それぞれの人生にユーミン-『YUMING TRIBUTE STORIES』(2022年)小池真理子・桐野夏生・江國香織・綿矢りさ・柚木麻子・川上弘美
(945文字)
積読読了シリーズ④:350円(メルカリ)
今緊急で読んでいる乗代雄介さんの小説がむずかしくてむずかしくてむずかしくて、読んでる最中に2冊の小説を読み終えた。それでも挑めないから、チェイサーのようにこの短編集を挟んで読むことにした。
江國香織さんが大好きだから、わたしは江國さんの作品が入っているアンソロジーもよく読んできた。江國さんの文章はすべて読みたい。いくら読んでも彼女のようにはなれないにしても。
この本は松任谷由美のデビュー50周年を記念したトリビュート短編集で、6人の作家がユーミンの楽曲にちなんで作品を書いている。2023年にNHKでドラマ化もしたそう。小説のタイトルは曲名そのままである。
小池真理子「あの日にかえりたい」
桐野夏生「DESTINY」
江國香織「夕涼み」
綿矢りさ「青春のリグレット」
柚木麻子「冬の終り」
川上弘美「春よ、来い」
「ユーミンの楽曲の中からひとつ選び、それに合わせて短編小説を書いてください。」こんな依頼が来たら書けるだろうか?
どれも面白くて、すらすら読めるのがうれしく、ちょっとした合間にも読んでいた。
最後の「春よ、来い」以外知らない曲だったが、わたしはもちろんまじめなので、6曲とも再生した。
当たり前だけど、アンソロジーはいろんな作家の作品が入っているから、初めて読む作家と出会える。柚木麻子は初めて読んだが、短い話に主人公の性格、感情、彼女を取り巻く環境を、見事に描いていた。家事をしない夫への諦念の文章は苦しくなる。直接ユーミンの曲が流れるのは柚木麻子の「冬の終り」だけだった。
川上弘美の短編は興味をもたせるのが上手い。「春よ、来い」を掛けると曲出しですでに泣きそうになった。
綿矢りさは84年生まれ、最年長は51年生まれの桐野夏生だ。それだけユーミンが長く活躍してきたからこそこんなトリビュート作品集ができたし、登場人物たちを含めていくつもの人生にもユーミンの音楽はずっとあった。カッコいいと思う。
乗代さんの本は諦めよう。
購入:2022/9/30
読む:10/21~10/23