年時点で飢餓問題にてワースト19位の国ということです。2018年は20カ国以上が飢餓レベル5以上(ワーストが6)であるため、現在も深刻な飢餓問題を抱えていると考えられます。


■政治汚職と飢餓問題の関係の整理

以上より、2020年に飢餓データがない13カ国については、どの国も深刻な飢餓問題を今も抱えていると考えられます。

この13カ国を数字に入れると、29/30(96%以上)が「慢性的飢餓問題」がある国(飢餓レベル3以上)であり、24/30(80%)が「深刻な慢性的飢餓問題」がある国(飢餓レベル4以上)となります。

ここまでが本記事の冒頭の数値(以下に再掲)の根拠です。

■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、96%以上の国々が、慢性的飢餓問題を抱えています。
■政治汚職が一番深刻な30カ国を見たときに、80%以上の国々が、「深刻な」慢性的飢餓問題を抱えています。

なお、この記事の主旨とは少しずれるのですが、深刻な飢餓問題を抱える飢餓レベル4以上の国々は世界に41カ国*あり、そのうちの28カ国はアフリカ大陸の国です。(*2020年のハンガーマップは飢餓データがない国が多いため、2019年のハンガーマップで確認)

28カ国という数字は全世界の14%の国々(28/196)でしかありませんが、深刻な問題の約70%(28/41)がアフリカに集中しています。


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政治汚職が大きな問題となっている国においては、食料問題も深刻である、ということが今回調べた内容から得られた知見です。

食料問題というと、かわいそう、援助してあげないと、という話になりがちです。今ある命を救うことは非常に重要で、そのための援助は意義深いものだと考えますが、一方で、以前の記事にも書いた通り、慈善的な援助のみでは根本的な解決にはなりません。

以前のnote:食料と水の不足の問題に、なぜ政治なのか?援助をすれば済む話ではない理由

政治の問題がその背後に大きな要因として存在するのであれば、政治を改善するか、政治が抱えていて解決できていない問題を民間側から補完する必要があります。

今回は事実関係の整理のみを行いましたが、次回以降に政治汚職と食料問題の因果関係についても考えてみます。

このあたりの分析内容をもとに、民間側からできることを考察し、営利事業の検討に移っていこうと思います。


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もしもあなたが世界の平和に関心があり、共感していただけるのであれば、ぜひコンタクトを頂けると嬉しいです。

考慮が足りない部分があれば、ぜひご指摘ください。違う観点があれば、ぜひ一緒に議論をしてください。不明点があれば、ぜひお尋ねください。
未熟だとか、遠慮とか、要りません。

まだまだ、技術知識が足りません。まだまだ、政治の世界がわかりません。
まだまだ、問題の理解が必要です。まだまだ、行動を取れる人が必要です。

しかし、やる気はある。始まりはいつもそこからです。

壮大な問題に思えるかもしれません。自分で考えて、自分一人ではどうにでもできない問題だとわかり、諦めてしまう。そんな方も多くいらっしゃるようです。

ですが、

一人で無力だと感じるのであれば、同じ思いを持つ人同士で集まってやればいい。問題が大きすぎるのであれば、その問題を分解して、各問題に人が集まって対処すればいい。

そう思っています。

だから、仲間を集める。まずはそこから。

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