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この本との出会いは、とある先輩会計士のFacebook(FB)にて。

その先輩会計士(A先輩とする)とは、1月の会計士交流会で知り合う。

そこでの話で、いちごるが会計士を志すきっかけとなった大学のとある先輩(K先輩とする)とA先輩とが、かつての同僚だということでも意気投合し、実際にこの3月にK先輩たちも含めて会食することに。

その会食で、A先輩からあふれる好奇心(とバイタリティ)は、豊かな人生を歩むお手本のようで、とても参考になった。

そんなA先輩がFBでたまに紹介しているのが、彼自身の読んだ本の数々。中でも、この『ゼロ・トゥ・ワン』はその良さを高く評価している様子であった。

尊敬する人が評価している本ということであれば、読まない手はない!ということで4月に一読した。なるほど、A先輩オススメということだけあって、ココロに響く金言の数々であった。今回2回目を読み終え、そのうちの2つを中心に紹介したい。

※いちごる読書noteシリーズは、いちごるが繰り返し読む価値のある本について、現時点でココロに残ったポイントを紹介しております。(以下の拙い文章に少しでもヒントがありましたら、最低でも1回通読することをおススメします。)


1.ココロに残ったポイント① 「隠れた真実」に光を当てる問い

1点目は、未来をどう捉え、どう見据えるかという点。

筆者が言う、未来についての確かなコト。
それは、

①   未来は「今とは違う」ということ
②(それでいて)未来は「今の世界がもとになっている」ということ

(同書p23参照)

未来をこのように考えると、今までと見方が変わる部分があるかもしれない。

例えば、《①今とは違っていること》が未来なのであれば、ある面においては、明日も、1か月後も、3年後もそして10年後も、「未来とは言えない」のかもしれない。

これはどういうことかというと、(しかもこれまた、「ゴルフ」という切り口でだが)、こういうことだ。

「ゴルフの楽しみ方は人それぞれだ」という「常識」があるとする。

この常識は、当たり前すぎて疑いようがないようにも思える。

だけど、もしも「ゴルフの楽しみ方は人それぞれだ」という常識があるために、本当は存在しているはずの楽しみ方(それは、現時点ではマイノリティ過ぎて、事実上この世に存在していないに等しい)に、みんな気付いていないだけだとしたらどうだろう。(*1)

その常識を超えた世界は(「知られざるゴルフの楽しみ方が、実は他にあった!」というのが新たな常識になれば)、《①今とは違う》世界になっているはずである。

そして、このことは同時に、その世界が《②今の世界をもとにしている》ことにもなる。

なぜなら、ゴルフの楽しみ方という今あるもの(コト)に対する、光の当て方が変わるだけだからだ。

今の常識を乗り越えたその世界こそが『ゼロ・トゥ・ワン』的な未来だし、それは、10年後かもしれないし、20年後や50年後、100年後かもしれない。

だけど、「ゴルフの楽しみ方は人それぞれ」が常識であり続ける限り、ゴルフの楽しみ方という観点では、ゴルフの未来は来ないと思っている。

だけど、いや、だからこそ、筆者の「世の中のほとんどの人が信じていない、大切な真実(=隠れた真実)とは何だろう」という問いが、未来を創っていく上で、極めて強力な問いに思えてならない。

なお、イチゴルの考える一般アマチュアゴルフ界の「隠れた真実」は以下を参照のこと。

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(*1)これに関連して、桑原武夫氏がその著書『文学入門』において、「小説の楽しみ方」においても同様の状況であることを指摘しているのは興味深い(同書p97)。これが、桑原氏にとっての「隠れた真実」の1つなのだろう。


2.ココロに残ったポイント② ビジネスの「存続性」~成長至上主義の落とし穴~

2点目は、既存企業にはない新たな価値ある企業を創るための視点として、筆者が示した「ビジネスの存続性」について。

価値ある企業となるには、成長するだけでなく存続しなければならないのに、多くの企業家は短期的な成長しか見ていない。彼らには言い訳がある―成長は測りやすいけれど、存続性は測りにくい。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティールーp73

短期成長をすべてに優先させれば、自問すべき最も重要な問いを見逃してしまう―「このビジネスは10年後も存続しているか」というものだ。数字はその答えを教えてくれない。むしろビジネスの定性的な特徴を客観的に考えてみる必要がある。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティールーp74

世の中の成長至上主義もしくは測定指標至上主義ともいえる考え方への筆者の警鐘は、なるほど頭で理解するだけなら難しいことではなさそうだ(読む人によって「なるほど、そうなんですね!」、や「ふむふむ、そういう考え方もあるよね。」はたまた、「いやとは言っても、成長(数値化)は大事でしょ!」といった反応になる)。

だけど、このことを「ココロで理解している」というか、「腹落ちして理解できている」人はどれくらいいるだろうか。

もしかしたら、本当の意味でこれを理解出来た時の感想は、

「そいうことか!たしかに、世の中だいたい間違えてるやん!?」

となるのかもしれない。(これは「理解」というよりはむしろ、「体感」や「追体験」という方が近いかもしれない)

ちなみに、成長至上主義に対するアンチテーゼとして、アマチュアゴルファーの世界におけるイチゴルのモノの見方をこちらに示しています(少しゴルフ用語も多いですが、言わんとしていることの本質は伝わるはず…)。

そして、ゴルフを通じてであれば、P.ティール氏の言うところの「ビジネスの存続性」の意味するところを、(本質的な部分において)追体験していただけると思われる(と、ささやかにイチゴルを宣伝!)。


3.この本ってどんな本?~思考プロセスを学ぶ~

最後に、この本に少しでも興味を持った方のために、どんな本かを簡単に触れておこう。

とはいえ、それはP.ティール氏自身が明記しているので引用するだけだが。

本書は、これまでにないビジネスを成功させるために自らに問うべきこと、答えるべきことを提示するものだ。ここに書いたことは、マニュアルでもなければ、知識の羅列でもない、考える訓練だ。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティールーp29

まさに、この通りで本書は読者に語り掛けるようにいくつもの「問い」を投げかけ、その上で、筆者なりの見解を述べている箇所が随所にある。

世の中に対する答えではなく、「いかに世の中を見るか、いかに考えるか」のP.ティール氏の頭の中を垣間見て、「自分の頭で考える」ためのヒントにしたい人にはお勧めの本なのだと思う。社会をより良くしていきたい、と思う人ならなおさら。


[参考1]ココロに響く金言集

より良い社会を創ってきたのは、使命感で結ばれた一握りの人たちだった。その理由はごく単純だ。大組織の中で新しいものは開発しづらく、一人ではさらに難しいからだ。官僚的な組織は動きが遅いし、既得権はリスクを避けたがる。機能不全が極まった組織では、実際に仕事を片付けるより、鋭意努力中だとアピールする方が昇進しやすい。(もし君の会社がそうならば、今すぐ辞めた方が良いい)。その対局にいる孤独な天才は、芸術や文学の名作を生むことはできても、ひとつの産業を丸ごと創造することはできない。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p28

 前向きに表現するなら、スタートアップとは、君が世界を変えられると、君自身が説得できた人の集まりだ。新しい会社の一番の強みは新しい考え方で、少人数なら敏捷に動けることはもちろん、考えるスペースが与えられることが大きな利点になる。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p29

次世代の企業を築くには、バブル後に擦りこまれた教義を捨てなければならない。ただし、すべてを逆にすればうまくいくというわけでもない。イデオロギーを否定したところで、群衆の狂気から逃れられるとは限らない。むしろ、こう自問すべきだ。ビジネスについて、過去の失敗への間違った反省から生まれた認識はどれか。何よりの逆張りは、大勢の意見に反対することではなく、自分の頭で考えることだ。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p

矛盾するようだけれど、ネットワーク効果を狙う企業は、かならず小さな市場から始めなければならない。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p


「破壊」という言葉がトレンディで新しい見かけのものを何でも指す自己満足的なバズワードに変わっている。一見ささいなこの流行は、起業家の自己認識を競争志向へと歪める点で問題だ。これは既存企業への脅威を表すために提唱された概念で、スタートアップが破壊にこだわることは、自分自身を古い企業の視点で見るようなものだ。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p85

起業は、君が確実にコントロールできる何よりも大きな試みだ。起業家は人生の手綱を握るだけでなく、小さくても大切な世界の一部を支配することができる。それは「偶然」という不公平な暴君を拒絶することから始まる。人生は宝くじじゃない。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p114

販売を製品の一部と考えるべきだろう。何か新しいものを発明しても、それを効果的に販売する方法を創り出せなければ、いいビジネスにはならない。それがどんなにいいプロダクトだとしても。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p175

今の僕たちに出来るのは、新しいものを生み出す一度限りの方法を見つけ、ただこれまでと違う未来ではなく、よりよい未来を創ること―つまりゼロから1を生み出すことだ。そのための第一歩は、、自分の頭で考えることだ。古代人が初めて世界を見た時のような新鮮さと違和感を持って、あらためて世界を見ることで、僕たちは世界を創り直し、未来にそれを残すことができる。

『ゼロ・トゥ・ワン』P.ティール-p253

[参考2]「隠れた真実」を見つけるときの参考になると思われる本

参考情報2つ目として、『ゼロ・トゥ・ワン』のいうところの「隠れた真実」を見つけるために(あくまでもいちごるの独断と偏見で)有益だと思われる本を以下にあげておく。

・『ジョブ理論』(クレイトン・クリステンセン)
やはり避けては通れないのは、この本。

この本の主張が、数多あるイノベーション論(いちごるはそのうちのほんの一部しか読めていない)における「隠れた真実」だと、いちごるは信じてやまない。

そして、既存のビジネスを違った視点(クリステンセン氏の言うところの「ジョブのレンズ」)で見ることが、「隠れた真実」を見抜く有益なものになると思われる。

・『成功曲線を描こう』(石原明)
石原氏は、正しい成功プロセスを踏めば、やがて「これまで誰もやったことのないことをやろうとしている自分に気が付く」という。

「誰もやったことのないこと」

それは「隠れた真実」に他ならない。

この本は、そこに辿り着くまでのプロセスが分かりやすく書かれている本なのだと思っている。

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