【第一の人生】12の章:新しい職場にはお付きの霊能者が居た
*登場人物*
・アンナ←萬里の源氏名・ママやってる
・マスター←L.Sという飲食店のオーナー・萬里の雇い主
・ツル先生(仮名)←L.Sを面倒見ているお坊さん霊能者
・キョウ←萬里の初めて勤めたお店からの同僚(秋川リサ似)
・塚先生←萬里が別ルートで知り合って、ちょいちょいお世話になっていた霊能者(この方もお坊さん)
この新しい店(L.S←店舗名)に来て女の子達やオーナーと
霊や目に見えない物事など不思議なことについての
話をよくするようになった。
アンナはママなので一番に出勤して開店の準備を始める。
入り口扉が開く音がして、誰かが出勤して来た!と思い
元気に「おはよう!」と声を掛けると、
二本の足だけが歩いていて誰も居なかった。
というようなことは、よくあることだ。
(オバケにも、ちゃんと足はあります。あ、足だけの時もありますw)
マスターは隣の市出身。
世話になっているお坊さん(ツル先生)も
隣の市でお尋ね部屋をしているそうで、
「お前も一度は行ったほうがいい!」としきりに促される。
アンナは、けして安定安心な生活をしているわけではないけど
相談する事もないのに
ただの興味本位にお金を払う余裕はない。
それに、なんの根拠もないが不思議と
そのツル先生の元には行ってはいけない気がして、
毎回毎回断った。
全く興味も沸かず、ツル先生という方に
わざわざ会いたいとも思わない。
実は、アンナは別ルートで
ちょっとした相談などでお世話になっている
霊能者と呼ばれる
お坊さん(塚先生)と関わりがあった。
その頃の彼氏が知り合いだったので、
付いて行ったり、
横で話を聞く程度だったけど・・・。
L.Sは色気を売らない店である。
喋りの充実と人間味を売るおもしろさがメインである。
その先頭を走るのが、
秋川リサ似でとにかくやかましい
「キョウ」だ。
キョウは、その辺のおばちゃんぽくて
飾らないところが良い、
いじられキャラでもある。
夜の店なのに、
夜の蝶なのに、
フツーに寝癖で出勤する
髪型よりも化粧重視の女だ。
キョウの鉄板ネタは、
スッピンで彼氏の家に行ったら
玄関に出てきた彼氏がキョウの顔を見て
ソッコー扉を閉め
ドア越しに
「化粧して、出直してこい。」と冷たく言い放った
というエピソード。
キョウのスッピンは
未だ誰も見たことがない・・・。
キョウは他の女の子に比べ
売上のために飲み物をかなり飲む方だった、
売上目標に届かなさそうな時の
あと一歩を超えてくれる強い味方。
なのに、ここ数日
キョウの飲む量が極端に少ない。
アンナ「キョウ、体調かなんか悪い?」
キョウ「いや、体調が悪いというか、なんていうか・・・なんかおかしいのよ。」
アンナ「なに?頭痛とか、吐き気とかそんな不調でなくて?」
キョウ「頭痛も少しあるけど、身体が重くて、何かがおかしくて、かといってハッキリ説明はできんのやけど・・・。」
アンナ「何が変なのよ?」
キョウ「水分が取れない。」
アンナ「どういうこと?」
キョウ「なんか飲もうとすると、ゲホッゲホッってなって、喉を通らないというか。受け付けないというか。飲み方がわからんようになると。」
アンナ「えー、それってあっちの世界の原因ぽいやつ?いつからそうなん?」
キョウ「この前の休みに、温泉行って。帰宅してからかもしれない。」
アンナ「んー、温泉。もう3日は経ってるね、何かあるのかもね。医者に行ったとしても、これといった症状があるわけでもないし言いようがないよな。」
キョウ「そうなんよー!」
アンナ「かと言って、ずっとそのままの訳にもいかんし、店としても困るけん、塚先生のところに行ってみたら?」
キョウ「え、ツル先生でなくて?」
アンナ「だって、私ツル先生会った事ないし。今まで塚先生んとこ行ってて私も彼氏も納得できる事多かったし、塚先生ならすぐ連絡取れるから、良いんじゃない?」
キョウ「うん、分かった。明日の午後、何時に予約取れるか聞いてくれる?」
さっそく次の日の午後、
キョウは塚先生の元へ行った。
その日の夜、報告を楽しみにキョウを待った。
キョウ「ママー!!びっくりよ!普通に飲めるようになったしぃ!!」
アンナ「で、なんだったの?」
キョウ「なんか、憑いてたらしい。やっぱ温泉で拾ったぽくて、溺れて亡くなった人だった。」
アンナ「え?温泉で溺れた人?」
キョウ「いや、溺れたのは別の場所だったみたいやけど、水辺って霊が集まるらしいから、その温泉のどこか近くの川か海で溺死した人みたい。
溺れる時に「あっぷあっぷ」なって死んだから、それに憑かれた私も
「あっぷあっぷ」になって水飲めないというか、コップで溺れてたみたい。」
アンナ「そんな事あるんやね・・・。」
キョウ「もうー、ほんと驚きよー!塚先生が何かお経唱え始めた途端、詰まりが取れたみたいな感覚で、その帰りには、お茶ガブ飲みしたしぃー!」
アンナ「まぁ、よかったよ。でも、塚先生って思ってたより凄い人なんだな。霊的な事で行った事ないけん知らんかったわw」
キョウ「なんか私憑きやすい人みたいやね。って言われた。もうこんな思いしたくないけどぉ!」
アンナ「わぁ、よかった。私そういうんじゃなくって・・・。」
塚先生という霊能者を知ってて、交流もあるけど
それは、彼氏(格闘技やってた)が塚先生が定期的に主催している「滝行」に精神鍛錬のために行ってるから、ってだけで
憑いてるとか
憑いてないとか
そんな話自体、あまり関わってきていない。
アンナにとっては信じ難い
とても不思議な話だった。
憑いてるとか
憑いてないとか
分からんけど、
身体に何かしらの症状が出るってのは
困るよなぁ。。。
夜の街に飛び込んでからの萬里は
身体が重くスッキリ健康だった日なんか
一日もない。
でありながら、
何かが影響を及ぼして体調が悪い。
という自覚も疑いも全く以って無い。
若いってそういうこと。